貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。 作:はめるん用
特に深い意味はありませんが、今回の貴方のミッションは自分が無能であることを地方ウマ娘たちにアピールすることで多角的にヘイトを稼ぎつつ模擬レースで中央トレーナーたちに噛みつくことでレース業界から追放されることが目的であると再確認しておきましょう。
初心を忘れてはならないという戒めの通り貴方が掲げた目標についておさらいしたところで、改めて交流会の締めである模擬レースの様子を見てみることにします。
貴方が指導を受け持った地方ウマ娘たちは取引中の黒ジャージ組のウマ娘たちとの交流により中央への苦手意識のようなものがだいぶ緩和されている様子ですが、やはりそれでも緊張そのものを克服するまでには至らなかったようです。
貴方以外の中央トレーナーが指導したウマ娘たちよりはまだ戦いに挑む者の表情をしているのですが、やはり模擬レースとはいえ実際にコースの上で競い合うとなれば印象が変わるのかもしれません。事実として貴方の見立てによると勝率はやはり2割に届かないままです。
騙して悪いが、お前たちの敗北も追放計画に利用させてもらうぞ……と心の中で謝罪するそんな貴方は現在、中央トレセン学園関係者のために用意されたエリアではなく地方トレセン学園関係者のために用意されたエリアから出走するウマ娘たちを見守っている状況にあります。
中央のエリート&名門トレーナーたちへ噛みつくという目的はもちろんのこと、今日の貴方は地方ウマ娘たちの勝利を願う立場ですのでこちら側に陣取ることになにひとつ躊躇う理由などないのでしょう。
しかしレースの世界というものは願いだけでどうにかなるモノではありませんので、悪役トレーナーの貴方が地方ウマ娘たちの勝利を願ったところで勝率が上がるはずもなく、現時点では模擬レースは中央ウマ娘たちの全勝が続いています。
追放計画的には厳しい状況であるものの、貴方の個人的感想としては悪くない流れでした。
なぜならば地方ウマ娘たちの負け方が実力差による諦めによるものではなく、勝利を掴むために気合と根性と意地の一歩を踏み出した上での敗北だからです。
強いて悪役トレーナーとして難癖をつけるのであれば、その勝負根性をレースの途中ではなくスタート直後から発揮してくれていれば2割の壁を越えられたことぐらいでしょう。
もちろん優秀なチート転生者である貴方は今回のヘイトコントロール対象は中央トレーナーであるという初心を忘れてはいませんので、走り終えて清々しい表情をしている地方ウマ娘たちを貶すなどという面倒なことはしません。
そんな初志貫徹の心意気が功を奏したのか、ついに2割の壁をブチ壊して勝利を掴んだ地方ウマ娘が現れましたッ!
最後方からの撫で斬りという勝ち方も相まって、これには地方トレセン学園側の応援席も大興奮です。
当然、貴方はここで迂闊に喜ぶ姿を見せるようなことはしないのでご安心下さい。当初の目的を果たすため、中央トレセン学園側のエリアへ不敵な笑みを向けて挑発するだけに留めています。
まさに完璧なヘイトコントロール、名門トレーナーたちから苛立ちの感情が湧き上がるのが一目瞭然といったところ。もしかしたら慣れない地方遠征によって強靭な肉体と精神を保有する貴方でもさすがに疲労が蓄積してしまったのかもしれません。
こうして無事、今回も悪役トレーナーとして追放ムーブをしっかり楽しんだ貴方はもう地方トレセン学園に用はないと立ち去ろうとしますが……ここでいつものように「本当に自分は悪役として全力を尽くしたのだろうか?」と余計なことを考え始めます。
100の成果を求められたことに対して70で応えるのが普通であり、100で応えるのは決して普通などではなく称賛に値するというのが貴方の考え方です。
なので今回の悪役トレーナー活動も自己採点では100点満点なのですが、向上心の塊である貴方は真なる一流の悪役トレーナーを目指すのであれば120点を求める必要があるのでは? と思い至りました。
ならば、ここはひとつ勝利した地方ウマ娘をイジってやるとしよう。即断・即決・即行動の鬼である貴方はさっそく勝利した地方ウマ娘に近づくと「メイクデビュー以来の追い込みでの勝利だな」と声をかけました。
貴方はその地方ウマ娘がメイクデビューで出遅れたようにも見える堂々たる追い込みで勝利してからは、なぜか先行の不安定な走りで試行錯誤を繰り返し燻っていたことを知っています。
もちろん地方ウマ娘がどのような事情から走り方を先行に変えたのかなど悪役トレーナーである貴方には関係ありませんので、本人が渋るのも無視して追い込みで走るようにと指示を出しておきました。
なので余計なことをせずに最初から得意な追い込みでトレーニングを続けていればもっとレースで活躍できていただろうに、という皮肉をタップリと込めて「あれだけ負け越してまで先行にこだわっていた理由は知らないが、やはりお前は追い込みのウマ娘だよ」と嘲笑してから立ち去りました。
次回は地方ウマ娘視点です。