シドの国   作:×90

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127話 愉快で奇怪な裏表

〜爆弾牧場 温泉街“まほらまタウン”〜

 

 真っ白な雪景色の中、赤、黄、緑、青と、色とりどりの家屋が建ち並び、並木にはこれでもかと言わんばかりにイルミネーションが飾られている。メルヘンでもあり幻想的でもある不思議な光景に、ジャハルは髪についた雪を払いながら思わず感嘆の声を漏らす。

 

「おお……。独裁政治の閉鎖都市と聞いていたが、意外にも街並みは可愛らしいんだな」

 

 しかし、その少し前方を歩くイチルギは依然として険悪な表情をしており、どこか遠くを親の仇を睨むように瞼を震わせている。ジャハルは緩みかけていた頬をキッと引き締め、己の愚劣な考えを改める。

 

 “爆弾牧場”。(かつ)ては“邪の道の蛇”という盗賊団が統治していた小さな集落であった。しかし、盗賊団と言うよりは義賊的な思想を持っていた邪の道の蛇の政治体制は奇しくも人道的なものであり、世界ギルドや狼の群れも特別注視してはいなかった。

 

 だが、42年前に笑顔の七人衆“収集家ポポロ”が来国。突如、争いの兆候すら見せずに邪の道の蛇の権力者達は姿を消した。それをポポロが難なく支配し、“爆弾牧場”という帝国の皇帝を名乗り始めた。それ以降、爆弾牧場は様々な国との交流を断ち、“笑顔による文明保安教会”や“愛と正義の平和支援会”、“ダクラシフ商工会”、“ベアブロウ陵墓”といった限られた国とだけ交流を持つようになった。

 

 そして嘘か真か、“爆弾牧場では叛逆者は惨殺される”という噂が流れるようになった。

 

 神妙な面持ちのジャハルに、シスターは不安そうに尋ねる。

 

「グリディアン神殿では、爆弾牧場についての情報はあまり聞きませんでした。ジャハルさんはどこまでご存知なんですか?」

「いや……我が人道主義自己防衛軍でも、爆弾牧場に関する情報は少ない。何せ“笑顔による文明保安教会”を叩けば爆弾牧場の問題も解決すると思い込んでいたからな。ベル様がどう考えていたのかは分からないが、指導者が死んだと言うのに未だ様相が変わらないというのは不自然極まりない」

「でも、笑顔の七人衆の死亡は世界ギルドが隠蔽(いんぺい)しているんですよね?」

「ああ。しかし、もう何ヶ月も前の話だ。あれだけの有名人がこれだけの期間姿を消せば、否が応でも察する連中は出てくる。ましてや自国の皇帝ともなれば尚更だろう」

「あ……確かに、そうですね……」

「特に、国王の"レピエン・リエレフェルエン"は気が気じゃない筈だ。何せ、今まで世界ギルドや狼の群れを遠ざけていた絶対的後ろ盾がなくなってしまったのだからな」

 

 ジャハルの説明に、ハザクラが俯いて補足する。

 

「中でも特に気になる点は、閉鎖都市である筈の爆弾牧場が観光業に力を入れている点だ。このカラフルな街並みも、煌びやかなイルミネーションもその一環だ。笑顔による文明保安教会の傀儡(かいらい)的な植民地だとばかり思っていたが……、この国は意外にも宗教の制約が緩い。それどころか、笑顔による文明保安教会の教義も全く守られていないらしい。バリア先生達を連れて行った連中も警備隊も、笑顔の者は(ほとん)どいなかったしな」

 

 集団の先頭を歩くラルバは、案内役に無理矢理連れて来た警備隊の1人に力強く肩を組み、邪悪な笑みを浮かべて顔を近づける。

 

「ふぅ〜ん。変なのぉ〜!」

「ひぃっ……!!!」

「ねえねえ隊長さん。その“叛逆者は惨殺される”ってどういうこと? 教えてほしいなぁ〜! 場合によっちゃあ助けてあげなくもなかったりしないかもよ?」

「わ、私が言ったって、こう、口外しないで頂けますか……?」

「え? 言うよ? めっちゃ言う」

「じゃ、じゃあ言えません……!!!」

「言えよ。雪食わすぞ」

「ひぃぃ……!!」

 

