貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。   作:はめるん用

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 マルシュはともかくラララのねーちゃんが中等部はなぁ……。とりあえずルビーを隣に立たせてみるのはどうだろう?


スイカ。

 かつて今孔明と評された戦国の天才トレーナー・竹中半兵衛のように天才悪役トレーナーとして今益徳と呼ぶに相応しい知力の持ち主である貴方は、セイウンスカイに効率よく嫌がらせをするためにはセイウンスカイのトレーニングを小まめにチェックすれば良いのでは? と考えました。

 通常であれば“担当トレーナー不在のままメイクデビューの準備を進めるウマ娘のことを心配している善良な指導者”として見られてしまう可能性も無いとは言えません。ですがそうしたプラスの評価とは日頃の言動の積み重ねがあってこそであり、常に悪役としての自覚を忘れず行動してきた貴方にとっては存在しない可能性なので心配いりません。

 

 次にクリアしなければならない条件は“担当でもないセイウンスカイのトレーニングに如何にして接触するか”という部分ですが、当然日頃の行いに自信アリの貴方にとってはコチラも容易いことでしょう。

 何故ならセイウンスカイたち黄金世代の5人を含めてメイクデビューの準備が必要な単独出走予定のウマ娘たちとの取り引きは40人分ほど重なっており、駿川たづな秘書に申請して許可は得ているというエアグルーヴの段取りで教室ひとつ丸ごと使いまとめて面倒を見ることもあるからです。

 

 木を隠すなら森の中、ウマ娘を隠すならウマ娘の中。これならセイウンスカイを狙い撃ちにしているとは誰も思わないでしょう。ミスターシービーをはじめとした高等部のウマ娘たちとの取り引きという実績を鑑みれば、貴方の見事なほどに完璧なカモフラージュはセイウンスカイたちがシニア級の有マ記念を終えたあとも誰にも見破られることはないかもしれませんね! 

 

 

 さて、一見すると今回の追放計画は中等部のウマ娘たちに貴方も真面目にトレーナーとして仕事をすることもあるのかもしれないと誤解させてしまう危険性があるように思えるかもしれません。

 しかしそれは素人悪役の狭い視点で物事を判断しているからであり、表面的な部分だけではなく物事の裏の裏の隣の手前の地下通路まで油断なく観察している貴方には“悪役トレーナーにつきまとわれる不憫なウマ娘を助けなければ”と周囲が奮起する未来が既に見えています。

 

 取り引きを持ち掛けてくるウマ娘が10人いるとき、真っ当なトレーナーにスカウトされて行くウマ娘は平均して7人から8人ほど。これを貴方の追放方程式に当てはめれば離脱率が75パーセントに対して加入率は僅か25パーセントとなります。

 つまり取引ウマ娘の増加の実数値に対する減少の理論値は通常の3倍という答えが導き出されますので、このままのペースで続ければ周囲からウマ娘の影が消え去るのは時間の問題であるというのが貴方の自信を支える根拠なのでしょう。

 

 斬新な数式を前にピタゴラスも驚愕のあまり「数の調和とかもうサイコロでテキトーに決めちゃえばいいんじゃない?」と言い出しそうなほど素晴らしいロジックですが、理屈だけ先行しても行動が伴わなければ意味がありません。

 

 

 まずはセイウンスカイに接触するため貴方の利用価値を示すところから始めることにしましょう。

 

 とても好都合なことに高等部の逃げウマ娘の誰かと違い貴方がわざわざ止めるようなマネをしなくてもセイウンスカイは体調管理を自分で考えることができるので、脚の具合に違和感がある日は基本的に貴方のルームでソファーの点検係を頼んでもいないのに熱心に引き受けてくれています。

 

 本来ならば計画の一歩目として声をかけるだけでも苦労したはずですが、いくつもの幸運が重なったおかげで今日も目の前でジュースを飲みながらゴロゴロしているため簡単に次のフェーズに移行できる状態です。

 ちなみにステータスを確認したところ体力の残りは2割ほど。賢さトレーニングにサポートカードが集まっていれば賭けに出るか悩むプレイヤーも少なくないかもしれません。

 

 次に貴方が用意するのはセイウンスカイのためのトレーニングプランです。これまではメイクデビューを前に基礎的なステータス強化を中心にしつつ長距離用の走り方を隠し味に加える程度でしたが、今後はアプリトレーナーのようにセイウンスカイの飄々とした性格を含め彼女を信頼してレースに送り出してくれるトレーナーが現れたときに備えより具体的な目標を定めたトレーニングが必要となります。

 当たり前のことですが、ここで前世の知識があるからと正直に「お前なら皐月賞と菊花賞を狙うのが妥当」などと余計な発言をしてはいけません。追放されるためウマ娘に嫌われることを目的としているのに、ウマ娘に対してGⅠレースに勝てる可能性を仄めかすような頓珍漢な悪役トレーナーなど鼻にワサビを詰めて出直してこいとさえ貴方は考えています。

 

 チート能力により肉体を鍛え上げた転生者に鼻ワサビが有効なのかはともかくとして。もとよりクラシック級の三冠路線は中距離をそれなり以上に走れるウマ娘であれば誰もが1度は考える目標です。セイウンスカイの性格からしてライバルたちとの勝負も楽しみにしているだろうと判断した貴方は、ここは無理に奇を衒わずとも問題ないと判断しました。

 

 そうして書き上げたトレーニングプランを。

 

 

「お〜? 一平さんのチャンネルが更新されてるじゃ〜ないですか。ふ〜む、相変わらず良い延べ竿をお使いになられていらっしゃることで。不便だって言う人もいるけど、数を釣るより吟味するのも面白さで────あたッ?!」

 

 

 お見事! トレーニングプランの書かれた紙飛行機は油断していたセイウンスカイの鼻先にしっかりと命中しました! 

 遊び心と悪ふざけの両立、これこそウマ娘に嫌われても構わない悪役トレーナーだからこそ許される通信手段です!

 

 投げ返されたオニオコゼのぬいぐるみを弾き返す貴方の嫌味な笑顔は大満足といったところ。勝手に戸棚を漁っていたところ後頭部にソレが直撃したナリタブライアンも恨めしそうに貴方を睨みつけています。

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