貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。   作:はめるん用

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やくとく。

「っしゃあッ! ゴルシちゃんもターフもコンディションは最高潮! 今日の模擬トライアスロンの1着はあたしがもらい受けるぜッ!!」

 

「おっと、そう簡単に勝てると思わんほうがええで? ウチはこれでも地元では鬼チャリのタマと呼ばれた爆走伝説を──ってンなワケあるかッ! ウチらの特訓のためにわざわざ集まって模擬レース開催してくれたんやろがッ!」

 

「あっはっは! いいじゃないか、とにかく絶好調ってことは確かなんだからさ。だからといって勝ちを譲る気なんてこれっぽっちもないけどね。先輩らの特訓のためとはいえ、本気でいかせてもらうよッ!!」

 

「いや、さすがに厳しいでしょ。本格化の進み具合が違うんだから。ま……マジで勝ちを狙いにいくってのはアタシも賛成だけど」

 

 

 健気にも鬼畜トレーナーとしての立ち振舞いを続けている貴方でも未来の皇帝に真向勝負を挑まねばならないゴールドシップとタマモクロスのことは気になるらしく、担当がいないならばせめて……と、彼女たちのスキルアップのために少しだけ手助けをすることにしたようです。

 幸いにして競争相手に困るようなことはありません。逃げも先行も差しも、そしてふたりと同じ追い込みを得意とするウマ娘にもいくらでも心当たりがあるからです。

 

 人望がマイナスであることに揺るがぬ自信を持つ貴方ですが、手配するのが誰であろうともレースはレース。夏合宿中で余裕をもってコースが使えるということもあり、ウマ娘たちを集めるのはそれほど苦労はしないだろうと冷静に判断しての行動でした。

 

 案の定、ナリタタイシンだけは「なんでアタシが……」といまひとつ乗り気ではありませんでしたが、そこは貴方が華麗なる挑発を叩き付けることで解決しています。

 ジト目で睨んでくる彼女へ貴方は「あのふたりがシンボリルドルフに勝つためにはどうしてもお前の協力が必要だった、ただそれだけのことだ。ほかに理由など無い」と真っ直ぐ眼を見て告げています。数秒ほど考え込んだナリタタイシンは「……貸し、ひとつだから」と渋々ながら引き受けてくれました。

 

 もちろん声のボリュームが豊かな友人と、髪のボリュームが豊かな友人もしっかり参加しています。これはチート能力も悪役ムーヴも関係なく、転生者である貴方は当然想定していた事態なので特に問題ありません。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「うーん……。まぁな~、ウチはこの体格やし、競り合いはやっぱ危ないかなぁ。けど位置取り気にして控え過ぎてもスパートの仕掛け時逃したらアホ以外の何者でもないしなぁ~」

 

「いっそアタシみたいにロングスパート試してみっか? トレーナーはアタシ以外のウマ娘にゃあんまり向いてないって言ってるけどよ、案外新しい発見とかあっかもよ?」

 

 

「ハヤ……ヒデェ……! スタミナが……ス゛タ゛ミ゛ナ゛がだりな゛いよぉぉぉぉ……ッ! こんなんじゃダービーなんでぇぇぇぇ……ッ!!」

 

「安心……しろ、チケット……。あの、ふたり、が……おかしいだけ……だ……ッ!!」

 

「これが……デビューしたウマ娘の、実力なのですか……ッ!? 予定を……早急に、スケジュールの、組み直しが必要……です、ね……」

 

「肺活量えっぐ……加速ヤバ……ウチにはワンチャンもなかったわ……ぴえん……」

 

「あは、あはは……ッ! 久しぶりに、筋肉が悲鳴をあげてる気がするよ……。わりと自信あったんだけどなぁ」

 

「同感……だね。追い込みウマ娘のパワフルさを甘く見てたの。あたしも競り合いに備えて筋肉つけないと危ないかも」

 

 

 案外、心配する必要はなかったかもしれない。それが死屍累々と化したレース場を眺めた貴方の素直な感想です。本格化の進行具合による差をスタートのタイミングを調整することで埋めてみたものの、加速が完成した追い込みウマ娘の末脚の前では効果は薄かったようです。

 ハングリー精神が強いタマモクロスと、よくわからないけど強いゴールドシップであれば、トレーナー不在のハンデがあって尚シンボリルドルフと渡り合える可能性を見ることができたのは悪くない結果でしょう。

 

 

「いやぁ、やっぱり負けちまったか。でもまぁ、同じ追い込みってこともあってイロイロ勉強になったよ。誘ってくれたこと、感謝するよトレーナー。……しかし、これだけの走りができるってのに、会長に挑むのはキビシイってんだから恐れ入るねぇ。やっぱりアンタも会長の走りには注目してるのかい?」

 

 ヒシアマゾンの問い掛けに貴方は言葉を詰まらせてしまいます。頭の中ではメイクデビューで圧倒的な強さでレースを走るシンボリルドルフの姿が再生されているのですが──。

 

「……? トレーナー、どうしたんだい? そんなに考え込むほど難しいことを聞いたつもりはないんだけど」

 

 真剣な表情で思案する貴方の姿に、ヒシアマゾンだけではなく周囲のウマ娘たちも何事かと注目し始めました。

 正直に答えるべきか貴方は一瞬だけ迷いましたが、多数のウマ娘に見られているこの状況はヘイトを稼ぐ絶好の機会です。しかも対象は皆が敬愛する生徒会長。ここで怖じ気付いてしまうようでは、悪党として三流と後ろ指を指されることになるでしょう。

 

 

 貴方はウマ娘たちにしっかり聞こえるようにハッキリと答えました。強いことは認めるが、いまのシンボリルドルフの走りに興味は無い。少なくとも自分はまだ、彼女の走りになんの魅力も感じない……と。




7月だし鮎解禁……生息域的に微妙だけどザリガニのがわかりやすいし、それくらいならウマ娘だってきっと捕まえられるし、主人公飼育したことあるって設定だし大丈夫だべ←やどかり。

作者のミスを感想で優しくフォロー(ゴルシならやるor賢さGなら仕方ない)して下さいました読者の皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。


でもそれはそれとして。

もうネタは作っちゃったので勢い任せにヤドカリで押し切ります(頭バクシン)

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