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「この世に来だらね、まず”神の子“に会わなぎゃなんね」
「この世に来たら……。産まれたらって意味か?」
「んだ。急がねぇと、みんな死んじまう」
「会わなかっただけで?」
「この世に来る
「お祓いは具体的に何をするんだ?」
「お祓いか? お祓いは、“真ん中“でやるんだぁ」
「真ん中……って、何の?」
「真ん中は真ん中だぁ。世界の始まり」
「私達、みんなそっから来だ。この”神の庭“に」
〜神の庭 芝土で覆われた小屋〜
拙い言葉でスファロはこの世界の仕組みを語った。人間は神によってこの世に生まれ、神の子によって生存の権利を得る。神の子の一族の命令こそが生きる意味の全てであり、人間の存在する理由だと。
そして、酷く
「ラデック達は……、どっから来だ?」
「俺達か? 俺達は……森の向こう、かな」
「森の、向こう? 森に向ごうなんかねぇ。嘘言ったでしょ」
「森に向こうがない? あ、そうか」
ラデックは潜ってきた結界のことを思い出す。無意識のうちに境界から遠ざかる魔法は、もし内側から出ようとしたならば無意識に進路は内側へと向く。この結界の中にいる人間達にとって、“森の外”という概念は存在しないのだと。スファロは
「この”毛皮“も……私、見だごとねぇ……。神の子も、こんなんは持っでながった」
スファロはラデックの服を引っ張って、自分の着ている毛皮と見比べるように眺める。その指先の
「そう言えば! 私達お昼から何も食べていませんでしたね! そろそろ晩御飯にしませんか?」
スファロは“ご飯”という言葉に反応してハッと顔を上げる。
「ご、ご飯……?」
「はい。スファロさんも一緒に食べましょう!」
「いいの!? ほんとに!?」
「勿論です! スファロさんは何がお好きなんですか?」
「わ、私……私! き、きのみが好きだ! あの、甘くって、プチっとしたの! お父さんが昔、よく取ってきてくれたんだぁ」
「木の実ですか? 何かありましたっけ……。あ、私
「俺は……えっと、メモメモ……
「南瓜多いですね」
「押し売りを断りきれなくてな……。でも主食にもなるらしいし、無駄にはならないだろう。残念ながら甘くもプチっともしていないが」
「じゃあ今晩は南瓜とトマトでスープでも作りましょうか! 葡萄はデザートにしましょう!」
ラデックとゾウラが
〜神の庭 早朝の
翌朝、ラデックとゾウラはスファロを起こさないようにそっと小屋を出た。外へ出ると、スファロの父親と思われる昨日の男がぐったりとしたまま地面に寝転がっていた。夜の厳しい冷え込みを耐えたとは思えないほど血色は良かったが、お世辞にも健康とは言い難い
2人が近くから
「遅いぞ寝坊助」
ラルバはニヤニヤしながら機嫌が良さそうに悪態をつく。そんな上機嫌なラルバとは対照的に気鬱そうなイチルギ達の姿は、昨晩の尋問の悶着を容易に想像させた。ラルバはこの冷え切った空気の中、鼻歌を歌いながら昨晩得た情報をラデック達と共有する。
「――――で、この国は神の庭って呼ばれてんだって。ウケるよね」
「俺達が聞いたのとそんなに変わらないな。詳しい内容は聞いていないのか?」
「それがさあ、そういうの無いらしいんだよねー。
「ふむ……まあ隔離されてまだ200年だ。作意のない宗教の始まりなど、そんなものだろう」
「でもさあ」
「どうした?」
「最初の最初は……説明つかないよね」
ラルバが低い声で呟くと、話を聞いていたイチルギが深く
「今の所の想定は、旧文明の大戦争の時にパルキオンテッド教会の
ラデックが顎に手を当てながら首を捻る。
「結界が今も張られていることか?」
「ええ……。さっき少しだけ集落を見てきたけど、まるで滅びる直前の原始人だわ。この辺は平地で岩もないし、岩盤は硬いから穴も
