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〜グリディアン神殿 役所〜
「そんな!!何かの間違いだ!!」
ジャハルは木製の受付台を
「ハザクラ達がそんなことするものか!!」
「し、しかし……報告では“明らかな犯罪行為があったため
「異議申し立てを行いたい!!手続きはどこで!?」
「あの……入国に関する異議申し立ては、基本的に大臣の承認を
「ぐっ……!?クソ……まどろっこしいことを……!!」
受付嬢はジャハルの“人道主義自己防衛軍幹部”という身分もあって、
そこへ見かねたイチルギが近づき、ジャハルの頭を軽く叩く。
「こら、
「イ、イチルギ……しかし……!!」
「言ったでしょ。信じてあげなさいって」
「………………でも」
イチルギはジャハルを受付から引き
「ごめんなさいね。こっちでなんとかやってみるわ」
「は……はい」
「ほら、行くわよジャハル」
ジャハルは後ろ髪を引かれる思いを
〜大衆酒場「酒飲み矢倉」〜
まだ夕暮れ前だと言うのに、大衆酒場は宴会の様な
グリディアン神殿自体は電子機器が一般的に流通する程度には文明があるが、地域によっては――――特に都市部から少しでも離れた場所では未だにガスや水道も
そんな経済の急成長に置いてけぼりを食らった酒場へジャハルとイチルギは足を踏み入れる。2人ともこんな怪しい店に入るのは不本意だが、ラルバ達との待ち合わせ場所に指定してしまったため、仕方なく店内を
「ええと……ラルバは……」
ジャハルが少し背伸びをして店内を見回そうとすると、イチルギが自分の後ろへ隠すようにジャハルの
「ジャハル。こっちへ」
「な、なんだ?」
イチルギはジャハルへ一言の説明もなく一歩前へ踏み出した。
その瞬間店内の全員がイチルギ達の存在に気づき、馬鹿騒ぎを止めて警戒心全開で静まり返る。
「おい……あいつ……」
「ああ、確かに……」
「後ろにいるのは……」
「どうするよ……」
「何でこんな所に……」
辺りからヒソヒソと聞こえる小声の中傷。それもその
イチルギは世界ギルドの
さらにジャハルは
そんな2人はこの酒場、
この酒場の静寂は、客達の2人へ対する
そんな近寄り難い2人に近づく人影が1人。彼女は酒場の人間全員が押し黙る中を、まるでランウェイを歩く様に優雅に髪を
「おやおや、世界ギルドのお嬢様が……こんな下町まで一体何の御用で?」
まるで初対面の様なラルバの
「ただの視察よ。アナタは?ここの酒場の関係者?」
当然のように話を合わせて初対面を
「酒場の関係者?いやいやいや……私はただの旅人だよ」
「そう。じゃあ通してもらえるかしら?」
「断る」
「
「何故?何故だって?見て分からないかい?」
ラルバは両手を大きく広げて周りで黙り込んでいる客達を示し、声を荒げて挑発する。
「誰がお前らを歓迎してるってんだい!!ああ!?あんたら見たいな上流階級が来る場所じゃないんだよここは!!どうしても私らの話が聞きたいなら
ラルバがそう言うと、周りの客達が口々に同調を示し、
「そうだそうだ!!帰れよ!!」
「うぜーから早く出てけ!!」
「お前らに話すことなんか何もねーっつの!!」
罵詈雑言の
そしてイチルギが何か言葉を発しようとした瞬間、ラルバは近くの客から銃を奪ってイチルギ目掛けて発砲した。
パァン!!!
イチルギは
「出てけ」
2人は数秒の間睨み合いを続け、先にイチルギが背を向け店を出て行った。それに続いて不服な
「うおおおおおおすげぇぇぇぇえええ!!!」
「あんた何モンだよ!!!本当にあいつら追い払いやがった!!!」
「かっけー!!!マジやっっべぇぇええええ!!!」
ラルバは客達に
「ふふふ、ラルバって
「ん?嫌いだよ。すぐにでも黙らせたいくらいだ」
「ほう……?」
「大丈夫大丈夫」
ラルバは
「どうせすぐに黙る」
〜グリディアン神殿 メインストリート〜
酒場を追い出されたイチルギとジャハルは、男性陣3人を解放する手続きを行うためグリディアン神殿の中央部を目指して歩いていた。
「な、なあイチルギ……次からああ言うことやる時はなるべく教えてくれないか?
