貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。   作:はめるん用

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 特に本編とは関係ありませんが、ココ(前書き)の内容を考えているときに“もしも殺意の波動に目醒めたリュウが、薩摩の波動に目醒めたリュウだったら”という一文が思い浮かびました。たぶんどちらもそれほど違いはありませんし、すでに誰かがこのネタを思い付いていると思います。


 もうちょいなんかあっただろ書くこと。せめて競馬に関係するネタ出てこいし。


桜斗狼。

「あ、あの、イクノさん? トレーニングの内容について相談したいと仰っていたはずでは……それで、何故外に……それに、この人集りはいったい……?」

 

「ご覧くださいマックイーンさん、本日もとても良い天気です。こんな絶好のスペースシャトル日和ですから、偶然トレーナーさんがルームの外にオープンカフェを設置して極限ヘルシースイーツ無限耐久勝負のトレーニングを開催しているのも仕方の無いことでしょう」

 

「極限ヘルシースイーツ──ッ!? あ、いえ……ゴホンッ。そうですわね、こんなに良い天気なのですからそんな日もありますわよね……! って、アレは……どう見てもお菓子の材料には見えない塊が……」

 

「あぁ、アレはホヤですね」

 

「ほ、ほや……?」

 

 

 予定ではどこか適当な場所で、なんなら屋外でも構わないと考えていたところ。そういえばウマ娘たちが面白半分にルームの外側を改造して30分とかからずにオープンカフェを展開できることを貴方は思い出しました。いまいち状況が飲み込めていないままアシスタントとして連行されたアルダントレーナーに考える暇を与えることなく指示を出し、さっそく料理を開始しています。

 

 特に宣伝などはしていませんが、五感に優れたウマ娘であれば料理の匂いに敏感に反応するため参加者には困りません。極論を言ってしまえば、これはウマ娘たちのための催しではなくアルダントレーナーがハジケリストの道を歩む覚悟があるか試すのが目的なので少人数でも充分です。

 なんなら背筋を伸ばしてキリッとした表情で待機しているオグリキャップとスペシャルウィークだけでも試食役としては充分なぐらいでしょう。ちなみに本当に関係ないのに巻き込まれる形になってしまったオグリトレーナーにはマンハッタンカフェの特製ブレンドとセットですでに謝罪済みです。

 

 

 調理、調理、ひたすら調理。超一流の守銭奴トレーナーとなるために培った知識と技術を総動員し、そこに絶対無敵のチート能力というエッセンスを加えることで実現した至高のアスリートご飯。美味しいは大正義、極限ヘルシースイーツと謳いながら中華鍋の上で肉や野菜などの食材が舞い踊った結果冷たくて美味しい杏仁豆腐がお出しされても気にしてはいけません。それではハジケリスト失格です。

 

 そして肝心のターゲットであるアルダントレーナーはというと……体力的な消耗はまだしも、状況に振り回されていることが精神的な負担になっているようです。

 一応、今回のお遊びを最後まで乗り切ることができたら協力するとは伝えてありますので、アルダントレーナーとしては担当するウマ娘のために弱音など吐いていられないということなのでしょう。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 しばらくして。

 

「ふふっ。トレーナーさん、お疲れ様でした」

 

「あぁ、アルダン……。なに、これも全部キミがトゥインクル・シリーズで活躍できるようにするためだ。この程度のこと、いくらでも()()()()()()

 

 

 耐えられる。そのひと言を聞いた瞬間、貴方は己の中にある“甘さ”を全て消去することに決めました。

 

 

 実のところアルダントレーナーとの取り引きに前向きになった時点で、貴方は彼のことを再評価していたのです。

 

 普通のトレーナーであればメジロアルダンの雰囲気に取り込まれ、運命の中で抗うヒロイックな走りというシチュエーションに酔い痴れて本来果たすべき役目を忘れてしまうこともあり得たでしょう。

