貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。 作:はめるん用
貴方の最初の仕事は与えられたトレーナールームの掃除をすることです。
前世では一人暮らしであったこと、そもそも貴方は掃除という行為に対してワリと好意的であることから箒とちり取りで武装することに忌避の感情はありません。
これから追放されるまでの間はここを
そこで、貴方は発見しました。
机のはしっこのところに、おそらくは彫刻刀のような何かで彫られたであろう文章です。ウマ娘の名前とそれぞれが志した夢のレースが刻まれています。
ただ、それらが実現されたかどうかについてはルームの廃退具合が雄弁に知らしめているでしょう。もしもそれらのレースを勝利していたのであれば、それこそアニメに登場していたチームのように大活躍していたに違いないからです。
諸行無常。勝負の世界は弱肉強食なのです。
悪役トレーナーを志す貴方はもちろんこの夢が刻まれた机につばを吐き捨てて蹴り壊すのが最適解なのですが、残念ながらコーヒーゼリーに練乳とホイップクリームとスプレーチョコをトッピングするような甘ちゃんなので保持してしまいます。
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トレーナーとして真面目に働くつもりのない貴方は掃除に集中することができ、1時間ほどでルームはキレイになりました。あとはダラダラと過ごすための環境を整えるだけという状態です。
ここで貴方は躊躇なくチート能力を活用します。ドリンク類を保存できる小型の冷蔵庫、それなりに座り心地の良いソファー、適度な高さの木製のテーブルなどを謎空間から取り出して並べていきます。
あとはパソコンやテレビ、空調設備などを揃えれば完璧ですが、それらを取り付けることについては貴方は慎重に考えています。何故なら1度に家具を増やしすぎると、万が一に訪問者が現れた場合に不審がられるからです。
人間性を疑われるぶんにはいくらでもウェルカムな貴方ですが、チート能力の存在を疑われるのだけは避けたいと考えています。もっとも、ひとりやふたりにバレて、誰かに話したとしても本人の頭が疑われるだけなのですが、リスクを恐れるあまり貴方はそんな当たり前のことに気が付いてはいません。ここは慢心とビビりが良い具合に調和していると思い込んでおきましょう。
◇◇◇
さて、翌日になりました。
貴方は荷物を運び込むフリだけ見せることで、いくつかの家電製品をルームにもたらすことに成功しました。それらはテレビでありパソコンでありゲーム機でもあります。白昼堂々、ほかのトレーナーたちがウマ娘のために心血注いでプランを練り上げているときに遊ぶつもり満々なのです。
素晴らしい! それでこそ悪役トレーナーです! これで選抜レースをビール片手に観戦すれば完璧ですが、残念ながら貴方はアルコールがあまり得意ではありません。
しかし、どうやら貴方のサボタージュ計画は容易く実行されることはないようです。まだ誰とも自己紹介をしていないのにコンコンとノック音がするではありませんか。
いったい何事だろうか? 貴方がそんな疑問を浮かべて反応が遅れている間に扉が開放されてしまいます。さて、来訪者の正体とは──。
「やぁ、ミスタートレーナー。突然の訪問で申し訳ないんだけど、ちょっと匿ってくれないかな?」
選ばれたのは、