 ラルバは足元から掬った雪を警備隊長の顔に押し付ける。そこへイチルギが肩で風を切って歩いて行き、ラルバの頭をぶん殴ろうと拳を掲げる。しかし、ラルバはそれを予測しており、拳が命中する寸前に警備隊長を盾にして寸止めさせた。機械のようにピタリと動きを止めたイチルギに向かって、ラルバはニヤリと口角を上げて嘲笑う。

 

「おっとぉ!! いやあイチルギさん芸がないねぇ。ヒヤァ〜! イチルギサン! ナグラナイデェ〜!」

 

 恐怖で固まる警備隊長で腹話術をするラルバ。イチルギは静かに怒りを押し殺して、ゆっくりと拳を下げる。すると(おもむろ)に背を向けて数歩進み、複製魔法でラルバそっくりの人形を作り出した。そして、その人形の腹を力一杯殴りつけ始めた。

 

「フンっ!!! フンっ!!! 死ねっ!!! 死ねっ!!!」

「うわ。ちょ、ちょっと……イチルギさん?」

「オラっ!!! クソガキがっ!!! くたばれっ!!! ゴミクズっ!!! フンっ!!!」

「うわ……この人陰湿だ……怖……。見てご覧隊長さん。これが世界ギルドの元総帥だよ。嘆かわしいね」

「え……あ…………はい……?」

 

 イチルギはラルバ人形の両手足を力任せに引き千切り、顔面を何度も踏み潰した後、鉄柵の尖った装飾に突き刺す。()ぎとった四肢や胴体も順番に鉄柵に突き刺していき、見せしめのようなオブジェクトを作った。

 

「ラルバ。これ以上私を怒らせると、次は偽物じゃ済まないわよ」

「ソレやられて泣くのは私じゃなくてラデックだよ。千切られた服直すの誰だと思ってんのさ」

「素っ裸に剥いて千切る」

「怖いってかキショいよ……」

 

 その時、ふと遠くから喧騒が聞こえ始めた。その音に警備隊は皆震え上がり、拘束を解こうと藻搔(もが)き始める。

 

「はっ外して下さい!! 遅れたら殺される!!」

「た、頼む!! 絶対に逃げないから!! 少しでいい!!」

「なあお願いだよ!! 行かなきゃ殺されるんだ!!」

 

 突然慌て始めた警備隊に、ハザクラが拘束を解こうと手を伸ばす。

 

「待ったハザクラちゃん!!」

 

 それを、ラルバが腕を掴んで静止する。

 

「ラルバ、もう気は済んだだろう」

「いや、そうじゃない。多分ここの方が安全だ」

「何?」

「ジャハル! その辺で虚構拡張して守ってやれ」

「え? あ、ああ。わかった」

「私はちょっと見てくる。今から1時間後に虚構拡張を解け」

 

 ラルバは静かに走り出し、あっと今に姿を消してしまった。その後ろ姿を呆然と見送ったジャハルは、疑問を堪えて周囲を見渡す。

 

「……あの家にお邪魔しよう。ひとまずはラルバに従った方が良さそうだ」

 

 ジャハル達は怯える警備隊を連れて避難を始めた。

 

 

 

 雪が降り積もった街中を、ラルバは人目を避けて音もなく跳び回り、背の高い針葉樹の中へと飛び込んだ。

 

「んー……もうちょい右がよかったなー。あれが“レピエン国王”か?」

 

 針葉樹から数百m離れた先の広場では、大勢の人間が何かを囲むように集まっている。人集りで形成された円の中心には、複数の護衛をつけた1人の男、薄い緑の豪奢なコートを纏った老人“レピエン国王”が、煌びやかな宝石が幾つもついた散弾銃を手遊びに振り回している。その目の前には、両膝をついて激しく目を泳がせる女性が恐怖に震えている。

 

「んんんん〜? 俺の見間違いかぁ〜? 金が、足ん、ねぇ、なぁ〜?」

 

