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〜なんでも人形ラボラトリー
なんでも人形ラボラトリーの検問所の階段を降りると、そこには観光客を惑わす
ラデック、ハピネス、ラプー、ジャハルの4人が階段を降り切ると、後ろにいた
「改めまして皆さん!!先日は本当にありがとうございました!!私、預言者の“ティレップ・レウ・ディスタード“と申します!!」
彼女の発言は今までの
しかし数分も歩くと、ハピネスが突然足を止めて子供のように
「限界だ!休憩しよう!パスタ食べたいパスタ!!」
道路
「はぁ……大国の長が聞いて
「ジャハル君背負ってくれないかい?こう見えて私は
「……はぁ」
再び大きく溜息をついたジャハルは、背負っていた巨大な剣を手に持ち変えてハピネスを背負う。
「おお、ラルバより揺れが
「あんな快楽殺人鬼と比べるな!」
「まあまあ。敵国の大将にも礼儀を払えるその心を
「くそっ」
「はっはっは。自由の身になって
「んあ」
ラプーの案内で歩き始めたジャハルの後ろで、ラデックは少し距離を空けてティレップと歩き出す。
「すまないな。予定が少し遅れたが大丈夫か?」
ティレップは
「そんなとんでもない!
「それは……うーん。やめておこう。
「えっ?私ですか?」
「ああ。どうせアナタを家に送り届けたら俺たちはラルバの手伝いをしなくてはならない。サボる口実が欲しい」
「は、はあ……じゃあ……そうですね……もし、差し支えなければ……その……」
ティレップは珍しく悩むような
「で、では……私を家に届けたら……その……か、家族に説明をして欲しいんですが……」
「説明?砂漠で殺されかけてた事か」
「あっ!いえっ!その……あのお婆さんの身内を
「ん?」
そう言ってティレップは腰のポーチから大量の札束を抜き出す。
「これを家族に渡して下さい。今回の旅の報酬だという事で……」
ラデックは不思議そうに首を
「はあ……まあ……そんな事で良いなら……」
「すみません……嘘なんか吐かせてしまって……必ずバレないようにはしますから……!」
ラデックは大人しい
〜なんでも人形ラボラトリー ディスタード邸〜
そうしてラデック達はパスタ屋で食事を済ませた後、ティレップの為に嘘をつく口裏を合わせてから彼女の家の前まで辿り着いた。二階建ての大きな一軒家の前で、ハピネスが
「さあ入り給えラデック君!ノックは3回がマナーだよ!」
「俺か?こういうのはハピネスの方が得意じゃないか」
「いつもならね。でも私は今ラルバの監視をしているから音しか聞こえんのだよ。それも向こうとこっちで同時に聞いてるから集中力が足らん。
「はあ……演技は苦手なんだが。ラプー、代わりにやってくれないか?」
「んあ」
ラプーはいつもの
「おぉぉ邪魔しますぅぅぅうう!!!バニンガーさんおりますかねぇぇえええ!!!」
いつもの
「はっはい……私がバニンガーですが……どど、どなたでしょう?」
「ワシはお宅んトコのぉ……えー、名前なんでしたっけぇ?確かーテネップだかディエップだかなんだかとか言う預言者のぉ――――」
「ディエップ……ティエップ!?」
男はティエップの顔を見るなり驚いた顔で硬直する。ラプー達の後ろに隠れていたティエップは少し気まずそうな顔で男に手を振る。
「た、ただいま……戻りました……お父様……」
ラプーはソファにふんぞり返って腰掛け、
「そうそうテレップだテレップ……ワシは“アグール船団”の“バスコニクス”っつーんだが、この小娘がウチの
「そっそれはそれは……ウチの娘がご迷惑をお掛けしました……!!」
「まー器量のイイ娘だぁ。ウチの船員も気に入っちまったもんでさ、礼なんか要らねーからよー。またこの辺寄った時に寄越してくんねぇか。そん時ちーっとばかし契約金オマケしてくれりゃー良いからよぉ」
「はっはい……!!それはも、もちろん……!!」
「んじゃーこれ」
