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〜なんでも人形ラボラトリー マダム“サリファ”の占星所〜
「いやぁ楽しかったねぇ〜
大広間のソファに寝転びながらケタケタ笑うラルバを、そこにいる全員が
「なになに、なんで2人ともお通夜モードなわけ?
ジャハルは空気を読まずに戯けてみせるラルバを
「…………話さねばなるまい。私達があそこで見てきたものを」
この国の成り立ち――――使奴研究所に飼い殺されていた記憶操作の異能を持つ男が、使奴に対抗するために作った要塞としてこの国を創ったこと、常世の呪いの
それらを話し終えても
「……と言うわけだ。そこで彼女達、
そこへラデックが話を
「む……ラデック。どうした?」
「いや、どうしたもなにも……もしかして、助けるのか?」
「……!?何を言っている……!?助けないつもりか!?」
「つもりも何も……何故助けるんだ?」
「そんなこと今更……!!人として当然の……」
ラデックの思わぬ反応で熱にうかされていたジャハルは、違和感を覚えハッとして我に帰り辺りを見回す。ハピネスやラルバ、そしてハザクラやイチルギまでもが自分に賛同していない様相でこちらを見ていることに気が付いた。この場にいる仲間全員が自分の意見に賛同していない――――人助けという当然行われるべき善行に、人として最も根本的な使命に、誰一人として――――
「あのさぁ。ジャハルさん」
ラルバが不機嫌そうに呟く。
「助けて、どうすんの?」
「は…………!?助けるのに、理由がいるのか……!?」
「いるだろう。助けるのだってタダじゃないんだぞ」
ソファにもたれた身体をゆっくりと起こしてこちらを
「まあまあラルバ……君みたいな完璧人造人間が正論言ったって、私達みたいな不完全天然人間には暴論にしか過ぎない。私が話そう」
ラルバは
「……さて、ジャハル君。いや、人道主義自己防衛軍“クサリ”総指揮官殿。あの使奴研究所に囚われた使奴達を助けたいと言っていたが……それが何を意味するか分かっているかい?」
仰々しく振る舞うハピネスの意味ありげな語りに、ジャハルは全く臆することなく答える。
「当然、この国の“常世の呪い”は崩壊するだろう」
その言葉にティエップや賊達が血相を変える。
「しかし、元は燃料代わりにされている使奴達から無理矢理
「甘い」
ハピネスは言葉を被せるように否定を放つ。
「まず第一に……あそこに使奴が拘束されている理由を考えてみろ。君はハザクラ君の
「……ハザクラの異能で使奴が解放された件か?」
「そうだ。何故今も燃料代わりにされている使奴は逃げ出さなかったのか、だ」
「ハザクラは無線を通して異能を発動した。彼女らには聞こえなかったんだろう」
「そんなことがあるものか。使奴の聴力は獣並みだ」
「それじゃあ彼女達が逃げ出さなかった理由がないだろう!」
「あるさ。彼女達が一度もハザクラと会っていなかったとしたら……未洗脳個体だとしたら全てに納得がいく」
「……仮にハザクラと一度も会っていなかったとしても、それが何故助けない理由になるんだ」
「大きく分けて理由は三つ。一つは、一人でも反抗的な使奴がいればこの国が
「なっ……何故彼女達が我々を攻撃するんだ!?」
「ただの趣味趣向だろう、ラルバが意味もなく悪党を八つ裂きにして楽しんでいるのと同じだ。もしそうなった場合、
「こ、こっちには使奴が3人もいる!3対1なら充分勝機はあるだろう!」
「異能次第ではあっという間に全員お
「……!?」
「だって人造人間だぞ?人間みたく自我が芽生えて物を覚えるんじゃない。最初っからありとあらゆる知識を詰め込まれたのちに自我を覚醒させていく。その覚醒までのプロセスを我々は誰一人として知らない。もし助け出して全員が植物状態だった時はごめんなさいじゃ済まないぞ?なんせその時点で常世の呪いは確実に
「……その、時は……イチルギ達にもう一度魔法式を組み直してもらって……」
「最後の理由は、助けた時の
「………………」
「もし助けて暴れたら?使奴に何とかしてもらおう。意識がなかったら?使奴に常世の呪いを直してもらおう。仮に助けられたとして、その後の常世の呪いは?助けた使奴に頑張ってもらおう。私は使奴が
「そ、そんなことは……!!私は大事な仲間だからこそ…………!!!」
「仲間だったら協力してよって?それ、この国の家庭内奴隷が「大事な家族だろ」って服従を強いられているのとなんら変わらないよ」
「違う!!!」
「何が」
「このまま燃料扱いのまま放置する方が奴隷じゃないか!!!」
「自我も五感も機能していない生体反応だけの物体を奴隷とは呼ばんよ。ま、ジャハル君の言うように全員を目覚めさせて常世の呪いの維持に付き合わせるって言うなら奴隷だろうけどね」
次第にジャハルは不本意ながらに理解していく。
「悪意のある言い方をやめろ!!!」
「悪意がなければいいんだね?」
彼女と自分の差を。己の未熟さを。普段の
「私は……私は使奴を奴隷などとは…………決して…………!!!」
自分の思い描いてきた景色とあまりにも大きく外れた現実に
「もういいだろう」
ハピネスは「やれやれ」と鼻で笑う。
「…………そこの箱入り娘さんに、もう少し現実を
ハザクラは無言のままジャハルの手を引き、部屋の外へと出ていった。それまでずっと沈黙を
「……ごめんなさい。嫌な役させちゃったわね」
「ん?全然?一方的に説教するの、私は結構好きだよ」
「……私の
「どうぞどうぞ」
ハピネスはイチルギの横をすり抜ける際に、そっと彼女に
「……今度はアナタの番じゃないかな?」
イチルギは再び表情を曇らせ、決心したように小さく溜息を吐いた。
ジャハルとハピネスが言い争いをしている最中、賊達は顔を見合わせて
そんな中イチルギは賊の長である老婆の元へ歩み寄って、他の賊達に見せつけるように資料を取り出す。
「大丈夫。アナタ達の目的を忘れていたわけじゃないわ。ここに私とバリアが別行動していた時に入手した、アナタ達の宿敵の情報がある。全部じゃないけど、今までみたいに規模も手口も分からないなんてことにはならない」
そう言ってイチルギが資料を老婆へ差し出すと、賊達は我先にと資料に群がり顔を寄せる。しかし老婆が資料を受け取ろうと手を伸ばすと、その瞬間イチルギはさっと手を引っ込めてしまった。
「た・だ・し!一つ約束してもらうわ。この宿敵達に
イチルギの言葉に賊達は
「うるさい」
イチルギが静かに呟くと、その氷のように冷たく鋭い眼差しが賊達を一気に
「私は世界ギルドの元
今にもここにいる人間を皆殺しにしそうな程重苦しく恐ろしい声に、賊達は何も言い返せず
「アナタ達の文化にとやかく口を出すつもりはないわ。けど、私は世界ギルドの人間として世界の
そしてイチルギは、手刀で老婆の右腕を切り落とした。
「――――――――っ!!?」
「私は正義の
イチルギが取り上げた老婆の右腕に魔力を流し込むと、赤く発光する“
「……“燃える
老婆は
「アナタの部下達はお利口さんみたいね。さっき私が言った“人道的な処刑方法で“って意味をよく理解してる……心配はなさそうね」
イチルギは資料を賊達の先頭にいた女性に手渡す。
「私は何も見なかった……上手くやんなさい」
賊達は申し訳なさそうに資料を受け取って、イチルギに深々と頭を下げた。