 老人は散弾銃の銃口を女性の額に乱暴に押し付ける。

 

「も、ももっ申し訳……ありません……!!! あ、ああ、あと1日だけっお、お待ちいただけ――――」

「はぁ〜!? なぁんで俺が待たされんのぉ〜!?」

 

 レピエンは銃口を女性の額や頬、胸に強く押し付け、激しく怒りを露わにする。

 

「ねぇ〜何でぇ〜!? お前はそんな偉いのぉ〜? ねぇ〜!! おい聞いてんのかぁ〜!?」

「ちちちちち違いまっ……!!! ひぃっ……!!!」

 

 背の高い針葉樹の隙間から見ていたラルバは、つまらなそうに頬を掻きぼやく。

 

「分かりやすく悪者だな。面白味に欠ける……んあ?」

 

 視界の端、広場から遠く離れた工場の煙突の梯子に、見覚えのある姿を見つける。ラルバは再び音もなく飛び跳ね、疾風の如く路地を駆け抜け、工場の煙突をするすると攀じ登って行く。

 

 

 

「あれがリィンディの言ってた国王だね」

「見えない」

「見えない」

 

 レピエン国王の悪事を観察しようと、煙突に登っていたバリア、ラデック、パジラッカの3人。そこへラルバが下からぬぅっと近づき、ラデックとパジラッカの耳元で大声を上げる。

 

「何見てんのー!?」

「おわっ」

「んぎゃーっ!!!」

 

 驚きの余り梯子から手を離してしまうパジラッカ。それをラデックが慌てて抱き寄せて受け止る。

 

「危ないっ……!!」

「んえぇ……死ぬぅ……」

 

 突如現れたラルバの姿に、パジラッカは毛を逆立てて威嚇(いかく)する。

 

「脅かさないでよ!!! 死んじゃうでしょ!!!」

「誰お前」

「お姉さんこそ誰よ!!」

「世界ギルドの元総帥、イチルギだ」

 

 笑顔で嘘を吐くラルバをラデックが押し退ける。

 

「彼女はラルバ。俺とバリアの仲間だ」

「うぇぇ。大変そうだね」

「ああ、大変だ」

「大変とか言うな」

「オイラはパジラッカ!! 大工兼、傭兵兼、プログラマ兼、掃除屋兼、コック兼、狩人兼、引越し屋兼、料理人兼、漁師兼……あれ、今どこまで言った?」

 

 ラルバとパジラッカが暢気(のんき)に挨拶をしていると、バリアが広場の方を指差して声を上げる。

 

「あっ、見て」

 

 ラルバは広場の方へ目を向け、パジラッカが双眼鏡を取り出してラデックと左右を分け合って片目で覗き込む。

 

 広場では、騎士達がレピエンを守るように盾を広げて壁になっており、その視線の先には足から血を流す1人の男性が這いつくばっている。周囲の人々は怯えて逃げ惑い、物陰や家屋に隠れ始めている。そして、騎士の壁の後ろではレピエンがコートで顔を隠しながら血を流す男に片手で散弾銃を向けている。

 

「レピエンが男を撃った。でも、周りの様子がおかしい」

 

 レピエンの散弾銃を構える手が小刻みに震え始め、撃たれた男性は(しき)りに何かを叫ぶ。痛みに震えながらも必死に周囲を見回し、助けを求めるように手を伸ばしている。そして、一際大きく叫び声を上げた次の瞬間。男性の全身が葡萄(ぶどう)のように粒状に膨れ上がり、爆弾のように爆発した。

 

「なっ――――!?」

 

 思わずラデックはパジラッカから双眼鏡を奪って両目で覗く。

 

「あー! 独り占めしないでぇー!」

 

 広場には、男のいた場所を中心に石畳に真っ黒な焦げ跡が残されており、そこから放射状に凄まじい量の血と肉片が散らばっている。騎士達は警戒を解いて陣を崩し、人々は泣き叫んで怯え、レピエンは満足そうに高笑いをしている。口に出すのも(はばか)られる(おぞ)ましい光景に、ラデックは絶句して双眼鏡から目を離した。

