貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。   作:はめるん用

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 フクキタルの輝く瞳が作者を惑わせる。
 (しいたけの食感が苦手)



にゃんにゃんにゃ。

 想定外のトラブルが発生しても、臨機応変に対応して成果を上げてこそ一流の悪役トレーナーというもの。

 

 前回、マチカネフクキタルが体力・気力ともに大きく消耗していたことから貴方は休日潰しによる嫌がらせプランを変更して蒸しタオルによるマッサージを施しました。

 もちろん自身の目的のためにウマ娘を利用すると決めている貴方はなんの目論見もなくウマ娘を労るような真似はしません。計画変更の前準備として、マッサージと並行してマチカネフクキタルの脚の状態を確認することも怠りません。

 

 この世界におけるマチカネフクキタルのモチベーションは、URAに勤務する姉が現役時代に勝利した菊花賞に出走してみたいというとても穏やかなものです。

 なんとも微笑ましい理由ではありますが、憧れだけを原動力として日本各地から才能が集う中央トレセン学園に合格して入学していることからも、マチカネフクキタルというウマ娘が秘めるポテンシャルが高いことがわかります。

 

 それだけに、真面目で真っ当でやる気のあるウマ娘のために真剣になれるトレーナーが担当すれば三冠ウマ娘を目指すことも決して不可能ではないのに……と、貴方はとても残念に思っている様子。

 

 脚が絶好調のサイレンススズカとメンタルが絶好調のアドマイヤベガを相手に日本ダービーで1着を獲得する難易度を考慮しない前提の三冠ウマ娘の話はともかく、マチカネフクキタルの脚の状態が良好であることを確認した貴方はさっそく次の嫌がらせを考えることにしました。

 目標レースは菊花賞、必要なのは持久力はもちろん最後の直線で勝負を仕掛けるための加速力。求められるのは地味で退屈で心身の負担が大きいトレーニングとなります。なのでわざわざヘイトを稼ごうと意気込まなくても指示を出すだけでウマ娘側からは嫌な顔をされそうなものですが、そのような受け身の手段をチート能力さえ努力のために全力行使する貴方が選ぶはずがありません。

 

 薄皮を1枚1枚貼り重ねるような、本人が成長の実感を感じることが難しく、しかし継続することで確実に実力が向上するトレーニング。そして可能な限り第三者の視点からは不真面目に……では今回の“マチカネフクキタルたちへの評価を覆す”という目的から外れてしまいますので、徹底的に激しく容赦の無い内容を考える必要があります。

 

 貴方の真似をして五感を活用する目分量による料理の楽しみに気づいてしまったニシノフラワーがどやッ♪ と差し出してきた佃煮の味見をしつつ、ダートコースでも魔改造して延々と走らせてみようかなどと考えていたところ。

 

 

 

 

 

 

「おつかれさまでひゅ……」

 

 

 

 

 

 

 前回とは微妙に芸風を変えて疲労だけでなく腹部をさすりながら空腹の音を奏でる気持ち萎んだような雰囲気のマチカネフクキタルがルームにやってきました。

 

 

「おっふぅ……お醤油とお出汁の食欲をそそる香りがまさに胃袋に電撃6ハロンのぉ……ごはん、余っていたりなんてしてませんかね……?」

 

「あ、は、はい! すぐに食べられるものを出しますね! えっと、その、大丈夫……ですか?」

 

「お腹と背中がくっつきそう、という意味ではだいじょばないかもしれません……。実はですね、先ほどレース場で併走相手を探しているバクシン」

 

「おにぎりの具はおかかと鶏そぼろと昆布の佃煮でいいですか?」

 

「判断が早い!? うぅ、さすがはトレーナーさんがマイル最強ウマ娘のひとりだと呟いていただけのことは……あぁ、でも、ごはんを食べ損ねてコメくいてーと騒ぐ胃袋にフラワーさんお手製のおにぎりを奉納できると思えば愚痴に付き合わせるワケにも……」

 

「きんぴらごぼうとほうれん草の胡麻和え、それからしじみのお味噌汁もありますよ!」

 

「はい! 待ち兼ねることなく大人しく待ってます!」

 

 

 うら若き乙女の間食のメニューとしてそれはどうなのか、しかしそういえばダイタクヘリオスやトーセンジョーダンも地味なメニューを食べさせたときに美味しいとテンションを上げていたな……などと苦笑いをしつつ。

 貴方は併走相手を引き受けたことで体力を使い果たしたマチカネフクキタルの様子から、育成評価A級の女性トレーナーが担当するサクラバクシンオーとミホノブルボンの長距離チャレンジが順調であることを察しました。

 

 まだまだ入着すらほど遠い状態ではありますが、もともと芝の適正が高いこともあってサクラバクシンオーの長距離トレーニングはゆっくりと実を結んでいることを貴方は人づてならぬウマづてで聴いています。

 マイルの半ばを過ぎるころには持久力を大きく消耗してしまうものの、模範的委員長を名乗るだけのことはありどれだけ疲労が蓄積しても走行フォームが乱れることがないため脚の負担も軽減されているのでしょう。

 

 あれはもうターフの上で溺れているのでは? と思えるほどグッタリするほど走り込んでも故障率がゼロのままなのはチート転生者である貴方をして見事と言わざるを得ません。

 そして姿勢維持によりエネルギーのロスを抑え持ち前の回復力で何度も復活するサクラバクシンオーのタフさが称賛に値するのは確かなのですが……短時間で長距離トレーニングを繰り返すとなれば、さすがにスタミナに自信ウマであるマチカネフクキタルもおなかがペコちゃんになってしまうようです。

 

 

 脚の状態が良好でも体力に不安がある状態でスパルタ過ぎるトレーニングを強要すればケガに繋がる恐れもあります。

 貴方はとりあえず追放計画を凍結し、マチカネフクキタルのためにニシノフラワーが用意したおにぎりを横から拝借しようとしたセイウンスカイの肩に優しく指先をめり込ませるのでした。

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