貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。   作:はめるん用

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ほろほろ。

「ぷ……くく……はは、あははははッ!! いやぁ~、相変わらず……本当に、出会ったころからキミは全然変わらないね。そっかそっか、三冠ウマ娘そのものには別に興味がないんだね。……オマケの冷奴扱いって……いや、ホント、キミってトレーナーは……く、ふふ……ッ!」

 

 

 何故かはわかりませんがミスターシービーを怒らせることには失敗したものの、大笑いする彼女からは「コイツやっぱりアホだ」といった感情が溢れていることを貴方はしっかりと察知しています。

 つまり結果的にトレーナーとしての評価は下がっているので、過程や方法が想定していたものと違っていても目的は果たされているのでなにも問題はありません。

 

 

 しばらく笑い続けたミスターシービーですが、普段通りの飄々とした微笑み程度まで感情が落ちつくと走り方について貴方に質問をしてきました。

 

 充分に鍛えられたスタミナをもってすれば菊花賞の距離を走りきることは余裕であり、脚質的にスピードや加速力も憂いなく発揮できることは本人もわかっています。

 しかし、適性や能力がどうであろうと初めての長距離レースであることには変わりません。一生に一度のレースということもあり、できることは全てやり尽くして挑みたいというのがミスターシービーの考えのようです。

 

 どんなレースだろうと一生に一度しかないだろうに。そんな無粋な返答を自重しつつ、貴方はどうしたものかと頭を悩ませています。

 アプリであればレースの前にスキルポイントを使ってポチポチと強化もできますが、この世界にそんな便利なシステムなど存在しません。本番の前に唐突に風変わりなトレーニングをしても逆効果でしょう。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「あの~、そのですね? 二冠ウマ娘であるシービーさんの併走トレーニング相手としてご指名いただけたのは光栄なのですが……何故に私なのでしょうッ!? どう考えてもおかしいですよねッ!? 私まだメイクデビューすらしてないんですよッ!?」

 

「あぅぅ……。どうしよう……ライスと併走したせいで、本番の菊花賞でシービーさんにもしものことがあったら……。でも、でも……レースに勝つために協力して欲しいって頼まれたんだし……ライスが断ったせいでシービーさんにもしものことがあったら……」

 

 

 これぞ逆転の発想。妙案がなにも思い付かないのであれば、正攻法の範疇であらゆる手段を試してしまえばいい。

 

 いまこそ転生者のお約束である知識チートを活用するべきタイミングであると、貴方は未来の菊花賞ウマ娘候補であるマチカネフクキタルとライスシャワーに声をかけました。

 ステイヤーとしての素質であればメジロマックイーンなども併走相手としては最適ですが、本格化の進行具合では同じコースの中を走るだけでも危険です。そもそもメジロ家ではすでに貴方の悪評が取り返しのつかないレベルで広がっているはずなので、どう頑張っても色好い返答は得られないでしょう。

 

 

 さて、併走相手は用意できましたが、ただ一緒に走るだけでは学びも実りも得られません。ここで貴方はミスターシービーにひとつ課題を出しました。

 自分の見立てでは、このふたりはデビューすれば菊花賞を勝てるだけの可能性を秘めている。これから始める併走トレーニングの中で、マチカネフクキタルとライスシャワーの走りからステイヤーとしての素質を見付けてみろ……と。

 

 そう、貴方はミスターシービーのレース中の観察力を鍛えることにしたのです。いくら加速力に優れたウマ娘でも、抜け出すための位置取りに失敗すれば勝ち目はありません。

 

 残念ながら、皐月賞と日本ダービーでミスターシービーの手札はほぼ暴かれている状態です。対して、菊花賞に出走しているライバルたちの手札は半分も使われていません。中距離の重賞レースでもなかなかの結果を出してはいますが、彼女たちの本来の適正距離はあくまで長距離。ようやく本気で走れると気合いも充分でしょう。

 そこに担当トレーナーたちの戦術という貴方も知らない手札が加わり、夏合宿から菊花賞までの間にそれらを使いこなすための戦法も編み出しているはずです。

 

 レース中にライバルの走りを“視る”能力を少しでも高めることができれば、こうした事前準備の不利も覆すことができるかもしれません。

 何処かの誰かが余計なことをしなければもっと楽に勝てた可能性もありますが、過ぎ去りし過去を偲んでいるだけでは前に進めないので未来だけを見つめて走ることにしましょう!

 

 

 

 

 それはそれとして。

 

 さすがに3人だけでは菊花賞の練習としては少々物足りないと貴方は考えてしまい。

 

 

 

 

「どうしたのトレーナー? ……え、ボク? えぇ~ボクぅ~? しょうがないなぁ~トレーナーはぁ~♪ シービーのためだし、トレーナーのオ・ネ・ガ・イ! だからね。しょうがないからこのテイオー様が協力してあげようじゃないか! ニシシ♪」

 

 冷静に周囲を見回せば菊花賞に所縁あるウマ娘は大勢います。

 興味深そうにこちらを見ているし交渉に苦労はしないだろう。貴方はトウカイテイオーを筆頭に、併走トレーニングに参加しても支障の無さそうなウマ娘たちにも声をかけ始めました。




長距離のシナリオトロフィー獲得が難しくてなけるぜ。

ちなみに確認したらゴルシで勝ってました。よくまぁ中距離に引っ張られなかったもんだ。

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