 

 先程まで人の形をしていたソレが、突然身体中から風船が湧き出てきたかのように膨らみ、血飛沫と爆炎を上げて消し飛んだ。恐らく、間近で見た者には鼻が曲がるほどの血と人が焼ける臭いが、痛いほどに感じられるだろう。現場から数百m離れた場所からでも、その異常さと悍ましさは薄れることなくラデックの思考を真っ赤に塗り潰した。

 

 呆然とするラデックに、バリアが淡々と解説をする。

 

「男は税金の滞納が2回目だったらしい。それにレピエンが怒って足を撃った。男は処刑を恐れて周囲に助けを求めたけど、誰も手を貸さなかった。多分、皆こうなることを分かってたんだと思う。レピエンの命令で騎士が盾で壁を作った後、レピエンが呪文みたいな言葉を呟き始めた。遠過ぎてなんて言ってるかまでは分からなかったけど、周囲の反応からして、爆殺する予備動作みたいなものだったんだと思う」

 

 バリアは説明を終えると、もう用はないと言わんばかりに梯子から飛び降りた。ラルバもそれに続き下へ飛び降りる。残されたラデックは、まだ呆然と広場の方を見つめており、パジラッカがその手から双眼鏡を奪い取って広場の方を覗く。

 

「あひゃぁ〜グロぃ〜。酷いねぇ。人の心がないねぇ」

 

 ラデックは何も言わずに少しだけパジラッカを見つめ、ラルバ達の後を追いかけて梯子を飛び降りた。

 

「ええっ。皆飛び降りるの? やめてよオイラ高いとこ嫌いなんだからぁ……。ちゃんと梯子で降りましょうねぇ〜」

 

 パジラッカはブツブツと文句を零しながら、のそのそと梯子を降り始めた。

 

 

 4人はバリアを先頭に先程の広場の方へと歩いて行く。ふとラデックが足元に目を向けると、踏みしめられた雪から覗いている石畳の一部が、真っ黒に変色して欠けているのが見えた。

 

 黒焦げの石畳。さっきの爆発が脳裏に浮かび上がり、ラデックは思わず足を止めた。

 

「お兄さんどしたの? 小銭落ちてた?」

 

 パジラッカがラデックの顔を覗き込むと、ラデックはまた何も言わずに歩き出した。そして少し早足になってバリアを追い抜き、振り向かないままバリアに尋ねる。

 

「なあ、バリア」

「何」

 

 バリアがラデックを追い越そうと足を早めるが、ラデックもそれに合わせて速度を上げる。顔を見られたくないのか、それとも誰かを視界に入れたくないのか。それはラデック本人にも分からず、今はあの悲惨な処刑の光景を忘れようと必死だった。

 

「昨日バリアが言っていた“その辺は多分心配要らない”って、アレ。どう言う意味だ」

「まだ確信が持てないから言いたくない」

「確かじゃなくてもいい。教えてくれ。俺は今、良くない妄想ばかりしている」

「気休めにもならないよ。聞かないほうがいい」

「頼む」

「嫌」

「頼む」

「しつこい。蹴るよ」

「バリア……!!」

「いい加減にしてラデック――――」

「バリア、2人は?」

「え?」

 

 ふとバリアが振り向くと、そこには誰もいなかった。確かについて来ていた筈の、ラルバとパジラッカの姿が、どこにも見当たらなかった。

 

「ラルバがどこかに連れて行ったのか?」

 

 ラデックがいい終わるより早く、バリアは地面が(えぐ)れるほど強く踏み込んで走り出した。ラデックも慌てて追いかけ、さっき曲がった交差点を曲がる。そこには、光を一切反射しない真っ黒な壁が道を塞いでいた。

 

「これは……虚構拡張か?」

「しまった……!! クソっ!!!」

 

 バリアは歯を食い縛って激しい音を鳴らし、力任せに虚構拡張の結界を殴りつけた。バリアの足元が衝撃に砕け、凄烈な爆音を鳴らして猛風と土煙が吹き荒れる。周囲の家屋の窓ガラスにはヒビが入り、脆い壁は耐えきれずに崩れ始めた。

