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ラルバの掛け声と同時に、ジャハルは真後ろへと大きく
通常一対一の対人戦では、先手必勝が常となる。駆け引き、フェイント、カウンター、
人道主義自己防衛軍の戦闘技術は大きく三種類に分けられる。対使奴戦、対人戦、そして今回のような“対異能者戦”。非接触型や受動型強制発動の異能を持つ者の場合、先手必勝は
対するラデックは、すぐさま自身の頭を両手で抑え異能による”改造“を行った。
一時的な動体視力、深視力の強化。ラルバによって手負にされたラデックにとって、相手の動きを見極めることは他の何よりも優先すべき必須事項だった。
ラデックは一匹狼の群れを訪れた直後、これから
しかし、ラルバに手負にされた今回に限り、ジャハルの攻撃を肉体改造で軽減することは不可能。故に視覚情報
ラデックが自身の頭を両手で覆った瞬間、ジャハルは“様子見”が
ジャハルは開始直後に後ろへ跳び退いてから着地するまでの、1秒にも満たない時間でそれらを把握し理解した。そして着地の瞬間大きく地面を蹴り、大剣を構えてラデックに一瞬で斬りかかる。
しかし、視覚の強化が済んだラデックの前では、如何に速い斬撃も人間技であれば見切ることは
ジャハルは逃すまいと
その瞬間、ジャハルは大剣から手を離し“両手の指を胸の前で組み合わせ“た。ラデックは一瞬で意味を理解し、慌てて自分も同じ構えを取る。
「ぐぐぐぐ〜っからのパーンって感じ……ぐぐぐぐ〜っと……」
「虚構」
「ぐぐぐぐ〜……」
「拡張」
「パーン」
2人が同時に手を左右へ弾くと、訓練場の景色が”燃え上がり“一方では”タイルがひっくり返るように“して、一瞬で
ジャハルの立っている側半分は
「おおお……これが俺の虚構拡張……ちょっと楽しい……」
ラデックが
ラルバ達の横で闘いを見ていたハピネスは、遊園地に来た子供の様に空を見上げ、虚構拡張によって創られた奇妙な景色を眺めている。
「ほぉ……2人同時に使うとこうなるのか……面白いな……」
ラデック達の攻防戦そっちのけで
「なんだハピネス。てっきり何度も“
「いや、この類の結界に私は入れないんだ。私自身虚構拡張を使えないし。虚構拡張の具体的なメリットにはどういうものがあるんだ?」
「う〜ん……まずは単純に異能の強化かな?範囲が広がったり、ターゲットを増やせたり、接触型は非接触で行えたり、生物無生物は関係なかったかな」
「それは知ってるんだが、それ以外は何かあるのか?」
「う〜ん……虚構拡張は異能の強化よりも、正直この結界の形成の方が目的だねぇ。これ電波も
「これ境界線にいたら死ぬのか……」
「でも状況によりけりだけど、デメリットの方が多いっちゃ多いかな。これ多分1日に一回が限度だと思うんよ。私でさえ2回が限界だからね。使ってる最中は平気だけど、閉じると
「ああ、そうか。弱い相手ならそもそも使わずに倒せばいいし、強い相手に使っても結局自分の逃げ場を無くすだけなのか」
「そうそう。だからハピネスは覚えなくていいよ。第一覗き見の異能を閉鎖空間で強化してどうするのさ」
「…………レントゲン代わりとか?」
「多分ハピネスの異能だと、覗き見に使ってる自分の
「……実質素早く動けて空が飛べるだけか」
「閉鎖空間でだけね」
「意味がない……」
「あと虚構拡張のデメリットと言ったら、何と言っても“景色で異能の大体の予想がついちゃう”ことだね。うん」
「え?この景色って関係があるのか」
「あるよー」
ラルバはラデックの作り出した景色、スイッチが大量についたコックピットの様な空間を指差す。
「こっちはラデックの異能。景色は本人が異能に対してどういうイメージを持ってるかで変わるんだ。個人的には改造の異能は粘土とか彫刻みたいなイメージかなーって思ってたけど、ラデック的にはスイッチのオンオフとかツマミを回すイメージみたいだね」
「ほぉー……てことはジャハルの方は……血塗れの部屋、医務室か?」
「そうだね。これだけでもう“治療”に関係するし、攻撃性があることもわかる。あとはベッドだけがやたら
「ベッドが綺麗ってことは……
「さあてどうでしょうねぇ。こればっかりは私も推測以外できん」
「……因みに今の話、ラデックにはしてあげたのか?」
「うんにゃ。ラデック頭は良いけど、割とお馬鹿さんなんだよねぇ。考えるより感じるタイプ。戦いの中で勝手に気付いてもらった方が理解できると思うよ」
そう言ってラルバがラデックを見つめる。その目には信頼ではなく
そしてラルバの思う通り、ラデックは既に虚構拡張の景色の意味を理解していた。そして景色の内容が異能を表すこと、ジャハルの異能が“
対するジャハルもそれは同じで、ラデックの異能を“能力変化”に近いものだと推測していた。
ラデック視点では互いに外傷を負うことを避けるため、勝利条件に”一撃での勝利“が追加された。そしてジャハルはラデックの異能への警戒から”異能を使わせないほどの
しかし、ジャハルは一つ大きな勘違いをしていた。
