シドの国   作:×90

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150話 ジャハル対ホウゴウ

〜診堂クリニック 第一診堂中央総合病院 旧第二資料室〜

 

 剥き出しのコンクリートで構成された、12畳程の空間。湿った石の匂いと、一本だけの蛍光灯が鳴く音。ジャハルとホウゴウは互いに見合ったまま動かないが、2人とも得物を手に敵意を隠していない。

 

 暴力を嫌う者は多い。それは言わずもがなの事実である。正義を成す為の最終手段であり、悪党の常套手段。他者の幸福を考慮しない者たち御用達の醜い武器。平和と幸福を望む極めて一般的な大多数の人類が、皆一様に暴力を嫌っている。それは、正義を使命として生きるジャハルにとっては尚のことである。

 

 しかし、ジャハルは考えを改めた。今までラルバの旅に同行してきて、なんでも人形ラボラトリーやグリディアン神殿の被差別民達を見て、ピガット遺跡でメギドとハイアと戦って、バルコス艦隊のファーゴ元帥の悪行を知って、爆弾牧場のディンギダルの叫びを聞いて、ジャハルはかつてなく柔軟で残酷に物事を見ることが出来るようになった。今まで信念と常識に従い漠然と嫌っていた暴力を、貴賎なき目で手段の一つとして見ることが出来ている。

 

 暴力とは、言葉だ。言葉を知らぬ幼子が物を投げるように、若者が喧嘩に明け暮れるように。言葉を持たぬ、言葉を知らぬ、言葉を選べぬ者たちにとって、最も効率的で、最も易く、最も効果的な意思表示。そして同時に、理性的であるべき、利他的であるべき、平等であるべき、清く、正しく、美しくあるべき。そんな理想塗れの一方的な社会常識に、ついて行くことが出来なかった者たちの声を聞く唯一の手段でもある。それが暴力。暴力を用いる相手に対して、暴力で応じるここと、対話を望んだ末已を得ず暴力で応じること。相手のやり方に応じることと、自分のやり方に応えない相手に渋々合わせること。どうせ同じ暴力に行き着くならば、排斥としての暴力でなく、対話としての暴力に応えたい。

 

 ジャハルの導き出した結論が詭弁であることは間違いない。しかし、平和的な対話を是とすることもまた詭弁なのだ。

 

 ホウゴウとジャハルが同時に虚構拡張を発動する。無機質なコンクリートの小部屋は“燃え上がるように”して、片や“焼け焦げるように”して消え去り、無限とも思える広さの異質な空間が現れる。ジャハルの背負う景色は“1つの寝台が置かれた医務室”。片やホウゴウの背負う景色は“2つの手術台が並ぶ手術室”。どちらも殺人現場のように血塗れで、足元には血溜まりが(まだら)模様を描いている。

 

「……医務室?」

 

 ホウゴウが眉を(ひそ)めて歯を擦り合わせる。虚構拡張の景色は、本人が異能に対して抱いている解釈に大きく影響される。つまり、ホウゴウはジャハルの異能に対する解釈に不愉快な思いを感じている。

 

「この偽善者が……!!!」

 

 ホウゴウの振り上げたナガイカが、獣の鳴き声のような風切り音と共に振り下ろされる。使奴による鉄をも砕く一撃を、ジャハルはなんとか大剣の腹で受け止める。しかし、ホウゴウは一切勢いを緩めず連撃の嵐をジャハルに叩き込む。

 

 ホウゴウにとって、この異能の本質は“身代わり”である。自分の怪我や苦しみを、無事な誰かに移し替えて己を治療する非道な異能。対するジャハルにとっての本質は“自己犠牲”。誰かの怪我や苦しみを自分に移し替えて他者を治療する慈愛の異能。その真相意識は虚構拡張の景色へと反映された。ジャハルの方には患者を治す為の寝台だけが置かれているが、ホウゴウの方には自分と誰かを寝かせる為に2台の手術台が映し出されている。ホウゴウは悔しかった。羨ましかった。この醜悪な異能を、美しい人助けの異能だと心の底から思えていることが。そして同時に、己の矮小(わいしょう)で愚鈍な心を憎まずにはいられなかった。

 

 その憎しみを孕んだ殴打が、罵声の津波に代わってジャハルに襲いかかる。この猛攻をジャハルの大剣一本で防ぎ切ることは到底敵わず、金属の芯が入った鞭は骨を砕き、筋肉を押し潰し、血管を破く。しかし、ジャハルも防戦一方ではない。意識が朦朧としかけたその時、満を持して異能を発動した。

 

「うっ――――――――!!!」

 

