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〜グリディアン神殿 中央庁舎執務室〜
ロゼの
ザルバスが昔ロゼに教えた飛び道具の案。この金属製のカードはそのうちの一つであり、
ザルバスはしゃがんで地面に散らばっているカードのうち一枚を手に取り、まじまじと見つめる。
「…………ごめん。ロゼ」
そしてぽつりぽつりと言葉を
「……私について来させてごめん」
ザルバスはその場に座り込んで、片手で視界の外にあるロゼの頭を
「人生を……無駄にさせてごめん」
言葉と同時に、涙が静かに
「ロゼには、こんな姿……見せたくなかった……!!」
カードを強く握りしめ、
「ずっと……
次第に声は震え、歯をガチガチと打ち鳴らす。
「でっでも……無理だった……!!!だからせめて…………ロゼには……“あんな奴”の奴隷になって欲しくなかった……!!!」
大きく手を振りかぶると、握りしめたカードを思い切り自分の
「いや……嘘だ……!!!ロゼに期待してなかったんだ……!!!ロゼじゃ“あいつ”に勝てないって……ロゼの強さを……信じてなかった……!!!ごめん、ロゼ…………!!!ごめん…………」
涙と鼻水と
ロゼのカードが散らばる中に紛れた一枚の紙。ザルバスはロゼがカードデッキに紙片を混入させる理由が思いつかず、気になって紙を拾い上げた。そこには、“ロゼのものではない筆跡で”こう書かれていた。
命令が“殺せ”とかなら、
ザルバスは一瞬固まった後、電撃が走ったようにロゼへと駆け寄る。そしてありったけの回復魔法を
「頼む……!!!頼む………!!!ああお願いだ神様……!!!ロゼを!!!私の“妹”を助けてくださいっ!!!私の“親友”を!!!たった1人の……大切な家族なんです……!!!どんな罰でも受けます!!!どんな代償でも払いますから……!!!この子を殺さないで下さい……!!!」
ロゼの傷口が
「お願いします……!!!お願いします……!!!私から……最後の宝物を奪わないで下さい……!!!これだけは……ロゼだけは返して下さい……!!!お願いします……!!!私が、私がどんな罰でも受けますから……!!!」
「その言葉、忘れないでね」
頭上から降ってきた声――――そこにはイチルギが立っており、髪を
「イ、イチル――――」
『私の楽園を邪魔する奴はみーんな殺しなさい。アナタの役割に気づいだ奴も』
「――――っ!!!」
ザルバスは自分の意思とは無関係に動く自らの身体に、“魂の
「バリアそのまま捕まえておいてー」
「わかった」
ザルバスが振り向くと、自分よりも頭ひとつ背の低い使奴が自分に抱きついて拘束しているのが見えた。ザルバスは拘束を振り
「あー、ザルバスさん?その子タフだから、もし誰かを殺せって命令がかかってるならその子優先してくれない?こっちは邪魔が入ると蘇生に多少手間が――――あ、でも平気そうね」
イチルギがロゼの首元に手を置き高位の回復魔法を発動させる。
「よかったわね。200年前の文明じゃ、脳死後3時間くらいまでなら余裕で治せるのよ」
そう言ってイチルギがVサインをザルバスに向けると、ザルバスは涙をぼろぼろと溢して
「
「そうだね」
バリアがザルバスの
「すまないイチルギ!遅れた!」
「ああジャハル。こっちは全部終わったっぽいわよ。…………ハピネスはともかく、シスターとナハルは?」
「え?あれ?先にこっちへ来ているものだとばかり……」
すると、窓の外を見ていたバリアが遠くを指差す。
「4人ともあっちにいるみたいだよ」
ジャハルが窓から身を乗り出してバリアが指し示す方角を見るが、家屋が立ち並ぶばかりで手がかりは一つも見つけられなかった。
「んん……?どういうことだ……え?4人?」
「うん。ハピネス、シスター、ナハル、ラルバ」
後ろでイチルギが壁に八つ当たりをする音がした。
〜グリディアン神殿 市民街裏通り〜
日が当たらぬ家屋の隙間、そこには表を歩くことを許されない被差別民の男性たちが身を寄せ合って暮らしていた。ボロ布で屋根や壁を作り腐りかけの廃材を柱にした、最低限風雨を
「はっはっはー!!どけどけーい!!」
荷車を猛スピードで引き
「パカラッパカラッパカラッパカラッ!!らぁりほぅっ!!ラルバ運送は今日も安全運転ですっ!!」
「ラっラルバさん!!止ま……止まって……!!止まって下さいっ!!」
「おいっ!!止まれ馬鹿女!!」
荷車に乗せられたシスターとハピネスがラルバに止まるよう呼びかけるが、ラルバはどこ吹く風で裏路地を爆走して行く。
「止まっ止まって!!ハピネスさんが気を失ってます!!って言うか周りに迷惑がっ」
「止まれって言ってるだろ!!」
身を乗り出したナハルがラルバの角を引っ張り、無理やり停止させた。ラルバは姿勢を崩されてムッとした表情でナハルを
「何すんだおっぱい!!」
「お前も十分おっぱいだろうがっ!!」
荷車からシスターがふらつきながら身体を起こし、周囲にいるホームレスの男達へ頭を下げる。
「す、すみません皆さん……!この穴埋めは必ず致しますので、どうか今だけは先を急がせて下さい!」
女々しく非力なシスターの謝罪に、男達は顔を見合わせながらこちらを睨みつけている。恨みや
「……報復を恐れているんだ。本当は怒りたくて
ラルバは興味なさげに盛大に
「ふぁ〜あ……ねえ急いでるんだけど。シスターさん早く乗ってくれません?それともここ置いていこうか?」
「ちょ、ちょっと待ってください!確かに同行したいとは言いましたが、こんな乱暴な方法だなんて……せめて彼等に何か
「んえぇ〜……じゃあ、はい。これでいいでしょ」
ラルバが
「ばっ馬鹿!!こんなもの与えたら取り合いが起こるだろう!!
「暴徒化……いいね……それ!」
突然ニカっと笑うラルバに、ナハルは嫌な予感がして背筋を凍らせる。ラルバは気を失っているハピネスの頬をぺちぺちと叩き、無理矢理上体を起こす。
「おい!ハピネス!仕事だぞ仕事!」
「……ん……あれ……ここは……?」
今にも吐きそうなほど
「ハピネス。働き
ハピネスは
「ああ……はいはい。でもいいの?イチルギに怒られるんじゃないかい?」
「どうせ遅かれ早かれ起きることだ。なんか必要なものある?」
「いや……いい。この
「はいはーい。じゃあ後は頼んだぞ、“
ラルバはナハルとシスターを荷車へ押し込むと、ハピネスを一人残して再び
「おっおい!!ラルバ!?」
「なんじゃおっぱい!!」
「あの女1人置いていっていいのか!?あいつ戦闘できないだろ!!」
「はっはっはー心配ご無用!!うちのハピネスを舐めちゃいかんよ〜。そんなことよりシスター君の心配してあげなよ。黒幕に出会って即死でもしたら、面白すぎて私笑い死ぬかもしれない」
「ナハル……私なら大丈夫です。大丈夫ですから……」
「シスター……」
「はいどおはいどお!!そこのけそこのけラルバが通るぞっ!!」
「……さて、と」
ハピネスは未だ
「失敗したら、その時はその時だ」