貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。 作:はめるん用
『オグリ一着ッ!! オグリ一着ッ!! 強力なライバルたちとの大接戦の中、見事ファンの期待に応えて見せましたッ!! 芦毛の怪物オグリキャップ、スーパーウマ娘ここにありッ!! 一着はオグリキャップですッ!!』
繰り返し映像を確認してはオグリキャップという努力する天才の走りを面白いと評価しながら、貴方は今後の追放計画のヒントを探しつつ今後の取引ウマ娘たちのトレーニングに活かせるような情報を探る作業を続けていました。
そこには走りの技術を学ぶだけでなく、アイドルウマ娘としてファンに愛されているオグリキャップを参考にすることで取引ウマ娘たちのスカウト率を上げたいという願いが含まれています。
貴方の目的は取引ウマ娘たちを活躍させることではありません。取引ウマ娘たちを活躍させる、あるいは能力を引き出して注目させることにより善人トレーナーたちにスカウトさせることで追放計画を後押しさせることが本来の目的です。
やはり、チート能力を持つ紛い物のトレーナーではウマ娘たちの真なる輝きを引き出すことなど不可能なのか────などと落ち込む貴方ではありません。
明日、最高の形で追放されるために、今日、より悪役としての高みを目指すべし。天才的な医療技術を身につけながら国境なんか知らねぇ系医師団に所属して世界各地を巡っている貴方の友人も「成長しているつもりでようやく現状維持、現状維持できているつもりならそれはもう衰退」と語っていたことを覚えている貴方に立ち止まるなどという選択肢は存在しないのです。
取引ウマ娘たちが単独出走のままコースの上から去ってしまうことは貴方にとってとても残念な事実ですが、まだまだ取引ウマ娘は大勢いますのでスカウトされるチャンスはいくらでも残っています。
少なくとも貴方の追放計画ではレジェンドウマ娘扱いされつつあるミスターシービーもバリバリの現役である以上はスカウトの可能性が残っているという扱いになっていますので、とりあえず彼女がレースを楽しんでいるうちは追放計画が無限に広がり続けることでしょう。
妖怪枕返しでも混乱のあまりイタズラを躊躇うほど大きな夢に向かってアーティスティックに突き進み続ける貴方ですが、ときには気楽にレースの余韻を楽しみたいと考えることもあります。
今度は息抜きのつもりで有マ記念の映像を再生する貴方。序盤こそ全てがレース前に予想していた通りの展開ですが、途中からモブウマ娘たちが走りながら『進化』し始めたことについては完全に想定外でした。
それは貴方が彼女たちの育成プランを組み立てているときに思い描いていた『完成した走り』であり、限りなく近づけることはできても不確定要素により決して到達することはできないモノであると割り切っていた姿なのです。
もしも、それが完成していたら……と。貴方がコースの上にそれらのイメージを投影しながらレースを観戦していたところ、徐々にモブウマ娘たちとイメージとの間にあった距離が縮み始めました。
結果だけを見れば全員が入着すらできませんでしたが、限られたレースの限られた時間だけとはいえ前世でネームドと呼ばれていた主役級のウマ娘たちを相手に抜きん出たのは転生者である貴方にとって感動的な光景ですらありました。
もちろん貴方ひとりが楽しんで終わり、では追放計画に活かせません。重要なのはここからです。
この可能性という名の人間讃歌ならぬウマ娘讃歌を広げれば、トレーナー不在のままトレーニングを続けてメイクデビューを待つ臥薪嘗胆ウマ娘たちがスカウトされる確率は跳ね上がること間違い無し。
そして取引ウマ娘たちが自分の手元から全て立ち去ったそのとき、邪悪の化身としてウマ娘とトレーナーたちの前に立ちはだかり塵芥の如く中央トレセン学園から追放されることだろうと貴方は確信しました。