FAIRY TAIL~お姉ちゃん、頑張っちゃうんだから!~   作:めぐみどん

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はじめまして。

めぐみどんと申します。

FAIRY TAILが大好きです。

筆者の処女作となりますので、駄文になってしまうかと思われます。

のんびりと執筆していきたいと思っておりますので、気長にお待ちいただければ幸いです。


1.少年と猫と少女、あとお姉ちゃん。

 

 

「────ウルティアよ、会議中に遊ぶのは止めなさい」

 

円卓を囲み、話し合う老若男女。

 

ここは評議会。

 

魔法界の秩序を守るために存在する、最高議会だ。

 

にも関わらず、もう飽きたと言わんばかりの様子で水晶を転がし始める若い女性。

 

それを咎める老齢の男性。

 

傍から見れば、正常に機能しているかは疑問が残ると言えなくもない。

 

「だってヒマなんですもの...ね?ジークレイン様」

 

女性から話しかけられたジークレインという青年もまた、おおよそ会議中とは思えない発言をする。

 

「おーーーヒマだねえ、誰か問題でも起こしてくんねーかな」

 

瞬間、議会が紛糾する。

 

「つ...慎みたまえっ!!!」

 

「何でこんな若造共が評議員になれたんじゃ!!!」

 

だが当の本人たちは全く意に返さず、

 

「魔力が高ェからさじじい」

 

悪びれることもなく言い放つ。

 

議会が完全に中断されたことにため息を吐きつつも、議長と思しき人物が場を仕切りなおす。

 

「これ...双方黙らぬか」

 

静まり返る議会。

 

「魔法界は常に問題が山積みなのじゃ。中でも早めに手を打ちたい問題は...」

 

「────妖精の尻尾(フェアリーテイル)のバカ共じゃ」

 

 

──────────

 

────────

 

──────

 

────

 

──

 

 

 

ここは港街ハルジオン。

 

人口1700万人が暮らす永世中立国であるフィオーレ王国の南東に位置する街である。

 

魔法よりも漁業が盛んなこの街の駅で、桜色の髪をした一人の少年が行き倒れていた。

 

「あ...あの、お客様...大丈夫ですか...?」

 

「あい、いつものことなので」

 

グロッキー状態の少年に代わり、傍らに居た青い猫が応える。

 

傍から見れば奇妙な光景に見えるかもしれない状況の中、僅かながらに調子を取り戻しつつある少年がボヤく。

 

「無理!!!もう二度と列車には乗らん...ウプッ」

 

そんな少年を尻目に青い猫が、この街に来た目的を改めて少年に告げる。

 

「情報が確かならこの街に火竜(サラマンダー)がいるハズだよ、いこ」

 

「も...もうちょっと休憩させて...ウップ」

 

「あい」

 

少年は未だ復調には至らず、青い猫もまたそんな少年に対していつものことながらといった様子で応えるのであった。

 

──────

 

────

 

──

 

時を同じくして、ハルジオン唯一の魔法屋に一人の少女が訪れていた。

 

「えーっ!?この街って魔法屋一軒しかないの?」

 

不満な様子で店主に詰め寄る金髪の少女に店主もやや困惑の表情を浮かべる。

 

「ええ...元々魔法より漁業が盛んな街だからね。

 

 街の者も魔法を使えるのは1割もいませんで、この店もほぼ旅の魔導士専門ですわ。」

 

「あーあ...無駄足だったかしらねぇ」

 

「まぁまぁそう言わずに見てってくださいな、新商品だってちゃんとそろってますよ!」

 

あからさまに興味を失くしつつある少女に対して、店主はすかさずセールストークを開始する。

 

「女の子に人気なのは【色替(カラーズ)】の魔法かな!その日の気分に合わせて服の色をチェンジ~ってね!」

 

「持ってるし...ナニコレ」

 

取り付く島もないとはこのことである。

 

「あたしは【(ゲート)の鍵】の強力なやつ探してるの」

 

「【(ゲート)】かぁ、珍しいねぇ」

 

「あっ♡白い子犬(ホワイトドギー)!」

 