ジャハルの本来の利き手は左手であるが、今はこれを無理矢理
先のラデックとのやりとりの中でも、この戦法は行われている。左の大振り、それをフェイントに右手から射出された氷の弾丸。ラデックには容易に避けられてしまったが、この一件がジャハルに大きな
当然ラデックに武芸の
結果的に、ジャハルの戦い方に大きな変化が現れた。重心を細かく左右に振る移動方、魔力の流れを目線とは逆方向に集中させるフェイント、攻撃を
しかしラデックはそんな技術を見抜く知能も知識もなく、フェイトは攻撃チャンスにはならず、ミスディレクションはカウンターに繋がらず、ただただ体力だけが
2人の激戦、というよりはラデックの
「はぁっ!はぁっ!クソ……!すばしっこい!」
「……もう見当ついていると思うが、俺の異能は”改造“だ」
ラデックはコックピットの様な景色に少しだけ目を向ける。
「このスイッチを切り替える様に能力値を自在に操れる。あれ、自在は言い過ぎか……?まあそんな感じだ。それで肉体を壊れないギリギリまで強化している。ジャハルじゃあ到底追いつけない」
「はあ……はあ……そうみたい、だな」
「ん?負けを認めるのか?降参はナシらしいが」
「いいや……負けを認めるのは……お前だっ!!!」
ジャハルは再び大剣を振り上げ、ラデックに渾身の力で突進をする。当然ラデックは軽いステップでそれを躱すが、ジャハルの振り回した大剣は勢い余って”彼女自身の脇腹を大きく裂いた”。
「なっ……!!!」
ラデックは異能の発動を警戒して距離を取るが、虚構拡張による接触の警戒は無意味だということを思い出し“脚を
「喰らえ……とっておきの”致命傷“だ!!!」
ジャハルがラデックに向けて手を
ラデックは
「これで私の勝ち……あ?」
ジャハルがラデックの方へ飛びかかろうと前傾姿勢になるが、足は地面に貼り付いた様に動かず地面へと倒れ込む。
「これは……!!」
そこへ“痛覚”を改造によって低下させたラデックがフラフラと近寄り、ジャハルの頭を
「血塗れの医務室に新品のベッド……ジャハルの異能は“負荷の入れ替え”か。それにこの疲労感……
ジャハルはラデックの異能によって言葉と四肢の自由を奪われ、まだ自分の力で動かせる眼を伏せて
「勝負ありーっ!!!勝者ラデックーッ!!!」
ラルバが上機嫌でサルのおもちゃの様に両手を叩いて宣言をする。ラデックはホッと胸を撫で下ろすと、ジャハルと自分の体に施した改造を
「いやあラデックお疲れさん!!ぶっちゃけ楽勝だったでしょ?」
ラルバがぴょんぴょんとスキップをしながらラデックに駆け寄る。
「楽なものか。ジャハルの異能が時間の巻き戻しとか外傷の保存とかだったら一瞬で
「違ったからいいじゃん」
「……まさか知っていたのか?」
「うーん……予想に近い。そういう系だったら国の維持に必須だし、私らに同行しないでしょ。あと時間巻き戻す異能なんか無いよ。魔法でも無理なんだから」
「あ、そうか……で、俺をぶん殴った理由は?」
「あんれれ?気づいてない?うっそだぁ」
「まったく」
「ジャハルの動き、途中から変にクネクネしてなかった?」
「え……いや……うーん……かも?」
「故意にビギナーズラックを発生させるおまじないだったんだが、わかんなかったかー……」
ラルバとラデックがワイワイと雑談している隣では、ハザクラが悔しそうなジャハルを
「すまないハザクラ……!!完全に私の読み間違いだ……!!」
「………………いや」
ハザクラはジャハルに背を向けてハピネスの方へ歩き出す。
「これで同点だ」
「……お
「じゃあお二人さん準備はいいカナ〜?よぉい………………始めっ!!!」
再びラルバの合図で戦いの
“
称号だけ見れば当然ハピネスの圧勝であることは明白であり、もしこの戦いを賭場に中継したならば間違いなくオッズはハピネスへ傾く。しかし当の本人は戦闘は
そこで、ハピネスはハザクラから一勝をもぎ取る為に考えた“とっておきの秘策”を繰り出した。
「ハザクラ君っ!!私と“しりとり”で勝負だっ!!!」
『いいぞ』
「あっ」
ハピネスの提案に“
「りんごっっっ!!!」
この世で最も
「これで同点だ」
ハザクラは何事もなかったかの様な無表情のままラルバを見上げる。しかしラルバはニヤニヤと笑いながら顎を撫で、挑発する様にハザクラを見下す。
「ん〜?でも私“勝ったら”って言ったしなぁ〜。同点は勝ちじゃないよねぇ」
「言っておくがお前とイチルギの参加は認められない。それについてはベルが棄権をしているからな」
「えーじゃー誰ならいいのよー」
「対戦カードがお前かイチルギじゃあないのであればいい。そしたら俺からベルに参戦を頼もう」
ハザクラはチラリとラデックを見るが、ラデックは首が取れそうなほどに頭を左右に激しく振って拒否している。
「じゃあ私が出る」
突然話に割り込んできた女性の声。全員が声の方向を見ると、ラプーを引き連れたバリアがどこからか現れ気怠そうに首を掻いていた。
「いいよね?」
バリアの視線の先にはハザクラがいたが、その眼差しはいつもの
「せ……先生……!?」
ハザクラが思わず