貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。   作:はめるん用

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ぴんちょ。

 貴方はこの世界で唯一ウマ娘の能力を正確に数値として確認できるトレーナーですが、間違いなくこの世界で一番数値を信用していないトレーナーです。

 能力だけでレースに勝てるのであれば、目覚まし時計など必要ないのだと大声で叫びたいぐらいには疑っています。

 

 なので、純粋な身体能力ではミスターシービーが格上ですが、それは勝てる可能性が高いというだけで勝ちを保証するものではないと考えています。

 ならば目の前のウマ娘が1着になることだって充分あり得る。本人もやる気だろうし、サクッと言い返してくるだろう。そう考えていましたが……ウマ娘は思いっきりタメ息を吐きました。

 

 

 彼女が言うには「期待してくれるのは嬉しいけれど、今日のメイクデビューは完全にミスターシービーが主人公扱いされている。そんな中で脇役の自分が勝利宣言なんてしたら立派な踏み台フラグになってしまう」とのこと。

 

 なるほど主人公。たしかにミスターシービーは主人公と呼ぶに相応しい“格”があるのでしょう。

 ウマ娘を始めるまで競馬のことはほとんど知らなかった貴方でも聞いたことがあるくらいですので、それだけミスターシービーはモデルの馬も強かったのだろうと想像できます。

 

 

 が、それはそれです。

 

 

 アドバイスをしていたこともあり、ミスターシービーの走りが気になるのも事実です。模擬レースはもちろん、トレーナーへのアピールのための選抜レースですら彼女は走らなかったものですから、実戦でどのような走り方をするのか興味はあります。

 ですが、いまの貴方はそれ以上に目の前のウマ娘がどのような走り方をするのかを知りたくて仕方がありません。何故なら思いの外プランの作成に苦労し、半ば寝惚けたような状態で完成させたものですから、ウマ娘がどのような走り方でミスターシービーと勝負をするのか気になるのです。

 

 

 ──ほかの誰がミスターシービーを主人公と呼ぼうと自分には関係のないことだ。今日このレース場に来たのはミスターシービーというウマ娘を見るためではない、メイクデビューというウマ娘たちのレースを見るために来たのだ。だから諦めて、お前の走りで俺をワクワクさせてくれ。

 

 

「~~ッ!! あーもぅッ! わかったわかったわかりましたよッ!! 言えばいいんでしょ言えばッ! やったりますよアタシがッ! ミスターシービーがなんぼのもんじゃい! 天才サマなんかチョチョいのチョイで仏恥義理してやんやんよ! ガハハハハッ!! ……さぁもう気はすんだでしょ。取り引き完遂お疲れ様です! ほら、行った行ったッ!!」

 

 

 ◇◇◇

 

 

「トレーナーちゃん、ちゃんとお話はできたみたいだね☆ ……え? もちろんマヤはわかってたよ? だって、シービー先輩と一緒に走る先輩たちの中ではあの人だけだもん。トレーナーちゃんからアドバイスをもらってたの」

 

 やっぱ天才ってズルいかもしれん。少しだけあのウマ娘に悪いことをしたかなと反省した貴方は、マヤノトップガンに連れられて観客席へと向かいました。

 レース関係者のためのエリアにも興味はありましたが、ヘイトを稼ぐ利点より面倒だなという気持ちが勝ったのでしょう。悪役らしく壁際にもたれ掛かることも諦めて、素直に手を引かれるままウマ娘たちと合流しました。そして──。

 

 

「あ、トレーナー! お買いものはもうおわったの? えへへ、あしたのお昼ごはんたのしみだな~♪ トレーナーのスペシャルから揚げはどんな味なのかな~♪」

 

「その、あのね? トレーナー。キングちゃんも悪気があったワケじゃないの。あたしも手伝うから、その……とっても美味しいから揚げ、頑張って作ろうね!」

 

 

 ふと、横を見ると「ぷひゅ~ こひゅ~」と下手くそな口笛を吹きながらあさっての方向を見つめるキングヘイローがいます。

 いったいどんな説明をしたらお手洗いの隠語がから揚げの注文になるのだろうか。悩ましく思いつつもガッカリさせるワケにはいきません。貴方の明日の午前中の予定は鶏肉の下拵えに決定しました。

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