店主のセールストークを半分聞き流し、ふと視線を向けた先にお目当てのものがあったらしく喜ぶ少女。

 

「そんなの全然強力じゃないよ」

 

「いーのいーの♡探してたんだぁー!」

 

先ほどとは打って変わってゴキゲンな様子で店主に駆け寄る。

 

「いくら?」

 

「2万J(ジュエル)

 

値段を聞いた少女の笑顔が固まる。

 

「お・い・く・ら・か・し・ら?」

 

「だから2万J(ジュエル)

 

固まった笑顔のまま同じ問答をすることで、値段に納得がいっていないことを言外に込める少女。

 

しかし店主も折れない。

 

そして少女は古典的最終手段に出る。

 

「本当はおいくらかしら?ステキなオジサマ♡」

 

お色気攻撃だ。

 

数分後、

 

「ちぇっ...1000J(ジュエル)しかまけてくれなかったー。

 

あたしの色気は1000J(ジュエル)かーーーーー!!!(怒)」

 

少女の慟哭が市井に響く。

 

現実は無常である。

 

未だ怒りが収まらない様子の少女であったが、街を散策しているとどうにも行く先の道、市街の中心部が騒がしいことに気付く。

 

「...?なにかしら」

 

喧騒の中心に向かっているであろう一団が目の前を通り過ぎた時に聞こえた会話。

 

「この街に有名な魔導士様が来てるんですって!!」

 

火竜(サラマンダー)様よーーー♡」

 

それはフィオーレ王国において最も自由であり、最強の名を恣にする魔導士ギルド【妖精の尻尾(フェアリーテイル)】。

 

そんなギルドの魔導士がこの街に来ているとのことだった。

 

「あ...あの店じゃ買えないっていう火の魔法を操るっていう...この街にいるの!?」

 

少女の顔が驚きと興奮の様相を帯びる。そして

 

「へぇーーーすごい人気ねぇ。────かっこいいのかしら」

 

今どきの少女らしい疑問を浮かべながら、一目見ようとその集団に加わろうとしていた。

 

 

──────────

 

────────

 

──────

 

────

 

──

 

 

一方、復調を果たした桜色の髪の少年と青い猫はトボトボと街を歩いていた。

 

「回復するのに大分時間をくっちまった」

 

「乗り物弱いもんね」

 

「ハラは減ったし」

 

「うちらお金無いもんね」

 

会話の内容はどこか元気がない。

 

「なぁー、火竜(サラマンダー)ってのはイグニールのことだよなぁ」

 

「うん、火竜(サラマンダー)なんてイグニールしか思い当たらないよね」

 

「だよな!やっと見つけた!ちょっと元気出てきた!!」

 

会話の中で自らの目的であるその人物の確証を得られたためか、本来の元気さを取り戻していく少年であった。

 

そして、偶然にも街の中心部に辿り着き、件の人物を囲む集団を見つけた。

 

「ホラっ!噂をすればなんたらって!!」

 

「あい!!」

 

 

──────

 

────

 

──

 

 

「(な...な...なに?このドキドキは!?)」

 

「ははっ、まいったなぁ。これじゃあ歩けないよ」

 

女性陣に囲まれ、黄色い声援を浴びる一人の男性。

 

決して好みのルックスではないその男性に対して、金髪の少女はなんとも形容し難い気持ちを抱く。

 

「(ちょ...ちょっと...!あたしってばどうしちゃったのよ...!)」

 

「...(チラッ)」

 

男性と目線が合う。

 

「(はうぅ!)」

 

鼓動が高鳴る少女。

 

「(有名な魔導士だから?だからこんなにドキドキするの!?)