ラプーは札束を男へ手渡す。
「……え?こ、これは……?」
「なんか一緒に依頼主?の婆さんもいてよぉ。アンタに渡すよう頼まれたんだわ。今回の報酬だとよー」
「は……はい……ありがとう、ございます……」
男はどこか納得のいかないような顔で札束を受け取った。
「なんだ。少ねぇか」
「いやいやいやいや!!そんなまさか……!!」
「ん。じゃーワシらは帰るからよぉ。じゃーなテイップ」
ラプーは最後までティエップの名を呼ぶことなく家を出て行き、ラデック達もそれに続いた。
「み、皆さんありがとうございました!またどこかで……!」
どこか悲しそうなティエップの視線に、ジャハルは振り向きながら胸騒ぎを覚えていた。
「戻ろう。ティエップは何か隠している。それも不本意にだ」
ティエップの家から出たところでジャハルがそう提案すると、その言葉にラデックも
「ああ、確かに彼女の振る舞いは不審だ。ただ、それならば正面から行くのは避けた方がいいだろう。ひとまずはラルバに連絡を……」
そこまで言いかけてラデックは言葉を止め、ディスタード邸をじっと見つめる。
「いや、今行こう。ティエップが殺される」
ラデックが玄関に近づき鍵を開けようと鍵穴に手を伸ばすが、直後ジャハルがラデックの肩を少し引いてから扉を思い切り蹴破った。
「ジャハルって割と思い切りがいいんだな」
「人命救助に
ジャハルはリビングを
そこには潰された目から血を流して服を
「な、なんですか勝手に!!」
男はティエップに覆い被さったままジャハルを怒鳴りつける。
「出て行ってくださ――――」
ジャハルは一切の会話をする気もなく、目にも留まらぬ速さで背負った大剣を抜き出し男の両腕を切り落とした。
「――――――――っ!!!」
男が叫び声を上げる瞬間に合わせて
その間にラデックとハピネスはティエップに駆け寄り、ラデックが改造でティエップの目に応急処置を
「大丈夫かティエップ。今は塞ぐくらいしか出来ないが……後でラルバ達と合流したら治してもらおう」
「ご……ごめんなさい……ごめんなさい……」
「……ティエップ?」
男を拘束した後、ラデック達は泣き崩れるティエップをリビングのソファに寝かせ、家の外へ出てから顔を見合わせた。微かに祭囃子が響く路地で、ラデックは
「……ティエップの
ハピネスは「さあ」と首を
「……恐らくティエップは、“ドメスティック・スレイヴ”。家庭内
ジャハルはそのままどこか中空を見つめながら悔しそうに歯を食い縛る。
「なんでも人形ラボラトリーは使奴が統治に関与していない国だ。そういった国では生を望まれない、
ハピネスは話を聞きながら、どこか諦めが混じった笑みで頭を左右に揺らす。
「そうだねぇ……別に使奴は政治に関与しているからと言って家庭内奴隷が居ないわけではないけど……そうでない国では圧倒的に多い。特にココでは家庭内奴隷という文化も割と
拳を握りしめたジャハルが
「痛い痛い。なんだね急に」
「何故っ……何故そんなにヘラヘラしていられるっ!!人がっ!!大勢の人間が奴隷にされているんだぞっ!!」
「うん。私もそうだったよ。確か移動中に話したよね?」
「ならば何故……尚更ではないか……!!何故自分がその境遇を経験しているのにっ!!思い量ってやれないんだ!!」
「……君は幸せだったんだねぇ。ジャハルちゃん」
ハピネスはジャハルの頭を
「人の心配をしていられるのは、幸せで
そしてハピネスは突き放した手の人差し指をジャハルの眼前に突きつける。
「何かを得ることは誰かから
「貴様っ……!!」
ジャハルは再び感情に任せてハピネスに詰め寄ろうとするが、その肩をラデックが強く引いて制止する。
「落ち着けジャハル。ハピネスは感情論で動かされるほど
微かに太鼓の音と笛の音が響く小道で、ラデック達はティエップが落ち着くまで無言で
数時間が経った頃、時刻は真夜中を指し
ティエップは未だ無事だった方の目を真っ赤に