 ホウゴウが突然吐血してその場に(ひざまず)く。ジャハルの抱えていたダメージ、全身の打撲、骨折、内臓損傷、激痛。それらが何の前兆もなくホウゴウの体へと移し替えられた。本来であれば殴打の衝撃や脳内麻薬によって濁るであろう凄烈な痛みが、純粋な苦痛の結晶となって痛覚を引き裂いた。

 

「ひ、ひっ」

「っ………………!」

 

 今度はホウゴウが異能を発動する。純粋な苦痛の結晶は綺麗さっぱり取り除かれ、ジャハルの身体へと戻された。ジャハルもすぐに異能を発動し、再び負荷をホウゴウに移し替える。戦いは物理的な殴り合いから、異能による負荷の押し付け合いへと移行した。

 

「うあああっ!!!」

「…………」

「ひっ、ひっ、ああああっ!!!」

「…………」

「っ――――!!! ああああああっ――――!!!」

 

 激痛に叫ぶホウゴウと、無言で耐え忍ぶジャハル。この痛みは当然人間にとってもこの上なく苦しいものではあるが、無敵の人造人間として200年過ごしてきたホウゴウにとっては耐え難い苦しみであった。この痛みの押し付け合いが数回続くと、ジャハルは痛みを保持したまま押し付け合いを一時中断した。

 

「え、な……何?」

 

 戸惑うホウゴウ。彼女の目の前でジャハルは大剣を逆手に持って持ち上げ、見せつけるように自分の足目掛けて思い切り突き刺した。

 

「………………え?」

 

 飛び散る血飛沫(ちしぶき)。混乱するホウゴウ。しかし、その理解は数秒遅れてやってくる。

 

「い、嫌……嫌っ!!!」

 

 ジャハルが異能を発動する。

 

「あああああああああっ!!!」

 

 今までの苦痛、怪我に加えて、ホウゴウの足先が真っ二つに裂ける。堪らず異能で痛みを押し返すホウゴウ。しかし、ジャハルはまたしてもすぐには痛みを返さない。

 

「嫌……嫌……!! やめて……!!!」

 

 ピガット遺跡でメギドとハイアと戦った時のことを思えば、この程度の痛み、ジャハルにとっては耐えられないものではない。先導の審神者(さにわ)の導きによって覚えた邪悪な戦方を、正義の戦士は淡々とこなしていく。ホウゴウの掠れた抵抗を聞き終える間もなく、ジャハルは大剣の刃に手先を押し付ける。

 

「嫌っ!! 嫌ぁ!!!」

 

 ジャハルの指が縦に裂けて血の滝を流す。ホウゴウは今から自分を襲うであろう痛みに震え両手で顔を覆う。

 

「や、やめ――――」

 

 ジャハルが異能を発動する。

 

「――――――――――――っ!!! ああああああああああっ!!!」

 

 痛みを感じた瞬間、ホウゴウが異能で負荷を押し返す。そして、またしてもジャハルは動かない。足と手と口から血を垂れ流したまま、静かにホウゴウを見つめる。ホウゴウはこれ以上異能を発動させないために、ジャハルの頭をナガイカで思い切り殴りつける。人骨さえ焼き菓子の如く粉砕する使奴の攻撃を喰らったジャハルが蹌踉(よろ)めき倒れ込む。が、直後ホウゴウの全身を激痛が襲った。

 

「あああああああああああっ!!!」

 

 すぐさま異能を発動。全身から激痛が消える。しかし、何度痛みを消そうとも、痛みへの恐怖はホウゴウの中に暴風雪の如く吹き荒れ降り積もっていく。

 

「嫌……嫌……やめて、もう……やめて……!!!」

 

 ジャハルがゆっくりと立ち上がり、大きく裂けた手をもう片方の手で握る。濡れた雑巾を絞るかのように血が溢れる。

 

「やめてっっっ!!!」

 

 ホウゴウがジャハルに向けて手を翳す。そこから発せられた回復魔法によって、ジャハルの全身の傷はみるみる治っていく。これ以上の痛みを恐れたホウゴウは、あっけなく降参を宣言した。

 

「もう、もうやめて……お願い……!!!」

 

 涙ぐむホウゴウが回復魔法の勢いを強めて懇願する。ジャハルは暫く黙ったままホウゴウを見つめていたが、やがで静かに目を閉じて虚構拡張を解いた。辺りの景色が燃えて消え去り、元の狭いコンクリートの地下室に戻った。

 

 

 

「……ホウゴウ」

 

 怪我が完治したジャハルが(おもむろ)に口を開くが、ホウゴウは座り込んだまま震えて応えない。使奴の肉体を得ているとは言え、生まれて初めての死闘にホウゴウは恐怖で動くことが出来なかった。ジャハルは己の決断が正しかったのかをぼんやりと思いながら、ぽつりぽつりと話し始める。