 

少女は最早冷静ではいられなかった。

 

他の女性陣よろしく男性に声援を送ろうとしたその瞬間。

 

「イグニール!!イグニール!!!」

 

少年が割って入った。

 

「!」

 

その声を聞いた少女は、付き物が落ちたかのようにクリアな思考が戻ってきたことを感じた。

 

「イグニール!!!!」

 

火竜(サラマンダー)と少年の邂逅。

 

そして少年が一言。

 

「誰だオマエ」

 

「!!!?」

 

予想外の台詞にやや驚きの表情を浮かべながら男性は応える。

 

火竜(サラマンダー)と言えば、わかるかね?...って早っ!!」

 

しかし返答を聞くこともなく、少年は肩を落とした様子で帰路についていた。

 

これに対して穏やかではないのは取り巻きの女性陣であった。

 

「ちょっとアンタ失礼じゃない!?」

 

「そうよ!火竜(サラマンダー)様はすっごい魔導士なのよ!」

 

「あやまりなさいよ!」

 

少年は訳も分からないまま、女性陣から責められるのであった。

 

「ナンダオマエラ」

 

「まあまあその辺にしておきたまえ、彼とて悪気があったわけじゃないんだからね」

 

「「「あ~んやさし~~~♡」」」

 

少年を置いてけぼりにして勝手に話が進む中、少女は一歩離れたところから集団を睨む。

 

「......」

 

そして男性はどこからともなく色紙とサインペンを取り出すと、頼まれてもいないのに少年に一筆したためる。

 

「僕のサインだ、友達に自慢するといい」

 

「「「きゃ~~♡いいなぁ~~~♡」」」

 

「いらん」

 

少年の一刀両断である。

 

「なんなのよアンタ!!!」

 

「どっか行きなさい!!!」

 

ついに少年が女性陣からはじき出された。

 

「人違いだったね」

 

青い猫が少年を労う。

 

そんな少年と青い猫に興味を失くしたのか、男性はパチンと指を鳴らすと足元から炎を出し始める。

 

「君たちの熱い歓迎には感謝するけど、そろそろ失礼するよ...」

 

炎は男性の足場となり、うねりと共に見る見るうちに上昇していく。

 

そして去り際に男性が一言、

 

「夜は船上でパーティをやるよ、皆参加してくれるよね」

 

「「「もちろんですぅ~~~♡」」」

 

「なんだったんだアイツ...」

 

少年がぼやくと遠巻きに見ていた少女が話しかける。

 

「本当いけすかないわよね、さっきはありがとね」

 

 

──────

 

────

 

──

 

 

グバババグボボボズビビゴキュゴキュゴキュ────

 

食事処に場所を移した少年と猫と少女。

 

「あ...あはは...、もっとゆっくり食べなって...ナンカトンデキテルカラ...」

 

「あんふぁいいひほがふぁ!!!!」

 

「うんうん」

 

凄まじい勢いで料理を平らげていく少年にやや引き気味の少女であった。

 

そしてひと心地着いた少女は先ほどの男性について話し始める。

 

「あの火竜(サラマンダー)って男、【魅了(チャーム)】っていう魔法を使ってたの。

 

 それでこの魔法は人々の心を術者に引きつける魔法なの。何年か前に販売が禁止されてるん

 

 だけど、あんな魔法で女の子の気を引こうだなんてやらしい奴よね。

 

 あたしはアンタたちが飛び込んできたおかげで魔法が解けたってわけ」

 

「なぶほごぉ」

 

「こー見えて一応魔導士なんだーあたし。まだギルドには入ってないんだけどね」

 

「ほぼぉ」

 

「あ、ギルドっていうのは魔導士たちの集まる組合のことで、仕事や情報を魔導士に仲介して

 

 くれるところなの。

 

 それでギルドで働かない魔導士は一人前とは言えないものなのよ」

 

「ふ...ふg」

 

少女のトークは止まるところを知らない。

 

「でもねでもね!!ギルドっていうのは世界中にあって、人気のあるギルドには入るのも

 

 それなりにキビしいらしいの!!

 

 あたしの入りたいトコはね、もうすっごい魔導士がたくさん集まる所で...ああ!