「この結界を、子孫の誰かが維持しているとか?」
「あり得ないわね。“ヘングラスの檻”は編み出されたばかりのA級魔法。取得には軍幹部、総合無線通信士1級、
「……俺は魔導炉主任技術者と自動車免許しかない」
「そうでなくともこのレベルの高位魔法。魔導学オリンピックの金メダリストだってそうそう出来やしないわよ」
「俺が本気出して頑張ったら出来ると思うか?」
「ラデックは本気出さないから出来ないわね」
「……イチルギに面と向かって
「じゃあこれから頑張んなさいな」
「頑張ってるのに……」
イチルギが
「はいはい〜。お喋りはその辺にしておいて、チーム分けしよっか! ラルバちゃん
唐突に出された質問に、“結界ぶっ壊し隊”の長を任されたカガチが憤怒の形相でラルバに詰め寄る。
「おい、勝手にクソみたいな計画を立てるな」
「えー? 嫌?」
「殺すぞ」
「だってカガチんはゾウラと一緒にいたいんでしょ? ゾウラん“とっちめ隊”に入れていいわけ?」
「我々はその辺で待機している。お前らだけで勝手にやっていろ」
「あとねー。多分ルギルギは“ぶっ壊し隊”の方に行くと思うけど、なんか
「殺すぞ」
「べろべろべぁー」
ラルバに殴りかかったカガチをゾウラがすんでの所で止め、ラルバの相手をしたくない人道的なメンバーの沈黙によりチーム分けが行われることになった。
相談の結果、神の子の襲撃を目的とした“神の子ボコボコとっちめ隊”には、ラルバ、ラデック、ラプー、バリア、イチルギ、ハピネスの6名。ヘングラスの檻の解除及び実態の調査を目的とした“結界ぶっ壊し隊”には、カガチ、ゾウラ、ハザクラ、ジャハル、シスター、ナハルの6名が配置された。
そして一行は二手に分かれ、ラルバ達はスファロの家に続く獣道から集落へ、カガチ達は姿を隠して遠回りをして教会の方へと進み始めた。
ラデックは獣道を歩きながら先を歩くラルバに問いかける。
「そう言えば、昨晩言っていた“イイカンジにする魔法”とやらは出来たのか?」
「ん? ああ、バッチリ!! 使奴に対する外見的違和感は全部無効化できてるよ。言わなきゃ分かんないだろうから、見た目のことは言及しないでね」
「そんな簡単に組めるのか……」
「まあ使奴がこれだけ居ればね。てか魔法使えない人間を数日
「そうか……。しかし、イチルギがこっちの班に来るのは意外だったな」
ラデックが振り向きながらイチルギの顔を見ると、彼女はバツが悪そうに目を背けた。
「別に私、加担するなんて言ってないわ。見えないところで聞こえないフリするだけよ」
「それもある意味加担と言えるんじゃないのか? 普段のハピネスとそんなに変わらないなだろう」
「気持ちの問題」
「気持ちの問題か?」
イチルギは一瞬だけラルバと目を合わせると、そのまま返事をしなくなった。するとその後ろからハピネスがイチルギの服の
「なによハピネス。おんぶならしないわよ」
「え」
ハピネスは裾を掴んだまま立ち止まり、まるで世界の終わりのような表情でイチルギを見つめる。イチルギは
「……はぁ〜。これっきりよ? もう」
「いやあ優しいなあイチルギさん。よっ。大統領!」
「やめてよ縁起でもない」
イチルギの背中で上機嫌にうたた寝を始めるハピネス。しかし、その
「…………実を言うと。君がこっちに来てくれて少しだけ安心したよ」
イチルギは何かを警戒するようなハピネスの態度に違和感を覚え、他の連中に悟られないよう反応をしなかった。ハピネスはイチルギの考えを察し、顔を伏せたまま続ける。
「でも、いずれ分かることではある……気に病まないでくれ
今にも消えてしまいそうなか細い震えた声で、ハピネスは最後に少しだけ呟く。
「……私の
「この不運は、君達の仕業かもしれない」