貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。   作:はめるん用

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忠斗狼。

 翌日。

 

 深窓の令嬢がドロップキックをマスターしたりバズーカ砲を抱え満面の笑みで担当トレーナーに向かってチェストに候してしまう未来を想像してしまった貴方は、まずはメジロアルダンの現状を知る必要があると考えました。

 

 自分自身の天賦の才に無自覚のまま脚を蝕まれていたトウカイテイオーと違い、メジロアルダンは己の脚が抱える問題点を理解した上でトレーニングを実行しています。

 それはチート能力により数値化された故障率を確認しても、驚くべきことに1パーセントにも満たない状態をキープしていたことからも明らかでしょう。限界を知るが故に、出走することそのものが目標になってしまっていることがなんとも皮肉ではありますが。

 

 

 そんな抜群の自己管理能力を持つメジロアルダンが、正式に担当契約を交わしたトレーナーのサポートを受けられるようになってどのように変化したのか。彼女の性格を考えればいきなりトレーニングの負荷を上げるとは思えませんし、誠実な人間らしさを感じたアルダントレーナーも担当ウマ娘に無茶を強いるようなタイプには見えませんでした。

 このコンビであれば丁寧にトレーニングを続けていれば出走どころかGⅠウマ娘も夢ではないというのに、いったいどんなブッ飛んだ思考回路をしていればティアラ路線ではなくハジケリスト路線を選ぼうという結論に至るのかサッパリわからない。だが必要ならば悪役トレーナーである己に頭を下げる情熱は曇り無き眼で見定め評価せねばならないと貴方は気合いを入れて調査に乗り出しました。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 いつでも北風と太陽がお互いに勝利と責任を押し付け合うレベルで曇ることを知らない眼で貴方が見定めた結果、驚くほど順当にメジロアルダンの能力が強化されていることが判明します。単純にウマ娘の能力を測定するときの貴方は主観も希望も願望も冷徹なまでに排除して正確な現在値を導き出しますので、この結果に関しては信用しても大丈夫でしょう。

 

 それはひとりのウマ娘ファンとしてはとても喜ばしいことではあるのですが、だからこそ正攻法でしっかりトレーニングを続けているのにゴールドシップの芸風を継承させようという結論を出したことが貴方には不思議でならないようです。

 ですが疑問を疑問のままにして思考停止するなどという妥協を受け入れる貴方ではありません。それにアプリの知識ではありますが、メジロアルダンというウマ娘は清楚な見た目とは裏腹にお茶目な一面を持っていることを知っています。

 

 貴方がチート能力を駆使して考案したパワーと賢さの複合トレーニング“デストロイ水上タライMCシューティングリレー和歌部門”に参加したときに審査員として招待した体育と古文と家庭科の先生方から揃って銀賞という評価を得たことがあることからも、前世の知識が役に立たないということはないでしょう。

 

 その後の国語のテストでトレーニングに参加した赤点常連組が揃って平均以上の点数を獲得したことから数学や物理などの教師陣が中心となり職員会議でわりと本気でカリキュラムへ取り入れることについて議論が交わされたことについては追放計画と無関係であるため横に置いておくとして。

 このままゴールドシップとメジロアルダンによる夢のタッグが学園にスカイウマハリケーンを巻き起こすようなことになれば、タマモクロスを主将とするスーパーがんばり突っ込みウマ娘たちのガッツがあっという間に枯渇してしまいます。いずれそこにネオダイヤーショットが追加された暁には中央トレセン学園のあちこちで「なにィッ!?」と驚くウマ娘の姿が見られるかもしれません。

 

 

 冷静な考察によりメジロアルダンがおもしれーウマ娘の因子を持っていることを思い出した貴方は一瞬だけ悩みましたが……もしかして、別に反対する理由はないのでは? と考え始めました。

 

 

 そもそもゴールドシップはトレセン学園でも指折りの常識人であることを忘れてはいけません。仮にメジロアルダンとコンビを組むことになったとして、相方を無視して暴走する可能性は限りなく低いと予測できます。

 この場合、むしろ注意が必要なのはアルダントレーナーの認識にあると貴方は睨んでいます。彼がゴールドシップというウマ娘の内面を知って今後の参考にしたいと判断したのであれば問題ありませんが、表面的な部分だけを見て目立つことだけを考えているようであれば、やはり賛同するワケにはいきません。

 

 目標変更。貴方はメジロアルダンではなくアルダントレーナーの覚悟を試す必要があると判断します。担当ウマ娘をハジケリストとしてデビューさせようと言うのであれば、トレーナー自身もハジケリストとして邁進しなければお話にならないからです。

 

 担当ではない、取り引きでトレーニングプランを組み立てているだけの自分でも石焼きビビンバを手作りするために石を切り出すところから始めて最終的に大玉スイカをくり抜きたっぷりのニンジン冷麺で満たして美味しくいただく、ぐらいのことはしている。

 どうやらこれを最低ラインとし、正式に担当契約をしているアルダントレーナーにはそれ以上を貴方は要求するつもりのようです。かなり厳しく理不尽な試練を与えることになりますが、真面目な後輩トレーナーへ不真面目な先輩トレーナーが嫌がらせをしている場面は悪役ポイントも相当高いのでまさに一石二鳥。

 

 

 今回も全てが自分にとって都合良く進むことを確信した貴方は、高笑いをすることで喜びを表現してからさっそく行動を開始します。

 手始めに悪役らしい笑い方を楽しむ貴方の背後でそれらしいBGMを流してくれていた空気も読めて仕事もできるウマ娘・イクノディクタスに「低カロリーのスイーツを使ってアルダントレーナーの覚悟を試すから、なんかイイ感じに理由並べてマックイーン会場に連れてきて。アイツまた体重落としすぎて体力と気力をムダに削っただろ」と適当に理由をつけて頼みました。





 ヤマニンゼファーならサンゴールくんのアークブリッジシュートもたぶん使える。だって風属性だし。
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