 

 もうどーしよ!!」

 

「いあ゛...」

 

「あーゴメンねぇ!魔導士の世界の話なんてわかんないよねー!」

 

そこで一度話を区切ると、一転して真面目な表情になる少女。

 

「でも絶対そこのギルドに入るんだぁ。あそこなら大きい仕事たくさんもらえそうだもん」

 

「ほぉか...」

 

「よくしゃべるね...」

 

「あ、あたしばっかりしゃべっちゃってゴメンね!あんたたちは誰か探してたみたいだけど...」

 

今度は少年と猫の目的について話題を振る。

 

「もう会えたの?」

 

「いーや、火竜(サラマンダー)が来るって聞いたから来てみたはいいんだけど、別人だったんだよなぁ...」

 

「あい、火竜(サラマンダー)って見た目じゃなかったんだね」

 

「てっきりイグニールかと思ったのにな」

 

少年と猫の会話が、イマイチ腑に落ちない少女。

 

「見た目が火竜(サラマンダー)って...どーなのよ人間として...」

 

そんな少女に対して、さも当然のことのように言う少年。

 

「ん?人間じゃねえよ、イグニールは本物の(ドラゴン)だ」

 

「そんなの街中に居るハズないでしょーーーー!!!?!?」

 

本日二度目の絶叫である。

 

「あたしはそろそろ行くけど、ゆっくり食べなよね」

 

少年に食事代を渡し、退店しようとすると、

 

ぐもぉ...というような表情になる少年。そして、

 

「ごちそう様でしたっ!!!!!!!」

 

「でした!!!!!!」

 

突然の土下座に騒然となる店内。

 

「きゃーーーー!!!やめてえっ!!!ハズかしいから!!!!!」

 

最後まで騒がしい一行であった。

 

 

──────

 

────

 

──

 

 

公園で食休みがてら雑誌のページをめくっている少女。

 

「まーた妖精の尻尾(フェアリーテイル)が問題起こしたの?今度は...デボン盗賊一家を

 

 壊滅するも民家7軒も壊滅...ぷっ!!!」

 

少女の笑い声が公園に響く。

 

そしてページをめくる手がある記事で止まる。

 

「あ、グラビア、今週はミラジェーンなんだ」

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の看板娘、ミラジェーン。

 

その美貌から雑誌や新聞で彼女を見ない日はなく、男女問わず絶大な人気を誇っている。

 

「こんな人でもめちゃくちゃやったりするのかしら...ぷぷ!」

 

「ってかどうしたら妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入れるんだろ...強い魔法を覚えるとか...?」

 

「やっぱ面接とかあるのかなぁ...」

 

強い憧れがあるであろうそのギルド、絶対に入りたいという思いがある故に不安を口にする少女。

 

「────魔導士ギルド妖精の尻尾(フェアリーテイル)。最高にかっこいいなぁ」

 

そうして想いを馳せていると、

 

「へぇー...君、妖精の尻尾(ウチ)に入りたいんだぁ」

 

茂みから唐突にあの男性が現れる。

 

「いやぁ~~~探したよ、君のような美しい女性には、我が船上パーティへ是非とも来てほしいからね」

 

しかし、既に男性のトリックを知っている少女は警戒を露わにする。

 

「言っておくけどあたしに【魅了(チャーム)】は効かないわよ。【魅了(チャーム)】の弱点は

 

 “理解”...それを知ってる人に魔法は効かない」

 

「やっぱりね!目が合った瞬間魔導士だと思ったよ!いいんだ、パーティにさえ来てくれれば」

 

こちらの追及を意に返さず、パーティの勧誘を繰り返す男性への警戒心が強まっていく。

 

「行く訳ないでしょ!アンタみたいなえげつない男のパーティなんて」

 

「えげつない?僕が?」

 

「あんな魔法使ってまで女の子に騒がれたい訳?」

 

少女の言うことは尤もだ。

 

しかし男性はどこ吹く風といった様子で応える。

 

「あんなのは只のセレモニーさ、僕はパーティの間セレブな気分でいたいだけさ」

 

「有名な魔導士とは思えないおバカさんね」

 

お話にならない、といった様子で会話を切り上げその場を後にする少女。

 

少女の後ろ姿を見つめる男性は下卑た笑みを浮かべるも、瞬時に取り繕い再び声を掛ける。

 

「────妖精の尻尾(フェアリーテイル)火竜(サラマンダー)って...聞いた事ない?」

 

悪意が少女に迫る。

 

 

──────────

 

────────

 

──────

 

────

 