 

「……私の国では、人は肉体に魂が宿ることで生まれてくると教わる。人はその時に得た肉体によって、優秀かどうかが決まる。そして、魂は肉体を選べない。つまりは、優秀かどうかと言うのは完全な偶然なんだ。だから、私の国では優秀でない者を悪く言うことは少ないし、陰謀論めいたものもない。その代わり、優秀な人間を特別優遇したり尊敬したりすることもない。何故頑張れるのか、何故頑張れないのか、何故報われるのか、何故落魄(おちぶ)れるのか。それら答えは、この教えで解決する。ホウゴウ。私は貴方を不出来だとは思うが、それは決して見下している訳じゃない。貴方が不出来なのも、私が上出来なのも、全ては偶然だと、私は思う」

 

 ホウゴウは恐怖が拭い切れていない声で、吐き捨てるように呟く。

 

「……だから何ですか。偶然だから受け入れろって言うんですか」

「そうだ」

「馬鹿なこと言わないでください。第一、そんな説教をする時点で見下してるじゃないですか」

「見下してない! 本当だ! こんな、偶然順調に育っただけで、どうして説教なんか出来るか……。 怠惰や傲慢(ごうまん)というならいざ知らず、(したた)かに懸命に生きようとする者を、如何(どう)して見下せるか……!!」

「その、“順調に育っただけ”って言うのがもう鼻につくんですよ……!! その“順調に育つだけ”すら私には出来ない……!! なんなんですか!! 私にどうしろって言うんですか!!」

「……どうしろ、と言うなら。言いたいことは一つだけだホウゴウ。私達に、貴方を助けさせてくれ」

 

 ホウゴウが顔を上げる。涙と鼻水に吐血が混じり酷い顔をしていたが、懐疑と怨嗟に満ちた目の奥には微かな期待が灯っていた。ジャハルには、それ灯火がこの上なく嬉しかった。そして確信、(もとい)、決意する。今度は助けて見せる。ディンギダルのようにはさせない。

 

「貴方が己を責める必要はまるで無いが、たった一つだけ明確に間違ったことがある。それは、“使奴に助けを求めなかったこと“だ」

「……私が?」

「ホウゴウのナガイカ……鞭は、ベル様、我が国の総統に貰った物じゃないか?」

「な、何でそれを?」

 

 ジャハルがホウゴウに近づき、手からナガイカを受け取る。持ち手の先には革で編み込まれた長さ60センチ程の鞭が伸びており、先端には(こぶ)状の突起が付いている。

 

「人道主義自己防衛軍の訓練でも数回使ったことがある。そしてこれは、恐らく”護身用“のナガイカだ。ベル様の道具強化の異能は、道具の持つ性質の内、ある程度強化項目を選択出来る。これは、ナガイカの持つ性質の内“戦意喪失”を強化項目に選んだのだろう。だから、使奴と同等の腕力を持つホウゴウが全力で振るっても私は死ななかった。死亡と戦意喪失状態はイコールでは無いのだろう。それに、私も元より貴方と戦っているつもりは無かったしな」

 

 ホウゴウは小さく失笑して(うつむ)く。

 

「はっ……あの人、騙したんですね。“私にぴったりの武器”って、そういうことだったんですか。何ですか戦意の喪失って……これじゃあ(ろく)に戦えないじゃない……」

「騙したんじゃない」

 

 ホウゴウがナガイカの持ち手をホウゴウに差し出す。

 

「鞭は、剣や棍棒よりも攻撃時の感触が手に残りづらい。フレイルやヌンチャクと違って取り回しにそこまでコツも要らないし、銃と違って殺傷能力も高くない。そして、このナガイカは私達が軍で支給されるものと形が異なっている。恐らく、素人でも扱いやすいよう長さや形状を工夫してくれてあるんだろう。ベル様は、貴方の心を守ったんだ。貴方が誰も殺さないように、誰も傷付けないように、貴方を守ってくれたんだ」

 

 ホウゴウが、恐る恐るナガイカを受け取る。

 

「な、なん、で……何で……!」

「ホウゴウは心の優しい人間だ。そのくらいは私にもわかる。そんな心優しい貴方が誰かを殺めれば、その傷は一生胸に刺さって抜けないだろう。ベル様は最初から見抜いていたんだ。ホウゴウがどういう人間か。そして、ベル様が分かっていたということは、多分他の使奴も……」

「嘘よ!!」

 

 ホウゴウは勢いよく立ち上がってジャハルに食ってかかる。目に涙を溜め、必死に己の正当性を叫ぶ。

 

