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〜ピガット遺跡 ピガット・ウロボトリア遺跡下層〜
「そんな、無茶だ……!! 私の異能は自分と相手の負荷を入れ替えるんだ!! 第三者同士は出来ない――――!!!」
瀕死のハピネスがジャハルの右手に触れ、否定を示す。
「出来ない……出来ないんだよ……!!」
右手に気配。否定の合図。
「そんな……ああ……!!! ハピネス……!!!」
ジャハルは両手で顔を覆って泣き崩れる。全身の裂傷も、手足と
しかし、そんな状況中ハピネスは、
「はっはっはっは……ゲホッ!! はぁっ……はぁっ……ふふふふっ……。あーっはっはっはっは!! がはっ!! ゲホッゲホッ!! さあ総指揮官殿……!! 君も……“共に地獄の苦しみを味わってもらおうか”……!!!」
ハピネスは、死ぬ気などさらさらなかった。ジャハルの異能の詳細を知らないわけでもなかった。彼女の度が過ぎる自傷には、2つの理由がある。ジャハルはハピネスの狙いにまだ気が付いていないが、ハピネスは必ず答えに辿り着けると信じていた。もう少し厳密に言うならば、必ず答えに辿り着けると“知っていた”。ハピネスは、ジャハル以上に“ジャハル・バルキュリアス”という人間を理解していた。ハピネスは地獄の苦しみの中、血反吐を垂れ流しながらも嘲笑った。
ジャハル君……。君は、君が思っている程“マトモ”じゃあない。君の強さは、その
ジャハルが、地に手をついて
折れた骨が肉を突き刺し、血を撒き散らしながら痛みに震える。依然として顔は涙と鼻水と
しかし、彼女は己に言い聞かせるように言葉を漏らす。彼女の頭の中にはハピネスの思った通り、手段と呼ぶにはあまりに狂気的で
「ハ……ハピネス……。駄目だ……死んじゃ……死んじゃ駄目だ……!!!」
死ぬつもりなんか無いよ。ジャハル君。
「何とかする……わた、私が……何とかするから……!!!」
だって、君が私を助けてくれるだろうからね。
「だから、もう少しだけ生きててくれ……!!! ハピネス……!!!」
君の異能は恐らく……“
もうもうと立ち込める煙を見つめながら、メギドは検索魔法によって作り出した羽虫を辺りに飛ばしている。攻撃魔法を察知して妨害する高性能デコイ。ジャハルの魔法による反撃を一切許さず、煙の中からの逃亡も見逃さない。そして万全の状態で土魔法を発動し、無数の槍を生成して煙へと向ける。ベルの強化したスモークグレネードの“察知不可”という特性に触れない無差別攻撃。弾丸の装填が完了したメギドが煙を指を差し、射出の為に魔力を込める。すると、槍が打ち出される直前、煙の中から上空へ何かが飛び出した。
「なんだ?」
僅かに波導を帯びた物体に、思わずメギドはそれを目で追った。それは、鮮血を撒き散らしながら宙を舞う“ジャハルのブーツ”だった。
メギドは気付いた。しかし、もう遅かった。自身の首筋に迫っていた“左手”を見て、彼女は全てを理解した。
その
「メギドちゃん!!!」
「触れたぞ……!!! やったぞ!!! やったぞハピネス!!!」
「ああ、よく頑張ったよ」
ジャハルの編み出した狂気的で悍ましい戦略。ハピネスが自傷による脅迫をしなければ到底踏み出せなかった戦法。それは、接近を許さない使奴に対して”煙の中から手を伸ばす“というものだった。
まずジャハルは”ミサンガ“を結び、煙に包まれたまま”トレンチコートの使奴の方向を向きたい”と願いを込めた。“願いが成就した際に必ず切れるミサンガ”は、ジャハルの身体がメギドの方を向いた時に千切れ方角を知らせる。次に、左手に”ダーツ“を
「やったぞ……勝ったぞハピネス……!!!」
ジャハルは右手から伝わってくるハピネスの健康状態が全回復したのを感じ、自分の絶命寸前の大怪我すら忘れて喜びの声を上げる。
「勝った……!! 勝ったんだ……!!! 使奴相手に!!!」
全身から力が抜けて行き、ジャハルは安心から気を失いそうになる。――――が、違和感がその意識を引き止めた。
右手――――
事前に決めた、否定の合図。
「逃げろ馬鹿者!!!」
瀕死のジャハルを覆い隠していた煙が晴れ、その姿が露わになる。そして、標的を目視で捉えたもう1人の
「死ね」
直後、ジャハルの視界が一変する。辺り一面に青空が広がり、足元には太陽が
「え?」
ジャハルは”地面を見上げて“
しまった――――
使奴の襲撃とは比べ物にならないほど分かりやすい結末。
まずいまずいまずいまずいまずいまずい――――
どうする? 助かる術は? 浮遊魔法? 魔力と時間が足りない。 そもそも生き延びたとて、あの使奴にどう立ち向かう? どうすれば。私はここで死ぬのか――――?
自問自答が走馬灯のようにジャハルの頭を駆け巡る。その問いはどれもが容易に否定できる
しかし、ハピネスだけは諦めていなかった。と言うより、諦めるという選択肢を選べなかった。
「くっ……!! ジャハル!! 気付けジャハル!!」
ジャハルが生き残る唯一の術。先導の審神者が導き出した答え。それは確実にジャハルを助け出す確実な方法であり、自身の協力が必要不可欠であるとハピネスは知っていた。
「気付け!! 気付け!! 気付け!! 気付け!! 気付け!!!」
ハピネスの叫びは聞こえずとも、ジャハルは自身の頭部をハピネスが抱えていることを察知している。しかし、ジャハルはその意図を理解しながらも踏み出せずにいた。
駄目だハピネス。今君と私の負荷を入れ替えても、私の魔力を回復しても浮遊魔法の発動は間に合わない。第一、私の怪我をハピネスに移す訳には行かない。
「気付け気付け気付け気付け気付け気付け気付け気付け――――!!!」
地面に衝突する瞬間に入れ替える? 駄目だ。そんなことしたらハピネスは即死を
「気付けぇぇぇぇえええええええええっ!!!」
そして、“彼女“は地面に激突し粉々に砕け散った。