──

 

 

「ぷはぁ~~~~!食った食った!!」

 

「あい」

 

食事を終えた少年と猫が街を一望できる高台で食後の休憩をしている。

 

そこへ、二人組の女性が現れる。

 

「見て見て~~~!あの船よ...火竜(サラマンダー)様の船!」

 

「良いなぁ~...私も参加したかったぁ~」

 

昼間の男性、その取り巻きの女性だろうか、パーティに参加しそびれた様子であった。

 

それほど興味のない話題であったため少年と猫は聞き流していたが、女性の次の一言で

 

表情を一変させる。

 

「あの有名な妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士様が主催するパーティだったのに」

 

 

──────

 

────

 

──

 

 

~パーティ船内~

 

「へぇ~、ルーシィか。ステキな名前だね。」

 

男性の語り掛けに対し、ルーシィと名乗る金髪の少女は満面の笑顔で応える。

 

「どぉも♡」

 

男性はワインセラーから上物のワインを取り出すと、グラスへと注いでいく。そして────

 

「今は君と飲みたい気分なんだ」

 

そう言うと、パチンと指を鳴らす。

 

「(うわぁ~...キザったらしぃ~~~)」

 

内心ドン引きのルーシィであった。

 

「口を開けてごらん、ゆっくりと葡萄酒の宝石がはいってくるよ」

 

グラスに注がれたワインが魔力によって宙に浮く。

 

言われたとおりに口を開けて待っているルーシィであったが、

 

「!」

 

口に入る直前にそれを払いのける。

 

「────それ睡眠薬よね、どういうつもりかしら」

 

男性は悪びれる様子もなく応える。

 

「ほっほーう、よく分かったねぇ」

 

ルーシィに先ほどの笑顔はもうない。

 

「勘違いしないでよね。あたしは妖精の尻尾(フェアリーテイル)には入りたいけどアンタの

 

 女になるつもりはないのよ」

 

男性はもう取り繕うとすらしない。

 

「────しょうがない()だなぁ。素直に寝ていれば痛い目を見ずに済んだのに...」

 

その言葉を言い切る前に、どこからともなくガラの悪い男たちがルーシィを取り囲み、締め上げる。

 

「な...なんなのよコレ!!!」

 

「おー流石は火竜(サラマンダー)さんだぜ」

 

「こりゃ久々の上玉だなぁ」

 

状況が飲み込めないルーシィ。

 

「アンタたち何!?」

 

醜い笑顔を浮かべる火竜(サラマンダー)が応える。

 

「ようこそ、我が奴隷船へ...。隣国(ボスコ)へ着くまで大人しくしていてもらうよ、お嬢さん」

 

ここへきて漸く全てを理解したルーシィ。

 

────火竜(サラマンダー)は魔法を悪用して人の心を弄ぶ最低の魔導士であったこと。

 

────妖精の尻尾(フェアリーテイル)は奴隷商を生業とするギルドであったこと。

 

────憧れていたギルドは幻想に過ぎなかったこと。

 

「...最低の魔導士じゃない」

 

震える声で相手を非難し、涙を流しながら睨みつける。

 

だが男たちはそんなルーシィを嘲笑いながら暖炉から何かを取り出す。

 

「ま、バレちまったもんは仕方ねえ。まずは奴隷の烙印を押させてもらうよ。

 

 ちょっと熱いけど我慢してね」

 

男たちの嘲笑が響く。

そして赤く焼けた烙印が、今まさにルーシィに押し当てられようとした瞬間、

 

────天井を突き破り少年が降ってきた。

 

「あ...あんた、どうしてここに!?」

 

ルーシィが疑問を口にしたが、

 

「おぷっ...ダメだ...やっぱ無理...ウプッ」

 

「えーーーーー!?かっこわる!!!!」

 

少年はグロッキーとなっていた。

 

「な...何だこりゃ一体...!?」

 

「何で空からガキが降ってくるんだよ!!!」

 

状況が目まぐるしく変わる中、ルーシィは乗船しているはずの他の女性客を逃がさなければと考え、

 

そして、

 

「なあっ!?」

 

