貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。 作:はめるん用
夢のグランプリレース、有マ記念。
チート能力によりウマ娘たちの能力を数値化できる貴方の眼にはモブウマ娘までステータスが4桁に届き芝・長距離・得意な作戦のいずれかに必ずS評価が含まれているというアプリなら挑んでみたいような遠慮したいような複雑な心境になる情報が見えています。
ちなみに賢さのステータスはあくまでレースに関する閃きやテクニックの熟練度を示していますので、お勉強が苦手なウイニングチケットはもちろんのこと日常的にPKブレインサイクロン(物理)を受けているサイレンススズカやアドマイヤベガもちゃんと4桁を超えているのでご安心下さい。
「ウララさん、ほら、口のまわりにケチャップがまだ……ねぇ」
「えへへ、トレーナーありがとう!」
彼女たちについて、ステータスの賢さと頭の良さは別物であり多少なりとも自覚があるのだから心配するほどのことではないのだろう……と、考えごとをしながら手慣れた手つきで無意識にハルウララの世話をしつつ、貴方はゲートから爆ぜるように飛び出したウマ娘たちのことを心の中で応援しつつ冷静に観察していました。
先頭争い、サイレンススズカとダイタクヘリオス。
どちらも担当トレーナーが見つからず単独出走のウマ娘。それでもサイレンススズカはいつも通りサイレンススズカしているとしか形容できないので貴方も素晴らしいチート能力でも不可能もあるものだと諦めていますが、まさかのダイタクヘリオスまで担当トレーナー不在のデビューとなれば納得などできるはずがありません。
独特な言葉遣いはともかくコミュニケーション能力の高い彼女であれば新人トレーナーとて熱意さえあればスカウトのチャンスはいくらでもあったはずだと貴方は確信しています。
とあるイベントのパフォーマンス対決の相方として参加したときの様子を思い返しても、準決勝で全国各地のお寺の和尚さんが集まったチーム“暴'z”の筋肉マンダラ回天説法の前に敗北したもののアプリと同じようにオーディエンスにはとても愛されていました。
普段はパリピしていますが取引中は真面目に話を聞いている、トレーニングそのものはチート由来のワケのわからない内容でも全力で楽しみつつほかの取引ウマ娘たちのメンタルケアを──こちらは無自覚の可能性もありますが──適切に行いそれをしっかりと報告する、貴方が不在のときにはほかの取引ウマ娘たちのリーダーとしてトレーニングを実行する、などなど。
これだけ気軽に声をかけられるだけの社交性を持つダイタクヘリオスをどうして誰もスカウトしないのか貴方には心の底から理解できないようです。
そんなふたりの後に続くのは全力でレースを楽しみながら本気の勝負にワクワクしているクラシカル魔王系スーパーカーと、どうやらアプリのように妹たちと価値観がぶつかるイベントが発生しなかったらしい東京アルバイト優駿。
そのやや後方、これだけの濃いメンツ相手にただの爆逃げでは分が悪いと判断したらしく鋭い視線でチャンスを伺うメジロパーマーはちゃんと担当トレーナーが一心同体してくれるだろうという安心感があるものの、その真後ろで虎視眈々と獲物を狙うライスシャワーもまた担当トレーナーが不在です。
やはり菊花賞の前哨戦でミホノブルボンに勝利し一着になったあとのインタビューで「ブルボンさんは三冠ウマ娘にはなれないよ。だって菊花賞はライスが勝つから」と堂々と宣言したことが不味かったのか、あるいは菊花賞の勝利インタビューで「次は……春の、天皇賞で」と言って観戦していたシンボリルドルフやメジロライアンを一度指差してから喉をトントンと叩いて露骨に挑発したことがダメだったのかと貴方も頭を抱えていました。
お兄さま、あるいはお姉さまが現れないことでステータスの成長やアスリートとしての能力は高いものの完全に“悪い子ライス”となってしまったことは残念な事実かもしれません。
ですがそのダークヒーロー的なカッコよさにレース場が盛り上がり、その姿に憧れた少年少女からの声援がたくさん届いたことは悪くないと貴方も感じています。いつかの女の子とも学園祭で良い形で再会していたことも上出来です。
とにかく。
ほかにもスーパークリーク、アドマイヤベガ、エアシャカール、ヤエノムテキほか。ファン投票で出走が決まる有マ記念を走るウマ娘たちの多くがトレーナー不在の単独出走という事実に中央トレセン学園やURAはもっと危機感を抱くべきでは? と貴方は真剣に考え始めています。
人材の育成に時間と資金が必要なことぐらいは貴方も承知していますが、だからこそウマ娘たちのことを輝かせてくれるトレーナーが存分にその能力を活かせるような環境作りは必要不可欠。
そのための舞台装置として悪役トレーナーの自分という好都合な存在がいるのだから、もっと真面目に追放について本気を出して考えてほしい。そしてその過程で能力だけではなく精神性もしっかりと評価してウマ娘を信じて任せることが可能なトレーナーを増やしてほしいという結論を導き出せるのはきっと貴方だけに許された伝説なのかもしれません。
さて、いつもの貴方であればレースを楽しみつつ新たな追放計画を立案するため思考の海で日光浴を楽しむ場面ですが、今回ばかりは取引モブウマ娘たちの引退レースということでしっかり頭を切り替えることにした様子。
なにせ貴方の見立てでは、今回の有マ記念は37パーセントほどの確率で芦毛の怪物オグリキャップが勝利します。ライバルの中には見事三冠ウマ娘となったナリタブライアンも含まれていることを加味すれば、勝率が3割を超えていることは流石としか言いようがありません。
そんな魔境をラストランの舞台として選んだ取引モブウマ娘たちの勇姿をしっかりバッチリ、それこそ貴方の中で完成している彼女たちの姿を想いながら心に刻みましょう!
作者はオグリキャップの特殊実況が1番好きですね。有マ記念のBGMも好みなので、イベント周回のときも流れ作業による操作ミス以外ではいつも見てます。