貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。   作:はめるん用

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でんわにくまった。

「ねぇトレーナー。なんかブライアンから三冠のこと応援されたついでにケンカを売られたんだけど、なにか知ってたりはするよね?」

 

 貴方が夜間練習が始まるまでの空き時間を利用し、次の『学園を追放されて自由に羽ばたいてやるぜ大作戦』について考えていたところ、唐突にミスターシービーからそんな質問がとんできました。

 特に誤魔化すようなことでもないので、貴方は正直に「自分は普段交流はないし大した会話もしたことがないから心当たりはないが、ナリタブライアンは強敵と競い合うことを望んでいるからターゲットにされたんだろう」と教えることにしたようです。無敗でジュニア王者の称号を手にしたミスターシービーであれば、彼女の渇きを癒す相手として申し分無いといったところでしょう。

 

 貴方の予測に対するミスターシービーの反応は、前半分は胡散臭いけどナリタブライアンの心情だけは信じるというものでした。

 正直に話したにも関わらず信じてもらえなかったことは貴方にとって最高の褒め言葉のようなものです。なにより、自分のことは疑ってるのにナリタブライアンのことは素直に受け取ってくれるところなどは実に好都合でしょう。

 

 トレセン学園で一番付き合いが長いだけあって、ちゃんと自分のことを見下してくれている。そんなミスターシービーの態度に貴方が楽しそうにしていると、貴方もまたナリタブライアンから睨まれていることを教えてもらえました。

 

 なんでも『首を洗って待っていろ』と彼女から伝言を頼まれたとのこと。

 

 これには貴方もニッコリです。つまりナリタブライアンは「お前のようなやる気のない、闘争心の欠片も持ち合わせていないようなトレーナーなどトレセン学園に相応しくない」と言いたいのでしょう。

 夜間練習のウマ娘たちへ向けた頼み事のこともあり積極的に動けなくなってしまったエアグルーヴとは違い、ナリタブライアンとはなんの関わりもありません。これはシンボリルドルフと協力し生徒会全体で自分を追放するために動いてくれる流れに違いない。貴方のナリタブライアンに対する期待感は相当高まっていることでしょう。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 皐月賞の前哨戦である弥生賞に向けて、追い込みのタイミングをもう少し調整したい。夜間練習が始まる前に走り方をチェックして欲しいとミスターシービーからの申し出を受け、貴方は自身の行動に一切の疑問を抱くことなく一緒にコースへと向かっています。

 

 どうやらマルゼンスキーが日本ダービーへ出走するために、中距離の実績作りを目的に弥生賞と青葉賞に出ることを決めたようです。ダービーより早く対決することになったのは別に構わないが、だからと言って勝利を譲る気はないとやる気に溢れています。

 おそらく、いや確実に。これはあとでマルゼンスキーからもアドバイスを求められることになるだろう。お互いの手の内を知る自分にふたり揃って頼ってくるのはどうなんだ? そんなことを思いながら歩いていると、マルゼンスキーとグラスワンダーが楽しそうに話している姿を見つけました。

 

 

 それだけならば特に気にする場面ではないのですが……貴方は視界の端のほうに素晴らしい発見があることに気が付きました! 

 なんと、シンボリルドルフとカメラを持った若い男性トレーナーが並んで立っているではありませんか! 

 

 

「どうしたのトレーナー、なにか面白いものでも──あぁ、ルドルフの隣にいる彼が気になるのかな? うん、選抜レースでの宣言からルドルフに声をかけるトレーナーはいなかったんだけどね、彼はほかの人たちとは違って積極的だったよ。一緒にランチも楽しんでいたようだし……トレーナー?」

 

 ミスターシービーの説明を聞いたことにより期待は確信に変わりました。とうとう貴方は追放プランにおける最強のピース、チート転生者の唯一にして最強の天敵である『現地主人公』の存在を確認することに成功したようです。


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