貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。   作:はめるん用

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 食らえ、ドリルくちばし! ドゥルルルル!



もちこんどる。

「貴様、エルコンドルパサーと交流があったな? 貴様もトレーナーであれば、彼女のオーバーワークについて多少はケアをしてやることだな」

 

 

 ある日のルームにて。貴方がいつものようにミスターシービーたちを相手にモノポリーなどで連敗記録を更新していると、育成評価Aのエリートなトレーナーが突然やってきました。

 最近スカウトしたらしいデビュー前のウマ娘はGⅠ勝者たちに朗らかに歓迎されカッチン鋼のようになっていますが、さすがエリートは格が違うらしくご機嫌なマンハッタンカフェが差し出したコーヒーに口をつける瞬間に一時停止した以外は実にスマートな立ち振る舞いをしています。

 

 追放を目指す貴方にとってエリートトレーナーの訪問はヘイトコントロールのチャンスなのは確かです。

 しかし用向きがエルコンドルパサーの体調管理に関わる話ということであれば、まずは真面目に耳を傾けるべきだろうと判断した様子。

 

 とは言うものの、貴方には前世の記憶とゲーム知識という強力無比な転生者特典が揃い踏みしています。

 それはさながら風神と雷神、最強の矛と無敵の盾、中央トレセン学園の食堂に最近追加された煮魚とお刺身がセットの定食、赤色ノースリーブサングラスおじさんと100年戦える黄金のモビルスーツのコンビのように負けるビジョンとは無縁でしょう。

 

 案の定、エリートトレーナーが語るにはエルコンドルパサーはスカウト希望のトレーナーたちに対して一時的なトレーニングプランの提出を提案しているようです。

 貴方は彼女の担当トレーナーではなくトレーニングなどの世話を少しだけ引き受けて選抜レースの準備を手伝っているだけの他人なので実際にどのような状況なのかを見たことはありませんが、その辺りのことは本人を含むウマ娘たちから聞かされているので問題なく情報を共有できています。

 

 

 学園全体で評価するのであれば、現段階のエルコンドルパサーは“それなりに走れるウマ娘”という枠の中にいる状態でしょう。高等部のウマ娘たちから順番にメイクデビューを果たしているのがこの世界ですので、まだ実戦を知らない中等部のエルコンドルパサーでは、いくらアプリでネームドウマ娘として扱われていたとしてもその程度に落ち着いてしまいます。

 しかし視点を変えれば“高等部のウマ娘たちを含めた”上でそれなりということですので、中等部のウマ娘の中では上澄みだと言っても差し支えありません。そんなウマ娘がフリーなのですから、貴方のようにモチベーション維持のため仕方なく休日に一緒にマウンテンバイクを見に行く程度の付き合いしかない無気力なトレーナーでもなければスカウトのため熱心に働きかけるのは当然の流れと言えます。

 

 

「エルコンドルパサーの能力については私も認めよう。彼女は良い脚をしている。それぞれがどのような思惑でスカウトするかは別として────トレーナーであれば、放置するという選択は無い。……私か? 興味無いな。なにより、既に面倒を見ねばならんウマ娘で手が埋まっている」

 

 

 チラリ、と横を見れば一流のトレーナーがスカウトしたとは思えないステータスの低いウマ娘がサイレンススズカの絶景ランニングスポットコレクションの話を楽しそうに聞いています。

 

 近い将来、きっと目の前のエリートトレーナーは担当ウマ娘と一緒にスポーツウェアなどを買いに行くことになるのだろう。

 業務外の時間までウマ娘に付き合うなんて真面目なトレーナーは大変だなと心の中でほくそ笑みつつ、確かにエルコンドルパサーほどのウマ娘が近くにいながらスカウトしないトレーナーなど存在するはずもないだろうと同意しました。

 

 

「…………………………まぁ、そうだな、貴様がそう言うのであればそう……なのだろう。とにかく、だ。トレーナー側がウマ娘の才能を過信して役目を忘れ怪我などさせたのでは中央全体の品格を疑われる。そうなる前に………………とにかく、貴様もなにか、考えておけ。コーヒー、ご馳走になった。おい、行くぞ」

 

「え? あ、ハイッ! スズカ先輩、ありがとうございました!」

 

 

 わざわざ育成評価Gの最下層トレーナーにまでエルコンドルパサーの体調管理について注意喚起に来るほど気にかけているのであれば、いっそのこと担当契約を交わして責任を持ってしっかり面倒を見たほうが早いのではなかろうか? 

 

 選抜レースこそまだでも模擬レースで将来性はしっかりとアピールできているのだから、育成評価の高いトレーナーほどスカウトを躊躇う理由も無いだろうに。

 そんな具合にエリートトレーナーの行動ロジックについて不思議に思う貴方ですが、実際のところエルコンドルパサーがアプリの個別ストーリーのように疲労困憊してしまうのは好ましい状況ではないことは理解しています。

 

 そちらの世界線では自分の価値を示すことに夢中になっているトレーナーたちが次々とハードなトレーニングプランを持ち込んでいる中で、エルコンドルパサーの体調を慮り軽めのトレーニングを提案することにより怪我を未然に防いでくれる優秀でウマ娘想いのトレーナーが存在しました。

 きっと、こちらの世界でも同じようなトレーナーがいるはず。中央トレセン学園には未だ見ぬ素晴らしいトレーナーが存在しているらしいのだから。きっとスカウトの成功にばかり目が眩む者たちを退けて、真に彼女のためを想いエルコンドルパサーがトゥインクル・シリーズで活躍できるように尽力してくれるだろう。

 

 ならば自分の役目は彼女に相応しい担当トレーナーが現れるまで、少しでもエルコンドルパサーの故障率をコントロールし万全の状態でスカウトされるよう取り計らうこと。

 いつだってヘイト稼ぎなどチョコチップクッキーを電卓代わりに活用するぐらい容易く実行できる貴方は取り敢えずエルコンドルパサーの状態を確認することを優先しても良いだろうと考え、さっそく隣の部屋でデトックスと疲労回復を兼ねた唐辛子料理バトルロワイヤルに参加している彼女の様子を見に行くことにしました。




 だからどーしたという話ではあるのですが、エルコンドルパサーの勝利モーションの宙返りを見てるとゲームのグラフィックの進化を感じます。 
 派手なエフェクトや画質の向上とは別に、衣服や髪の毛を含めて自然な感じでくるりと回るのは見ていて楽しいですね。問題があるとすればスキップ機能が便利過ぎて見る機会が少ないことでしょう。
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