貴方は中央トレセン学園から追放されることを希望しています。   作:はめるん用

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ふくつ!

 ウマ娘が脚を壊す理由はいくつかありますが、トウカイテイオーの場合は少しだけ特殊であることを貴方は既に見抜いています。

 

 トウカイテイオーの脚は彼女の才能に耐えられるだけの耐久力が備わっていないのです。加えて、貴方がアドバイスを贈ったミスターシービーと意固地になって競り合いを繰り返したことがダメージを加速させることになりました。

 厄介なのは、貴方はあくまでチート能力を使っての未来視に近い形でトウカイテイオーの故障を知ったことです。これでは説明しようにも根拠を示すことができません。

 これがGⅠウマ娘を何人も育てた一流のベテラントレーナーなら別であったかもしれませんが、信頼も実績も持ち合わせていない新人トレーナーの戯言など普通は聞き入れないでしょう。

 

 とりあえずマヤノトップガンに対し、貴方はトウカイテイオーは才能がありすぎてヤバいという部分だけを伝えます。チート能力については匂わせただけでも正解を引き当てそうなので決して漏洩するワケにはいきません。

 この世界がアニメか、アプリか、あるいは史実のいずれかの影響を受けているのであれば遅くとも日本ダービーのあとに。例えばミスターシービーとの勝負で悪化したように、GⅠクラスのレースでライバルと全力で走るたびに彼女の脚は大きく消耗されるであろうことを伝えます。

 

 

 それを聞いたマヤノトップガンは恐る恐るといった様子で貴方に問い掛けます。ならば、トウカイテイオーが三冠ウマ娘の夢を諦めたら怪我をしないで済むのかと。

 

 

 なるほど! その手があったか!

 

 なんという単純で効果的な解決方法でしょうか。貴方はまさに目から鱗が落ちる思い、これが本物の天才かと感嘆していました。

 消耗が原因で怪我をするのであれば、消耗させなければいい。例えば皐月賞を回避して日本ダービーだけに目標を絞れば、これから鍛えられる分も含めてトウカイテイオーの脚は充分に走り抜けることが可能かもしれません。

 

 ですが残念! 貴方にはその解決方法に賛同できない理由がありました。

 

 レースプランニングはトレーナーとウマ娘の大事な共同作業ですから、それに自分が口出しするようなマネは歓迎できません。未来のトレーナーの仕事の楽しみを、やりがいを奪うなんてとんでもない! 

 なにより、やはりトウカイテイオーは三冠ウマ娘を目指してこそトウカイテイオーだと貴方は考えています。それに、結果的に敗ける可能性はもちろんありますが、なんだかんだ皐月賞と日本ダービーは勝つだろうとも思っています。だってトウカイテイオーだから。

 

 

 なのでマヤノトップガンの質問に対する貴方の答えはひとつしかありませんでした。「三冠を諦めさせるのはムリ」と。挑むことすらせずに諦めれば彼女はトウカイテイオーではなくなってしまう。それだけは、そんな未来だけはトレーナーとして認めるワケにはいかないことをマヤノトップガンに伝えます。

 

 

「でも……。……。……? ──ッ! うん、そうだね! せっかくのステキな夢なんだから諦めたらもったいないもんね! そっかそっか~、トレーナーちゃんはテイオーちゃんのことは心配してるけど、それでもテイオーちゃんならキラキラできるって信じてるんだね☆ ならきっとテイオーちゃんの脚のことは大丈夫だよトレーナーちゃん。トレーナーちゃんのキモチはテイオーちゃんにバッチリ伝わったから♪」

 

 

 反応速度において体温計と善きライバル関係にある貴方と違い、高速レスポンスを誇るマヤノトップガンにしては些か反応が鈍かったものの、彼女は実に晴れやかな表情で立ち去っていきました。

 

 やはりチート。チート能力は全てに勝る。純粋な天才を凌駕し丸め込むことに成功したという事実に満足し、貴方はすっかり問題が解決した気分で上機嫌でした。

 間違いありません。貴方は机を整理し教科書を並べただけでテスト勉強を終えた気分になり安眠できるタイプの幸せな人間なのでしょう。


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