「だって、だって誰も助けに来てくれなかった……!!」

「……ホウゴウは助けを呼んだのか?」

「言ってない……言える訳ないでしょ……!! 最初、200年前に会った時には、“私が一人でやる”って言っちゃったんだもん……」

「診堂クリニック建国を、ひとりでやるって言ったのか?」

「イチルギさんやヴァルガンさん達が皆で頑張っている中、私ひとりじゃ出来ないなんて言えなかった……!! でも、何年もせずに、すぐ上手くいかなくなった……」

「……最初に“ひとりで国家を運営してみせる”と言い張った手前、助けを求めることが出来なかったんだな。そしてその内、ホウゴウ以外の人間が国家運営の中枢(ちゅうすう)を支配するようになった……」

「そうなれば誰か助けに来てくれると思った……。使奴は皆優秀な人達でしょ……? でも、でも……!! 誰も助けに来てはくれなかった……!!」

「…………そうか。でも、もう大丈夫だ」

 

 ジャハルが優しくホウゴウを抱き締める。

 

「長い、長い間、本当によく頑張ってくれた。もう、大丈夫だ」

 

 ホウゴウは身体を強張(こわば)らせて言葉を失うが、指先でほんの少しだけジャハルの制服の(すそ)を掴む。

 

「…………もう、もう頑張れない」

 

 ホウゴウの頭に幻聴が鳴り響く。

 

     少しは頑張れよ。

 

   迷惑とか考えないの?

 

       サボってんじゃねーよ。

 

「十分だ。もう休んで良い」

 

「ぜっ全然、全然出来てないのよ。仕事も、何も、かも」

 

   はあ? 何でまだ終わってないの?

 

        あのさあ、今まで何やってたの?

 

     普通出来るでしょ、これぐらい。

 

            言わなきゃ分かんない?

 

      そのぐらい自分で考えろよ。

 

「私達に任せろ」

 

「わ、私自身も、全然駄目なの」

 

   使えねーなホント。

 

             気が利かね〜。

 

     言い訳ばっかしてんじゃねぇよ。    出来てんの? 出来てないの? どっち?

 

   少しくらい出来んでしょ。     これだから女は嫌なんだよ。

 

       泣けば許されると思ってるでしょ?   あーあー、本当最悪。

 

「ホウゴウ」

 

 自分のことばっか考えてんじゃねーよ。仕事ナメてる? ナメてるよね?馬鹿だな〜お前。いい加減にしてくれよ。迷惑なんだよね。君、明日から来なくていいよ。すみませんじゃねぇだろすみませんじゃよぉ! だって君が悪いんじゃん。どうして出来ないの!? いっつも言ってるよねぇ!! また忘れたの!? ねぇ、これ何回目? 黙ってちゃ分かんねぇだろ!! 恥ずかしくないの? 困るんだよなぁそういうの。俺が言ったこと覚えてる? あーあー知ぃ〜らね。 何、まだ居たんだ。給料泥棒。もう何度言ったら分かるのよ!! ねぇ俺の何でないの? 何これ、俺への嫌がらせ? 見下されたくなかったら少しは成果出せよ。文句あんなら言えよ。使えねー。マジでいらない。ヤバくない? クソじゃん。ゴミ。ボケ。カス。あり得ない。帰れ。馬鹿。マヌケ。クソ女。死ね。キモ。ゴミ。帰れよ。来んな。馬鹿。きっしょ。うざ。うるせぇ。死ね。消えろ。カス。クビだな。ゴミ野郎。帰れ。馬鹿。グズ。クソ。ゴミ。マヌケ。死ね。来んなよ。クソ。ボケ。死ね。馬鹿。キモい。クソ。帰れ。クソ。間抜け。死ね。馬鹿。死ね。カス。ゴミ。グズ。これだから女は。ゴミ。グズ。馬鹿。クビだろ。死ね。キモい。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「ホウゴウ」

 

 ジャハルが震えるホウゴウの腕の下から手を入れて背中に回し、自分を抱き返すような形にホウゴウの腕を持ち上げつつ再び抱き締める。

 

「よく、頑張った」

 

 ホウゴウの腕が、ジャハルの背中を恐る恐る撫でる。確かめるように、疑うように、そして、次第に強く、震えを(ともな)って、力いっぱいに抱き締め返す。恐怖が、涙や嗚咽(おえつ)と一緒に流れ出て行くような気がする。不安や、疑念が、人の温もりで溶かされていく気がする。

 

 まだ幻聴は耳から離れない。それでも、今は少しだけど苦しくない。

 

 旧文明時代から、物心ついた時からかも知れない。ずっと探し続けてきたものを、ホウゴウは(ようや)く見つけられた気がした。

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