貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。   作:はめるん用

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塩バニラ飴なるもの、美味でした。
でもそれはそれとして、次からはレモン味かウメ味を買おうと思います。


ふとんがでんわ。

 当たり前のことではありますが、トレーナーとして働く意思を浜の真砂の一粒ほどにも持ち合わせていない貴方は選抜レースを見る必要がありません。

 

 ですが、それはそれとして選抜レースそのものには興味津々です。特に今回は生徒会長であるシンボリルドルフが出走することもあって、ジュースを片手に野次馬根性を欠片も隠す気配なくレース場に足を運んでいます。

 シンボリルドルフと交流のあるウマ娘たちは皆が応援のために最前列にならんでいます。普段は貴方の近くで機嫌良くニコニコと笑っていることが多いマヤノトップガンも、今日はトウカイテイオーの隣に並んで手を振っているようです。

 

 選抜レースの予定が順番に消化され、いよいよシンボリルドルフの出番が近付いていることもありレース場もだいぶ賑わってきました。模擬レースでも負け無しとのことですから、まともなトレーナーであれば喉から手が出るほどスカウトしたいと思っていることでしょう。

 貴方の目的は、むしろそんなトレーナーたちのほうにあります。残念なことにミスターシービーとマルゼンスキーはトレーナー不在でデビューすることになってしまいましたが、さすがにシンボリルドルフまでトレーナーが見付からなくて単独出走を……などということにはならないはず。そう強く期待しているのでしょう。

 

 

 今度こそアプリに登場した、ウマ娘を支えるために産まれてきたようなスーパートレーナーが現れる可能性がある。

 この世界に転生してから自由を満喫してきた貴方は、そんなトレーナーが現れる瞬間を見たいという欲望に逆らえませんでしたし、逆らうつもりもありません。

 

 

 さて、貴方がレース場の壁際でおしるこをすすりながら精一杯悪人らしく見えるよう体勢をキープするという哀愁に満ちた努力に全力を出している中、いよいよ選抜レースの最終レースが始まりました。

 シンボリルドルフの脚質は王道を行く先行・差しです。無理にインコースを狙うことなく、余裕をもって外側を走る姿はさすが未来の皇帝といったところでしょう。

 

 ただ残念なのは、ほかのウマ娘たちの走りに気迫が足りていないことです。その気持ちはわからなくもありませんが、選抜レースであえて勝利を定義するのであれば“1着をとること”ではなく“スカウトされること”にあると貴方は考えています。

 

 事実、貴方が監督している夜間練習に参加しているウマ娘たちの中には、レースで1着を取れなくともトレーナーからスカウトされている者がそれなりの人数います。

 そのことでウマ娘たちがお礼を言いに来たことについて貴方はさっぱり理解できませんでしたし、何故かトレーナーたちが菓子折りやらお米やら巨大な冷凍肉の塊やらを持って挨拶に来たときなど意味不明過ぎて咄嗟に『マーベラスッ!!』と叫びそうになりもしましたが……ともかく、トレーナーは別に1着になったウマ娘だけに注目しているワケではありません。

 

 シンボリルドルフが強いウマ娘であるからこそ、それに臆することなく喰らいつく胆力を持つウマ娘を放っておけるトレーナーなどいないはず。

 ただ、理想の実現のために、そして生徒会長という立場故の気概を放つ彼女に挑むのは容易いことではありません。もったいないという気持ちはありますが、こればかりは無責任に頑張れとは言えないか……と、貴方も納得することにしたようです。

 

 

 選抜レースの結果は当然の権利のようにシンボリルドルフの完勝でした。七バ身差という圧倒的な勝利にトレーナーもウマ娘も興奮している者が多い中、静かに笑う貴方にとってはここからがお楽しみの本番です。

 誰もがスカウトをためらって動けずにいると、ゆっくりとシンボリルドルフのほうからトレーナーたちへと歩み寄りました。そして皆が静まったのを確認すると、強い意志を感じる落ち着いた口調で彼ら彼女らに問い掛けます。「私と共に理想を歩む、その覚悟を見せてほしい」と。




アプリトレーナー、だいたい選抜レースより前でウマ娘のこと射止めてる気がします。グラスワンダーやフジキセキあたりがギリギリ……いや、アレもうレース前に落ちてるな……。

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