貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。   作:はめるん用

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いろいろ。

 冷静で賢い判断力にある種の定評を持つ貴方は高速かつ慎重に思考を回転させています。

 

 普通のウマ娘と担当トレーナーという間柄であれば、菊花賞を前にして少しだけ不安になり相談に来たというシチュエーションに該当するかもしれません。しかし、貴方はミスターシービーとの関係があくまでも取引によるものだと理解しているのでこれは除外してよいでしょう。

 次に考えられるのは三冠ウマ娘の称号というプレッシャーに対する緊張が考えられるでしょう。ですが、ほかのウマ娘ならばともかくミスターシービーはそのような名誉には興味が無いはずです。そうでなければ、普通に実力のある育成評価の高いトレーナーのスカウトを受ければそれで済んでいた話ですのでこれも自動的に除外されます。

 

 

 このようにして冷静かつ的確な判断のもと貴方が導き出した答えは『特に深い意味のない、ただの会話の延長』に決定されました。

 

 

 こうしてミスターシービーの真意を見抜くことに成功した貴方ですが、これほどのチャンスをみすみす見逃すワケにはいきません。

 さすがの自由ウマ娘でさえこうして話題に取り上げる程度にはクラシック三冠ウマ娘という称号には重みがあるのですから、悪役トレーナーとしてはそれを利用して評判を下げる努力を惜しむなどあり得ないでしょう。

 

 驚天動地の事実ですが、なんと貴方は自分が守銭奴トレーナーとして学園に赴任していることを忘れてはいないのです。そこで思い付いたのは、金銭にしか興味がないトレーナーなのだから、クラシック三冠ウマ娘という称号を軽んじた発言をするのが正解だろうという発想です。

 

 ウマ娘にとって走るということは、存在意義やプライドなど精神的な充実感や達成感にも大きく関わることであると貴方は確信しています。故に、それらの最高峰たる三冠の座を軽視するスタンスには、さすがのミスターシービーでも精肉工場に送られるブタさんを見るような視線を送ってくることを期待できるでしょう。

 食欲旺盛なウマ娘であれば「命の恵みをありがとう……ッ! 美味しいお肉をありがとう……ッ!!」と感謝しながら見送る可能性も高いですが、そこは気にしてはいけません。

 

 

 あとはどのような表現を用いて三冠を揶揄するかが重要ですが、その部分については心配無用です。貴方の知性と理性に溢れつつ独創性に塗り潰された語彙力をもってすれば、ベニヤ板3枚ぶんほどしかなかった追放フラグ防衛戦力もシフォンケーキ7ピース相当へと大型アップグレードが約束されたも同然でしょう。

 

 

 効率よくミスターシービーの神経を逆撫でするために薄笑いを浮かべながら貴方は「お悩みのところ悪いが、俺にとって三冠の称号なんてものはとんかつ定食に付いてくる小鉢の冷奴と変わらない」と告げました。

 これにはミスターシービーも怒り心頭で反応するしかあるまい。そんな貴方の予想に反して、目の前にある表情は「コイツまたなんか言い始めたな……そういやこういうヤツだったわ……」といった雰囲気に見えなくもありません。

 

 予想外の反応に一瞬だけ戸惑う貴方ですが、すぐに自分がとんでもないミスを犯していることに気が付きました。

 そう……学園のカフェテリアで提供しているとんかつ定食には、お漬け物は添えられていても冷奴は別口で注文しなければならないのです。なにより、ミスターシービーがとんかつ定食と冷奴の組み合わせを好ましく思っていない可能性や、そもそもとんかつ定食に魅力を感じていない可能性を完全に失念していたのです。

 

 

 どれだけ美辞麗句を並べたところで心が伝わらなければ意味がないように、どれほど例え話に悪意を込めたところでそれが伝わらなければただの雑談で終わってしまいます。

 いまこそ臨機応変なプランニングの見せ所。真向勝負に切り替えた貴方は「自分が興味があるのはミスターシービーがあるがままに走る姿だけ。三冠ウマ娘の栄誉など、走った結果としてついてくるただのオマケでしかない」と、必要最低限の情報だけを与えました。

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