 

「ぐっ……!! お、おいバリア……!!」

「油断したっ!!! 何でっ……何であんな軽忽(けいこつ)な真似を……!!! 迂闊(うかつ)だった……!!! クソっ!!! クソっ!!!」

 

 バリアは虚構拡張の結界を何度も殴りつける。周辺の住民は何事かと顔を出し、あっという間に人集りができた。ラデックはバリアを止めようとするが、バリアが虚構拡張を殴りつける度に発生する衝撃波に憚られる。

 

「バリア……!! やめろ!!! バリア!!!」

 

 それでも必死に近づき、ラデックはバリアの首根っこを引っ張って虚構拡張から引き剥がす。バリアは俯いたまま歯を強く擦り合わせ、心底悔しそうに目を伏せた。

 

「私が……私がさっさとラルバに伝えていれば……!! ああ、何で……!!! クソっ……クソっ……!!!」

「落ち着けバリア……!! 俺にも分かるように言ってくれ!!」

「最初から怪しかった……。ずっと……! プログラマーの経験があって、叔父の家に掛け流しの風呂があるってことは、かなり上位の先進国……! 使奴の性能をある程度知ってるってことは、使奴に対して比較的関心のある国の出身……!!」

 

 バリアの呟きに嗚咽(おえつ)が混じり始め、苦しみを吐き出すように力強くなっていく。

 

「そして何よりも、こんな閉鎖国家に単独乗り込んで来れるような、ずば抜けた能力を持った人材がいて、それを真っ当に教育出来る国なんて……限られてる……!!!」

「バリア……それって、まさか……!! いや、でも相手はラルバだ。そこまで心配する必要は……」

「お前は何も分かってない!!!」

 

 バリアがラデックの胸倉を力任せに引き寄せ、今まで一欠片も見せたことのない憤怒の表情で睨みつける。しかし、その矛先はすぐにラデックから外れ、呆然とするラデックの瞳に映ったバリア自身へと向けられる。

 

「クソっ……!!! クソっ……!!! ああっ……!!! あぁぁぁ…………!!!」

 

 バリアは力無くラデックにもたれかかって膝をつき、顔を伏せて悔恨に頬を濡らした。未だ事の根幹を理解していないラデックは、泣き崩れるバリアにかける言葉もなく見守るしかなかった。

 

「一体……中で……何が……?」

 

 

 

 

 

 

 

 顔が映りそうなほど綺麗にワックスがけされたフローリングの床が、見渡す限りどこまでも長く続いている。その地平線の果てには、巨大なスピーカーと思しき機械が幾つも浮遊しており、この空間が現実離れした場所であることを証明している。

 

 ラルバは(おもむろ)に振り返り、苛立(いらだ)った様子で口を開く。

 

「……使奴相手に虚構拡張? 自殺にしては随分回りくどいな。パジラッカ」

 

 パジラッカは普段と変わらぬあどけない笑顔のまま、両手に鎖を構えて陽気に答える。

 

「へっへへ〜ん。悪者の言うことなんか聞かないもんね!」

 

 鎖の両端には十字の刃がついており、パジラッカはそれをブンブンと振り回し始める。ラルバは小さく舌打ちをしてからほんの僅か腰を落とし、パジラッカに向かって跳躍した。

 

 しかし、突然足が短い痙攣(けいれん)と共に硬直し、バランスを崩して攻撃を外してしまう。そして、パジラッカはすれ違い様にラルバを斬り付け、片眼を真っ二つに裂いた。

 

「なっ――――!?」

「っしゃあ!! まずいっぱーつ!!」

 

 ラルバは倒れ込む寸前に片手を地面につき、腕の力だけで宙返りをしてパジラッカから距離を取る。パジラッカは自信満々に鎖を振り回し、挑発するように決めポーズをとった。

 

「我ら世界ギルド!! “怪物の洞穴(ほらあな)”所属、パジラッカ!! イチルギ様は返してもらうよ!!」

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