貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。   作:はめるん用

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菊花賞の最終コーナーで担当ウマ娘が一気に加速するのを見てるとテンション上がるタイプのトレーナーです。

男性実況の「余裕の走りだぁッ!」すき。


いよいよ。

 もしもこの事実を知れば中央トレセン学園が大騒ぎになるかもしれませんが、実は貴方はミスターシービーの担当トレーナーではありません。

 

 それが何を意味するかというと、彼女のクラシックロード最後の一冠である菊花賞を観戦するにあたり学園からの補助が全く出ないということです。

 もちろん貴方がその扱いに不満など抱くワケがありません。もとより趣味や食事など好きなことこそ身銭を切って楽しむのが最高であるという信条を胸に生きている貴方は、学生時代ですらレース観戦にはアルバイトで稼いだお金を使っていたぐらい徹底していました。

 

 もっとも、ミスターシービーの菊花賞に関して貴方は初めから現地に足を運ぶつもりはありません。

 

 日程に余裕の無い長距離移動となることを危険と判断したこともそうですが、三人目の三冠ウマ娘が誕生するかどうかという重大なレースを邪魔するのはさすがに無粋であると自重することにしたようです。

 アプリやアニメにでてくるような、ウマ娘が挑戦者としてなんの憂いもなく望む方向に望むまま走れるように支える、もはや担当などという名目すらも必要としない大信不約のトレーナーであれば声援もウマ娘の力となるかもしれません。ですが貴方は自分が疎まれているという部分にだけは何故か神仏や悪鬼羅刹の類いですら匙を遠投して干渉しようとしないレベルで自信を持っていますし、ほかに応援に行くウマ娘が何人もいるのだからそれで充分だろうと考えています。

 

 

 とはいえ、取引は取引ですのでギリギリまでミスターシービーのトレーニングにはアドバイスをしなければならないでしょう。

 利益を追求するために約束事を反故にするのも正しい悪党の姿です。しかし、貴方が目指すのはそのような目先の利益に踊らされる小悪党ではありません。一流の悪党を名乗るためには、あえて不利になることを承知で取引を完遂するぐらいの器とカリスマ性を持つ必要があるのです。

 

 外道でありながらも己の抱いた『悪の美学』に殉じることを潔しとする守銭奴クソトレーナー。そんなトレーナーを仲間たちと支え合い励まし合いながら踏み越えて成長していくウマ娘たち。

 奇を衒うことのない王道の展開だが、あまり追放計画を複雑化してしまうと万が一のトラブルが起きたときに修正が面倒になってしまう。それならばどんなことがあろうとも一定の成果を狙うことができ、状況次第で臨機応変にプランを組み直せる正攻法を中心に据えるのが確実だろう。貴方の理想へ挑む類稀なる行動力の前では、さすがの三女神も両手をサムズアップして降参するしかありません。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 重要な勝負の前だからこそもう一度基礎をしっかりと学び直すべき。そんな貴方の方針に特に異を唱えることなく従っていたミスターシービーの走りは、薄皮を1枚1枚丁寧に重ねるように研鑽を続けた甲斐もあり概ね完成に近いと言える状態まで仕上がっています。

 

 ただし、そこにミスターシービーの菊花賞勝利を保証するものは一切存在しないというのが貴方の見解です。無事スカウトされて貴方の管理下から逃げ出すことができたウマ娘たちの中には、ステイヤーとして高い能力を秘めていた者たちもいますので当然でしょう。

 開催されているレースの関係上、彼女たちの本気の走りを知るものは貴方と担当トレーナーたちぐらいしか存在しません。世間では十中八九ミスターシービーが勝つだろうとの予想ですが、相当厳しい戦いになると貴方は予感しています。

 

 さて、ウマ娘たちから「いつもああして真面目な顔してればまともなトレーナーに見えるのに」と評判の真剣な表情で考え事をしている貴方のルームへ、いま日本中で最も話題なウマ娘・ミスターシービーがやってきました。

 大事なレースの前に、下衆トレーナーの拠点というわざわざ運気が下がりそうな場所にこうして立ち入るあたり、いつものように気紛れさを発揮できる程度には落ち着いているのでしょう。そう思い安心して他愛もない会話に応じていた貴方ですが、とあるミスターシービーの発言により思考が一時停止してしまいます。

 

 

 ──ねぇトレーナー。キミは私に三冠を取るほうがミスターシービーらしいと言っていたけれど、もしも三冠を取れなかったら……それでも、キミにとって私はミスターシービーなのかな? 

 

 

 これにはさすがの貴方も即座に反応することができませんでした。何故ならこのとき、貴方の頭の中では……。

 

 

 ──俺、そんなこと言ったっけ? 

 

 

 ゲームに夢中になりすぎて、母親からの呼び掛けに生返事をしてしまい後で叱られてしまう。ゲームを愛する者であれば大多数が一度は経験しているであろう失敗ですが、どうやらチート転生者である貴方も例外ではないようですね!




ちなみに私はゲームに夢中になってたら、PS4の電源を子猫にリセットされました。
どうやら冷却ファンの音がお気に召したようでして……。
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