貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。   作:はめるん用

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がんこおうじゃ。

 もともと競馬には詳しくなかった貴方ですが、ウマ娘を通してモデルになった名馬たちの活躍を知ってからは、GⅠレースに勝利することが名誉であることは理解しています。

 だからこそジュニア級で挑戦できる3つのGⅠレースについて話し、誰が勝つのか楽しみだとコメントしたのですが……あまりにも簡潔に表現しすぎたせいで、相手も反応に困っているのでしょう。

 

 これはさすがに自分の不手際だろう。そう考えた貴方はもう少しだけ自分の考えを詳しく説明することにしたようです。

 といっても、特に難しい話をするワケではありません。クラシック三冠ウマ娘を目指すか、トリプルティアラを目指すか、スプリント・マイル路線でスピードの向こう側を目指すか。様々な形の“最強のウマ娘”がここから始まるのだと思うと、トレーナーとしては楽しみで仕方がないのだと話しました。

 

 

「──ッ! なるほど、そういうことでしたか! えぇ、それならわかりますよ。私もいろんなレースを観に行って楽しんでますから。いや~申し訳ありませんね、ほら、中距離のレースって結構特別感が強いじゃないですか。東京優駿、ジャパンカップ、そして世界の凱旋門賞もそうでしょう? トレーナーという立場なら尚更かと思いまして」

 

 言われてみればその通りだと、ようやく貴方は納得したようです。ですが、ここで素直に同意するワケにはいきません。

 

 正直な気持ちとしては、貴方も中距離レースには思い入れがあります。スペシャルウィークやウイニングチケットの日本ダービーはもちろん、秋の天皇賞や宝塚記念など、脚質も目標レースも中距離のウマ娘を何人も繰り返し育てていたからです。

 しかし、いまの貴方はアプリユーザーではなくひとりのウマ娘トレーナー。ここで個人の価値観をテレビで垂れ流して、中央トレセン学園のトレーナーが誤解されるような返答は許されません。貴方は冷静に思考を巡らせ始めました。

 

 平凡で普通のトレーナーならばどうするのが正解か。いや、ここは逆転の発想でいくべきだろう。一流のトレーナーであればGⅠレースの価値を正しく理解し丁寧に扱うはず。ならば自分のような十把一絡げのトレーナーであれば、距離はもちろんグレードも分け隔てなく適当に扱うのが道理か。

 

 

 そう考えた貴方は「特別なレースなどというものはない。そこに本気で走るウマ娘がいるのだから、重要ではないレースなど存在しない」と答えました。

 

 

 周囲の空気が一時的に停止したのを見逃さなかった貴方は、表面上は普段のように飄々としていますが内心では大喜びです。

 

 取材班はもちろん、ウマ娘たちや周囲のお店の店員さんまで貴方の面白味の無い回答に呆れているのがよくわかります。もしかしたら自分のインタビュー部分がまるごとカットされる可能性もありますが、それは貴方としては好都合でしょう。

 撮れ高が無く編集作業が面倒になってしまうことを思うと申し訳ないという気分にもなりますが、これも野望のためと感情を飲み込むことにしたようです。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「今日はご協力ありがとうございました。おかげさまでなかなか面白い画が撮れましたよ。もしご迷惑でなければ、友人の取材にもご協力をお願いできますか? 月刊トゥインクルという雑誌は──あぁ、トレーナーさんには説明するまでもなかったですよね、失礼しました。えーと、それでですね、友人が記者をしてまして。多少、情熱が強すぎるところがありますが……必ず、素晴らしい記事を書いてくれるはずです」

 

 何故か機嫌の良いスタッフからの提案に、貴方は時間が合えばと無難な返答をします。どのような記者が取材に来るのかはわかりませんが、いまの貴方は学園での生活がほぼ夜行性になりつつあります。なので、その記者とエンカウントする可能性は限りなくゼロに近いかもしれません。

 

 貴方は買い物を再開することにしました。テレビの取材で気分が高揚しているのか、ウマ娘たちが荷物持ちを手伝ってくれるようです。

 本来ならば遠慮する場面ですが、成人男性が女子学生に力仕事を任せるという構図は悪人ポイントの高い行為。ここはありがたく頼ることにして、商店街をじっくり品定めしながら歩くとしましょう。




また節目に世界観の説明を差し込むべきか、どうしたものか。

説明不足もアレですが、説明過多もアレなのが悩ましいですね。

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