「この女ぁ!!」

 

突然降ってきた少年に気を取られていた男たちの拘束を振りほどき、船窓から海へと飛び込んだ。

 

「あたしの魔法なら皆を救える...!」

 

懐から金色の鍵を取り出し、叫ぶ。

 

「いくわよぉ...!開け!!!宝瓶宮の扉...アクエリアス!!!」

 

光り輝く魔法陣が現れ、そこから水瓶を掲げる美しい人魚が顕現する。

 

「アクエリアス!あなたの力で船を海岸まで押し戻して!!」

 

「...ちっ」

 

「今ちっって言ったかしらアンタ!?」

 

「うるさい小娘が...男に騙されてこのザマだ。次みっともない真似したら沈めるぞ」

 

「ご...ごめんなさい...」

 

人魚とルーシィのやりとりが終わると、人魚はその水瓶を大きく振りかぶり、

 

「いくぞオラァ!!!!!」

 

津波と見紛うほどの大波を生み出し、奴隷船をあっという間に海岸へと押し流した。

 

主人諸共。

 

 

──────

 

────

 

──

 

「揺れが...収まった...」

 

グロッキー状態となっていた少年が起き上がる。

 

グロッキー状態であろう少年も助けなければと船内に戻ってきたルーシィであったが、

 

「あんた...大丈b」

 

最後まで言い切ることができなかった。

 

少年が憤怒の表情を浮かべ、今にも爆発しそうであったからだ。

 

そんな少年に怯むことなく火竜(サラマンダー)は言い放つ。

 

「小僧ぉ...人の船に勝手に乗ってきちゃイカンだろぉ...あぁ?」

 

しかし少年はそれに応えず、質問で返す。

 

「お前、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士なのか?」

 

それに対し火竜(サラマンダー)はやれやれといった様子で配下の男に命じる。

 

「話の通じねえガキだ...オイ!さっさとつまみ出せ」

 

ルーシィが慌てて少年の前に飛び出そうとするが、いつの間にかそばにいた青い猫に止められる。

 

「大丈夫だよ、昼間は言いそびれたけどオイラたちも魔導士なんだ」

 

「え...」

 

命令された大柄な男たちが、少年に掴みかかろうとする。

 

圧倒的な対格差、そして数だ。

 

だが少年は一切構えることすらせず、

 

燃える腕を無造作に振るう。

 

「俺は妖精の尻尾(フェアリーテイル)のナツだ!!!おめェなんか見たことねえ!!!」

 

船外まで吹き飛ばされる男たち。

 

「...」

 

驚きのあまり声すら上げられないルーシィ。

 

そして形勢が逆転したことを悟ったのか、無事な男たちが喚きだす。

 

「なっ...あの紋章!!!」

 

「やべぇ...やべぇよ!!!」

 

「ありゃ本物だぜボラさん!!!」

 

ボラと呼ばれた火竜(サラマンダー)は焦ってぼろを出す。

 

「ば...バカ!!!その名で呼ぶな!!!」

 

ボラという名を聞きルーシィは思い出す。

 

「ボラ...紅天(プロミネンス)のボラ!!!たしか数年前に魔法で盗みを繰り返して、

 

 巨人の鼻(タイタンノーズ)ってギルドから追放された...!」

 

しかし、ナツはそんなことは関係ないとばかりに、

 

「おめェが悪人だろうが善人だろうが知った事じゃねえが、妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 

 を騙るのは許さねェ!!!」

 

追い詰められたボラは逆上し、ありったけの魔力を込めた炎をナツへ放つ。

 

「ええい!!!!ごちゃごちゃうるせえガキだっ!!!!!」

 

────直撃。

 

周囲に居る者が目を開けていられないほどの豪炎がナツを包む。

 

「フンっ!」

 

勝利を確信するボラ。

 

だがそんなボラの声をかき消すように、

 

「まずい」

 

火だるまとなったナツが炎を食べながら言い放った。

 

「何だコレぁ...お前本当に火の魔導士か?こんなまずい火は初めてだ」

 

「「「「........!!!?!?」」」」

 

猫を除いてその場にいる全員が、あり得ない状況に目を奪われる。

 