ジャハルはげっそりした表情でイチルギの隣を歩いている。そしてイチルギも同じく疲れた様な表情で道中買ったレモネードを
「私だって事前に知りたかったわよ」
「ええっ!?あれアドリブなのか!?」
「そーよ」
「よ、よくラルバの求めてることが分かったな……ハピネスが口パクで何か言ってくれてたとかか?」
「ううん?ハピネスも知らなかったんでしょうねー。端っこでずっとニヤニヤしてたし。完っ全に観客気分で手伝いの一つもしてくれなかった――――」
「じゃあ……使奴の
「まあそんなとこ……演技するってことは付き合えってことだろうし、私が普段の業務であの酒場に行くってことは人探しくらいしかあり得ないから、その体で話進めただけ。後はラルバが好きな様に話持っていくだろうし」
「最後の銃は?あれは流石に……」
「いや、それもアドリブ。なんならアイツ当てに来てたわよ。全く……幾ら使奴でも不意打ちじゃあ当たる時もあるっつーの!」
イチルギは飲み干したレモネードの容器を怒りに任せて握り潰す。ジャハルは気の毒そうな顔でイチルギを見つめる。
「そ、それは災難だったな……あれ?でも、ラルバはヒーロー扱いされるの嫌がってなかったか?前にグルメの国で宴会に参加しなかったと聞いたんだが」
「え?ああ。今回はヒーローになるのが目的だったんじゃないかしら」
「……?なんでまた」
「多分……詳しくは分からないけど、悪党の味方のフリして潜り込んで……関係者
「は、はぁ……成る程……」
ジャハルは呆れながらも納得し、ふとあることが気になり辺りを見回す。
「どうしたの?ジャハル」
「い、いや……この国は男性差別が根強いとあるが、意外にも普通に働いている男性が多いと思ってな。話に聞くより
ジャハルの言う通り、メインストリートの出店や飲食店。
「……差別される側にも階級があるのよ」
そう言って双眼鏡を取り出してジャハルに渡す。ジャハルがイチルギに示された場所を見ると、何やらしゃがんで足元の穴からバケツを受け取っている男性の姿が見えた。
「ん?あれは何をしているんだ?」
「
「え…………何だと……!?」
ジャハルは慌ててもう一度双眼鏡を
「と、と言うことは……穴の中にも人が!?」
「大体深さは2mか3mくらいかしら。1人が中に入って溜め込まれた汚物をバケツに汲み取って、上にいる人間がそれを運び出す。まあよくある仕事よ」
「しかしっ……!!彼ら、作業服は着ていないのか!?マスクは!?」
「マスクどころか、素手に素足よ。ちょっとぐらい口に入ろうが目に入ろうが、仕事が優先」
「くっ口にっ……!?」
ジャハルは口元を押さえて
「そ、そんな……素手で汚物の掃除など……!!!」
「この辺の男達の間でもまあまあ嫌がられる仕事ね。
「まあまあ!?あの拷問がまあまあだと!?」
「まあまあよ。だって気をつけていればあんまり死にはしないし、自分たちのことを
「そんな……そんなもの仕事ではない!!
「外国人は普通あんなとこまで入ってこれないから、
イチルギは話している内容とは裏腹に、平然としたまま歩みを進める。しかしジャハルは
「イチルギはっ!!!この現状を救う力があるんじゃないのか……!?何故見て見ぬ振りが出来るんだ……!!!」
しかし、イチルギは眉一つ動かさずに
「じゃあ全員殺すわよ」
「な……なん……」
「全ては有限なの。安全に暮らせる人の席は少ししかない。そこに座れない人はドブに
「そんなはずは、互いに
「アナタの国。人道主義自己防衛軍では確か出生制限があったわよね?」
「………………ああ」
「あれはジャハルの国の長、ベルとフラムが最初に“安全に暮らせる人の席”を設定したから。だからみんな平和に暮らせていた。でもここは違う。物が足りていないのに消費する人間が増えたら奪い合いが起こるのは当然。それを無くすには……物は増えないんだから。人を減らすしかないのよ」
「……でも、きっと何か方法が……」
「あったとして、それは“全人類が一致団結”して始めてなし得る策よ。私達使奴は全人類の洗脳までは
ジャハルは何も言い返せず、
「……行くわよ。まずは身近な人から救いましょ」
しかしジャハルは小さな違和感を覚えていた。今回ばかりは、イチルギは間違ったことを言っているのではないかと――――
それは決して自分の
パーティ現在位置
メインストリート イチルギ、ジャハル
酒場 ラルバ、ハピネス、バリア
地下牢 ラデック、ハザクラ、ラプー