 しかし彼は芸人路線で活躍するという奇策を用いることで運命に抗うことにしたのです。己の脚の脆さを知るが故にいまという瞬間ばかりに傾倒するメジロアルダンに未来を見せることにした……と、少なくとも貴方はそう解釈しています。

 

 故に、今回のスイーツ大作戦も実はただのポーズでしかありませんでした。後片付けを終わらせたら今後の芸風について少しはアドバイスをしてやろうと考えていたのですが、ここで弱音を吐いてしまうようでは取り引きに応じるワケにはいきません。

 

 ウマ娘に弱気な姿を見せることを悪いとはいいません。お互いに支え合い成長するのも信頼の証ですし、いくらトレーナーといえども最初の一人目と関わるまでは素人に毛が生えたようなもの。アプリに登場する新人の皮を被った超人などそうそう出現するはずがありません。

 しかし、アルダントレーナーの場合は違います。彼は自らの意志で芸人系トレーナーとして歩むことを決めたのですから、いつ如何なる時でも道化師としての言動を忘れてはならないのです。ピエロが演目の最中にいきなり素顔を見せて苦労話を始めたのでは観客の皆さんに対してあまりにも失礼──どころではなく、最早プロフェッショナルとして舞台を舐めていると貴方は断言するでしょう。

 

 

 悪役トレーナーの道を歩む自分がウマ娘たちに一切寄り添うことなく心を持たぬ守銭奴として相互利益だけの関係を維持しているように、己が演じると決めたロールに背くような立ち振舞いなど許されない。今日まで悪役トレーナーとしてちくわのように芯の通った態度を貫いてきた貴方が言うと説得力の桁が違います。

 

 

 まず貴方はアルダントレーナーを油断させるために穏やかな表情で労いの言葉をかけることにしました。今回のアシスタントでお前がどういった人物なのかも概ね理解したと、いかにも“認めてますよ”という雰囲気で会話を続けます。

 メジロアルダンとアルダントレーナーが偽りの手応えを感じて嬉しそうな表情になっていることを少しだけ申し訳ないと思いつつ、貴方は一瞬で身に纏う空気を反転させ無機質な声色で「お前のやり方に協力はしない。いまのお前たちにそれだけの価値は無い」と告げました。

 

 

 それまで和やかで賑やかだった場の空気が一気に張り詰めたモノに変化します。注目が集まっていることを気配の動きから把握した貴方はさらに理不尽にアルダントレーナーを追い詰め始めました。

 貴方は決して感情的にならないよう加減しながら「自分の選択が持つ意味も理解せず、上辺だけの覚悟を語る青二才のトレーナーごっこに付き合うほど暇ではない」と静かに諭すように続けます。

 

 ウマ娘のために一生懸命になっているところを遊び扱いされて怒らないトレーナーはこの世界にひとりしかいません。もちろんそれに該当しないアルダントレーナーは勢い良く立ち上がって貴方に敵意をぶつけてきました。

 

 さぁ、ここからが悪役トレーナーとしての貴方の見せ場です! お笑い路線を邁進するならばエンターテイナーとしての本物の覚悟を、そうでなければ正攻法でトゥインクル・シリーズに蹄跡を刻む決意を、これからアルダントレーナーに叩き込むことにしましょう! 決して“それって悪役トレーナーの仕事なの?”とか考えてはいけません! 溢れるパッションを信じましょう! 

 

 

 

 

 

 

「はぐ、もぐ……この激辛ザーサイで口直しをしたあとに激甘杏仁豆腐を食べるとまた味の変化が──うん? なぁトレーナー、どうしてみんな食べるのを中断しているんだ?」

 

「あー、オグリは気にしないで食事を続けてて大丈夫だよ。ちょっとトレーナーの役目とか覚悟の意味を勘違いしちゃった同僚に先輩が説教してくれるってだけだから。マジで頼んます……先輩……ッ!」

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