貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。   作:はめるん用

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ガードキル。

「失礼する。取り引きがしたい。夜間練習に参加しているウマ娘たちのためにトレーニングマニュアルを作成してほしい。もちろん個別に、などと贅沢は言わん。大まかな指標になればそれでいい」

 

 

 先輩トレーナー方との交流に失敗してしまった翌日、重箱の包みを抱えたエアグルーヴが貴方のルームにやってきました。

 

 貴方の監督役はあくまで名目であり、夜間練習はウマ娘たちの自由にさせています。エアグルーヴが言うには、いままではそれでよかったものの、これから人数が増えるとトラブルも確実に増えるだろうとのこと。

 追放を希望する貴方としては、自分が監督しているときにトラブルが発生するのは望むところです。しかし、自分のような下っぱよりも先に学園の責任者である秋川やよい理事長が頭を下げることになるのは確実ですし、ウマ娘同士のケンカや最悪の場合レースに影響するような怪我をしてしまうかもしれません。

 

 貴方がエアグルーヴとの取り引きに応じると、昼の時間に手間取らせた詫びだと重箱のお弁当を差し出しました。貴方としてはこれが取り引きの報酬扱いでもよかったのですが、それとこれは別だとエアグルーヴは水筒まで取り出します。

 本人がそう言うならばと、ほかのウマ娘たち同様“貸しひとつ”と貴方が提案すると、今度こそ納得した様子でエアグルーヴが退出しました。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 さて、これから貴方はウマ娘たちのためにトレーニングメニューを組まなければなりません。

 

 作業そのものは特に問題はないでしょう。貴方は学生時代、チート能力を使い無尽蔵の体力を得てトレーナー業務に必要になりそうな知識を片っ端から頭に叩き込んでいるからです。

 しかし、ここで貴方は新たな追放計画を思い付いてしまいました。トレーニングメニューを利用すれば、さらなる嫌がらせをウマ娘たちに仕掛けることができるかもしれないと考えたのです。

 

 まず貴方はトレーニングメニューを32種類制作しました。芝とダートで2種類、それを距離別に分けて8種類、そこから脚質に合わせて32種類です。

 

 そしてこれを監督役という立場を利用してウマ娘たちに押し付けることにより『担当でもないトレーナーにお前の適性はこれだと一方的に決められた!』と不満を爆発させる。

 これには提案者のエアグルーヴも怒り心頭間違いなし、あんなたわけトレーナーに頼るべきではないと大勢のウマ娘たちに注意喚起をしてくれるはず。

 生徒会の副会長という立場による発言力と、メイクデビュー前から後輩たちに慕われるほどのカリスマとコミュニティをもってすれば、もとより虫の息である自分の評価など霞と消えるに違いないとほくそ笑みを浮かべています。

 

 とはいえ、ウマ娘とトレーニングプランの組み合わせだけは真剣に考えなければいけません。

 

 もっとも、食事をしながらとはいえ事故を未然に防ぐために練習そのものは本気で観察していましたので、夜間練習に参加しているウマ娘たちの能力は概ね把握しています。

 加えて、自身の野望のためとはいえ引き受けたからには最低限の礼儀だろうと、監督しているウマ娘たちの顔と名前は全て記憶しています。

 なので、あとはひとりひとりの走り方の癖や性格による競り合いの仕掛け方などを丁寧に思い出しながら組み合わせるだけの簡単な作業でしかありません。

 

 

 2時間ほどで全ての作業を終えた貴方は、明日以降どれだけのウマ娘たちから悪意のある視線を向けられるのかを楽しみにしながら、空になったお弁当の重箱を洗い始めました。




次回はグルーヴ視点です。

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