「ナツに火は効かないよ」

 

猫は差も当然であるかのように呟く。

 

そして炎を食べ終わったナツの魔力が急激に上昇していく。

 

「食ったら力が湧いてきた!!!!!」

 

その魔力の高さは先ほどボラが放った炎など比較にすらならないレベルだった。

 

「いっくぞぉおおおおおお!!!!!」

 

ナツが必殺の一撃を放とうとする。

 

最早恐怖によって構えることすらできないボラたちであったが、その中の一人が喚く。

 

「ボラさん!!!オレぁコイツ見た事あるぞ!!!!」

 

「はぁ!?」

 

「桜色の髪に鱗みてェなマフラー...間違いねェ!!!コイツが本物の...」

 

火竜(サラマンダー)...」

 

ボラたちは全員が黒焦げとなり、床に伏す。

 

抵抗はおろか逃げることすらできない状態であった。

 

そんな状況を見たナツは満足げに言った。

 

「これが妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士だ」

 

全てが終わり漸く思考が戻ってきたルーシィは呟く。

 

「火を食べたり火で殴ったり...本当にコレ魔法なの...!?」

 

「あい。竜の肺は焔を吹き、竜の鱗は焔を溶かし、竜の爪は焔を纏う。これは自らの体を竜の

 

 体質へと変換させる太古の魔法(エンシェントマジック)

 

 元々は竜迎撃用の魔法だからね」

 

「あらま...」

 

最早ルーシィは返事をするのが精いっぱいであった。

 

「────────滅竜魔法(ドラゴンスレイヤー)、イグニールがナツに教えたんだ」

 

「凄い...確かに凄いけど...

 

 ────────やりすぎよォオォーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」

 

ナツの魔法の余波で半壊した港を見たルーシィの絶叫が響く。

 

ちょうどそこに駐在の軍隊が到着する。

 

「通報のあった港はここかね!!!!!」

 

「犯人はどこだ!!!!!」

 

軍隊にボラたちを引き渡そうとしたルーシィであったが、

 

「やべっ...逃げんぞ!!!」

 

ナツに手を引かれ、その場を退散する。

 

「何であたしまでぇーーー!!!?」

 

そんなルーシィに対してナツは、

 

「だって妖精の尻尾(俺たちのギルド)に入りてんだろ?」

 

一瞬何を言っているか分からないといった様子のルーシィであったが、徐々に言葉の意味を

 

理解していく。

 

「来いよ!」

 

「うん!!!」

 

少年と猫と少女の表情は、一連の事件の当事者とは思えないほど晴れやかであった。

 

 

──────

 

────

 

──

 

 

ことの一部始終を街の高台から眺めていた一人の人物が居た。

 

「ナッちゃんってば本当に強くなっちゃって~...お姉ちゃん嬉しいわぁ~。

 

 もうすぐ皆に会えるのが楽しみねぇ~」

 

 

──────────

 

────────

 

──────

 

────

 

──

 

 

~翌日~

 

評議会は、昨日のボラと妖精の尻尾(フェアリーテイル)の一件でまたも紛糾していた。

 

「ま~~~た妖精の尻尾(フェアリーテイル)のバカ共がやらかしおった!!!!!」

 

「今度は港が半壊ですぞ!!!信じられますかな!!?」

 

「いつか街がひとつ消えてもおかしくない!!!」

 

「縁起でもない事を言わんでくれ...本当にやりそうじゃ...」

 

「罪人ボラの検挙のため、と政府には報告しておきましたがね」

 

「いやはや...」

 

会議がある程度落ち着いたところでジークレインが発言する。

 

「オレはああいうバカ共結構好きだけどな」

 

「貴様は黙っとれ!!!!」

 

「確かにバカ共じゃが有能な人材が多いのもまた事実」

 

「だからこそ思案に余る」

 

「痛し痒しとはこのことですな」

 

先ほど一喝されるたジークレインは尚も言う。

 

「放っておきゃいーんすよ。あんなバカたちがいないと

 

────────この世界は面白くない」




主人公の本格的な登場は次のお話からになります。
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