貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。   作:はめるん用

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 前話と投稿間隔が大きく開いているのは七英雄が復活したことが原因です。



にゃーにゃにゃー。

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………さ、トレーナー。ウインディちゃんの髪の毛のお手入れを続けさせてやるのだ。感謝しろ」

 

「えー? いまバッチリ視線を合わせたのに無視することないじゃないですか〜。見てましたよね? この両手に抱えた謎の……ホント、なんでこんなことになったんでしょう? 後輩の子たちから渡された差し入れの数々をしぃ〜かっり見てましたよね? 気になりますか? 気になっちゃいますよね!」

 

「べつに」

 

「即答ッ!?」

 

「だってフクキタルだし」

 

「スキを生じぬ二段構えッ!? ばんなそかな、いつの間にやらスズカさんやアヤベさんと同じカテゴリーにッ!?」

 

「どうせ並走トレーニングとか占いのお礼にって、押しつけるように渡されたとかそーゆーオチなのだ」

 

「ヌッフッフ♪ これも人望、いえウマ望というヤツですかねぇ! ……いや、確かに開運グッズを集めたりはしますが、なんと申しますかその。なんでしょう、なんとなく曰くつきっぽい雰囲気のモノまで紛れ込んでいるような……お菓子なんかは素直にいただくとして、この……ナニ? ポリゴンを繋げてくるくる回る人形みたいなアクセサリーとかどこに飾ったものやら」

 

 

 カチャカチャと揺らせば相手の満腹度にダメージを与えそうなアクセサリーを片手にコメ顔をするマチカネフクキタル。

 後輩たちからの感謝の品々を前に喜びよりも多少の困惑が勝っているそんな様子を、ダート練習により砂粒が髪の毛に付着したシンコウウインディのケアをしながらのんびり眺めていました。

 

 アプリとは違いこの世界の中央トレセン学園では何故かオカルト関連に対するウマ娘たちの反応は前向きなことが多いと貴方は知っています。

 

 貴方自身がチート転生者であるという前提はもちろんのこと、ウマ娘の世界そのものが愉快なオカルト現象のありふれた世界であることはアプリの各種イベントが証明していますが、それでもマチカネフクキタルの占いやコパノリッキーの風水に対して苦笑いをするウマ娘はゼロではありませんでした。

 

 この世界の中央トレセン学園のウマ娘たちがそうしたモノに好意的なのはそれなりの理由がしっかりとあります。

 トレーナーバッジを身につけながらウマ娘たちとの信頼関係など存在しない世界線を生きている貴方には全く興味の無い話ですが、それは例えば失せ物探しを頼まれたときにペンデュラムによるダウジングで完璧に見つけてくれる黒ジャージ姿の男性トレーナーとやらが関与している可能性もあるかもしれません。

 

 

 ちなみに貴方は学生時代に家出したと噂されていた女子生徒が実は怪異に巻き込まれていたことを突き止め友人たちと救出に向かったときに路地裏を走っていたはずが唐突にふたつの紅い月が煌々と輝く神社の境内らしき場所に引きずり込まれ顔の部分が暗黒で塗り潰された大勢の子どもたちがかごめかごめを歌いながら包囲してくるというちょっとした不思議体験をしたことがありますが、この情報は追放計画に活かせそうもない上に当時の話をすると貴方の友人であり生活拠点の大家さんでもある市川くんのクソデカため息が聞こえてくる気がするのでそっとしておきましょう。

 

 

 そんなことよりもマチカネフクキタルの現状を正確に認識する作業のほうが貴方にとっては大事な様子。

 

 良い意味で威厳を感じない、そして後輩に対して偉ぶることもなく、なにより常にポジティブな言葉が飛び出てくる先輩ということで並走トレーニングを頼まれている姿は貴方も頻繁に見かけています。

 慕われていることがレースでの勝利に直接繋がるワケではありませんが、指導者であり教育者でもあるトレーナーたるもの能力だけではなく性格的な部分も含めてウマ娘のことを評価してスカウトを実行するはず……というのが貴方の考えです。

 

 そして表面的にはお気楽そうに見えても、トレーニングそのものにはとても真面目で真剣に取り組んでいる姿勢もトレーナー側としては魅力的であるはずと貴方は確信しています。

 いまでこそ担当トレーナーが不在であるため基本的なトレーニングに食事指導、得意とする作戦とマチカネフクキタル個人の癖とのすり合わせ、勝負服のデザインの相談、並走後の後輩ウマ娘たちへのアドバイスのフォロー、菊花賞を見据えた大まかな出走スケジュールの組み立て、おやつの買い出しに初詣の送迎などちょっとした手助けを貴方が担っていますが、そのときのマチカネフクキタルのとても素直な様子を見ていればよほどのミニマム脳みそか節穴アイの持ち主でもなければ彼女の現状を正しく認識できることでしょう。

 

 

 もちろん貴方は油断も慢心もしませんので、いつかスカウトされるからという理由でマチカネフクキタルの手伝いを蔑ろにするようなことはあり得ません。

 明日の早朝もとある友人の先頭民族に誘われて日の出マラソンに強制参加させられることを踏まえ、今日のうちにランニングコースの安全確認と冷えた体を癒やすための温かいスープの下拵えを完璧に遂行することでしょう。




 次回はフクキタルの日常です。
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