「す、すみません皆さん……嘘を吐かせてしまった上に……こんなご迷惑まで……」
申し訳なさそうに
「何も謝る必要はない。ティエップは依頼が失敗したことを父に
「……はい。きっと、きっとお父様は私を許しま、許し、ません。だから、依頼さえ失敗してなければ……お金をちゃんと持ってきていたら……お仕置きされ、ないと思っ思って」
ラデックは立ち上がってタバコに火をつけ、大きく吸い込んでから何かを決断したように
「ティエップを連れて行こう。このまま置いていくのは気分が悪い」
ジャハルは大きく頷いて賛成するが、ハピネスは呆れたように首を振って肩を
「いやいやラデック君。君まさかこの先会う不幸な人間全員助ける気?」
「この先のことはラルバが考えるだろう。それに、今は俺にも発言権がある筈だ。ティエップを同行させ、安全が保障されるまで
「はぁ……ラデック君、意外と情に厚いんだね」
「今悪口を言われたのは分かるが、俺は後先考えていないだけだ。不都合があれば言えばいい」
「へぇ……」
結局、ハピネスは渋々ティエップの同行を了承することとなった。その後、ティエップの父親は警察に引き渡し、ジャハルが事情を説明してことなきを得た。
その後も、1人不服そうなハピネスを除き、ラデック達はティエップの気を
「――――なので、我々預言者は魔法学よりも物理学や地学に専念するんです」
ティエップは自らの預言者という職業をラデックに説明している。
「ほぉ……対自然の
「人によっては魔法で推測しますが……魔力は個人差があるので、当然推測結果にも乱れが出てきます。やっぱりある程度は現在の状況を物理的に分析してからでないと」
「そんなに誤差が出るものなのか……分析魔法も当てにならないんだな」
「実力がある人が行えば誤差もゼロに近い値が出るんですが……それだけ実力があれば預言者なんて危険な仕事はやりませんから」
心なしかティエップの表情は段々と明るくなり、ラデックに返す言葉にも気楽な色が見え始める。
「しかし君の契約金は大したものだ。預言者の中でも相当な実力だそうじゃないか」
「いやいやいやいや!私なんて大したものじゃないですよ!結局預言なんて、当たることが多くても外れる時は外れるんですっ。預言が外れても依頼人との関係を壊さずにリピーターになってもらえる預言者こそ良い預言者なんです。それに比べたら私なんて……
「初対面の人間相手に仕事の質を落とさず対応できることは立派な実力だ」
「……あ……は、はい……えへへへ……」
ラデックの素直な
「そ、そんなこと言ってもらえたの……初めてで……その……な、なんて言っていいものやら……」
「別に何も言わなくていい。誇ろうが
「いやあ……うへへ……私、初めて生まれてきて良かったって思いました……その……ありがとうございます。本当に」
「どういたしまして」
「私、ずっとこの国が嫌いだったんです。毎日みんなお祭り騒ぎで綺麗で……なんで自分だけ仲間に入れてもらえないんだろう……って。“多目的バイオロイド研究所”では毎日お祭りを――――」
「待て!!!ティエップ!!!今何て言った!!?」
ティエップの言葉を
「え?え?わた、私――――」
「今!!!今“多目的バイオロイド研究所”と!!!そう言ったのか!!?」
「は、はい」
ラデックだけでなく、その言葉にはハピネスも目を見開き唖然としている。列の先頭を歩いていたジャハルも思わずラデックに駆け寄り、信じられないと言った様子で困惑の表情を浮かべる。
「“多目的バイオロイド”って……確か使奴の正式名称――――!!」
「ああそうだ……!!!何故……何故ティエップがそれを……!!!」
ティエップは困惑と恐怖を混ぜたような感情のまま
「な、なんでって……こ、国名……ですし……?」
「国名……!!?ココは“なんでも人形ラボラトリー”じゃないのか!?」
「え……まあ……少しニュアンスが違いますけど……」
「ここは”多目的バイオロイド研究所“です」