貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。   作:はめるん用

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これからルドルフを育てるトレーナーさんは、ちゃんとマイル因子を持ったウマ娘を育てておこうね!(n敗)



とうき。

 季節はすっかり冬になりましたが、風の魔装機神の如く『追放』という目標に向かって迷うことなく縦横無尽に飛び回る貴方の心は冬枯れとは無縁です。

 今日も寒さに負けることなく悪役トレーナーとして活発に行動する貴方は、中央トレセン学園の練習施設・第9レース場でウマ娘たちと一緒にお味噌汁をすすっています。

 

 街行く人々の服装がすっかり暖かいものに切り替わったある日のこと。寒い中練習に励むウマ娘たちにあからさまに見せびらかすようにお味噌汁を食べることにより、肉体・精神・胃袋の3点を同時に挑発するという恐るべき作戦を貴方は唐突に思い付きました。

 即断即決即実行。己が人生を楽しむということに関して一切の妥協を許さない貴方は、朝の日課である自己鍛練と水槽生物たちの世話とルームの掃除と近辺の廊下やトイレの破損等の安全確認と冷蔵庫やおやつ棚の賞味期限のチェックと第9レース場の簡単な見回りと学園内に不審物や不審人物が入り込んでいないかの気配察知と一部のウマ娘たちが学園に隠れてこっそり世話をしている野良犬の健康管理と今日もトレセン学園に通うウマ娘たちが尊い日常を無事過ごせるようにと祈りを捧げると、さっそく食材を揃えて調理に取りかかりました。

 

 

「サムズベジタブル、アンドポーク。ソイビーンズテイスト! まさに食材のマスカレイド、見事な調和! ふふ、さすがは三冠ウマ娘のトレーナーということね……!」

 

「ズズッ……へぇ、こっちは白みそにアスパラとレタスか。こういう発想も、実際に作っちまうのも、いかにもトレ公らしいというかなんというか。それでちゃんと美味しいんだから大したもんさね」

 

「ふぅン。豆腐とナメコ、それにこれは……色合いからして『赤みそ』というヤツかな? 私ですら白いご飯が欲しくなるこの味わい……いやはや、実に興味深いじゃないか」

 

 

 目の前に広がる光景は貴方が思い描いていたモノとは多少ズレがありますが、少なくともお味噌汁を食べながらウマ娘たちのトレーニングを眺めるという目的は果たせています。

 つまり大成功が成功に変わった程度なので特に問題はないでしょう。強いて疑問点を上げるのであれば、夜間練習に参加しているウマ娘たちをスカウトしたトレーナー陣も当たり前のように第9レース場にやって来てお味噌汁を担当ウマ娘と食べていることぐらいなものです。

 

 とはいえ、この状況はホープフルステークスを控えているタマモクロスとゴールドシップにとっては好都合というもの。未来の皇帝シンボリルドルフに挑まんとするウマ娘たち同士でバチバチと火花を散らしながらの特訓は必ず彼女たちの糧となることでしょう。

 

 

 実際問題、チート能力を使って観察するまでもなくシンボリルドルフの強さは貴方も理解しています。アプリのようにマイルのレースに寄り道することなく、王道距離の中距離レースを走る姿は『先行』も『差し』も見事なものでした。

 タマモクロスとゴールドシップの勝ち目は贔屓目込みで見たとしても3割に届かない程度というのが貴方の判断です。トレーナーとしての能力の信頼性についてはロボット作品の終盤で主人公が大破した新型の代わりに一番初めに搭乗していた機体を改修したものに乗り込んで最終決戦に挑むときぐらいにはありますので、残念ながらこの判断が覆る可能性はかなり低いでしょう。

 

 ついでに言うならば、ミスターシービーがジャパンカップや有マ記念に出走しないと表明したことで、次のスターウマ娘候補であるシンボリルドルフが大々的に持ち上げられている状況も逆風になるかもしれません。

 

 本人はコンディション調整のミスでしばらく走れそうにないとインタビューで答えていましたが、三冠ウマ娘を達成したあと皐月賞と日本ダービーと菊花賞に参加したウマ娘全員で貴方を追いかけ回しているときに先陣を切って走っています。

 つまり本当の理由はいつもの気紛れか、あるいはほかになにか事情があるのか。どちらにせよ、本人の気分が乗らないのですから貴方も当然出走を促すようなことはしないでしょう。

 

 

 ともかく。身体能力的に1歩劣っている上に、環境的にもアウェーとなる状況へタマモクロスとゴールドシップを送り出さなければならないのが現状です。

 貴方が目標とする悪役トレーナーが三流のチンピラであれば適当に諦めても許されるのでしょう。しかし、貴方が目指すのは一流の悪のカリスマ系トレーナー。ならば取引相手であるふたりが万全の状態で勝負できるよう環境を整える程度のことはしてみせなければ、これまで貴方が散々に罵り扱き下ろしてきたウマ娘たちの立場が無いというもの。

 

 幸いにして、ふたりとも勝ち目が薄いぐらいで揺らぐようなメンタルはしていません。タマモクロスはハングリー精神に優れていますし、ゴールドシップもレースに関してはいつでも本気です。

 芦毛のウマ娘は走らないという謎の迷信を叩き壊すついでに、彼女たちがホープフルステークスを全力で楽しめるように。とん汁にたっぷり入れた七味が喉に張り付いてむせているエルコンドルパサーの背中をさすりながら、貴方は限られた時間で走りの精度を高めるためのプランを考えるのでした。




ウマ娘とは別に思い付いたネタを整理するので、しばらく投稿はのんびりしたものになると思います。

後々にまとめて読んでいる読者の方にはなんの関係もない話ですが。

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