途中からフォーマットや誤字脱字ルビ振りが修正されていないことが増えますが、現在修正中です。しばらくお待ちください。
〜神の庭 パルキオンテッド教会前〜
「いやぁぁああっ!!!」
「暴れるなこの馬鹿!!」
「
「神様の名前を
集落を一望できる教会正面の広場。地面に描かれた
「お前らぁ!! 注目〜っ!!」
神の子の代表である男が角笛を力一杯に吹くと、その甲高い音に集落中の人間が教会の前へと集まってきた。神の子の代表は気味の悪い笑みを浮かべると、腰につけた袋から一欠片の石を取り出して掲げてみせた。
「これからぁ!! この嘘吐き女の“お
そう言って神の子の代表が掲げた石は、一見何の変哲もないただのコンクリート片に見えた。しかし、石の周囲には濃い波導が水に溶ける血のように流れ出しており、その異様さは魔力を持たない者にも容易に感じ取れた。
その様子を、教会に侵入しようと姿を隠していたハザクラ達も見ていた。
「あれは何でしょう?」
ゾウラが一切他意の無い純粋な疑問を呟くと、カガチが淡々と説明を始める。
「この
「でも“お祓い”って言ってましたよ? あ、始まるみたいですね」
神の子達は石を細かく砕いてラルバに飲ませ、服を剥ごうと強引に引っ張り始めた。
「歳を食っただけの
「寂しいですね」
「愚人の末路など、そんなものですよ。さあ、先を急ぎましょう。これ以上見ていて良いことなどありません」
カガチがゾウラの手を引いて教会へと入っていく。ハザクラ達もそれに続きその場から離れた。その背後からは、
「お前ら見でおげぇ!? 神の名前を
「いやぁぁぁあああっ!!!」
代表の男が、ラルバの服を強引に脱がして公衆の面前に突きつける。ラルバは身を
「こ、こんなこと、神は望んでいませんっ!! まだ間に合います!! どうかこんな酷いことやめて下さいっ!!」
「まだ言うかぁこの馬鹿!! 神様の言葉聞げるのは、俺達神の子だけだぁ!!」
「そうだ!! 女なんがに神様の声は聞げね!!」
「本当です!! 信じて下さい!!」
「うるせぇこの馬鹿ぁ!! 神様は、“お前が嘘言ってる”って言ってんだぁ!!」
神の子達はラルバの言葉など意にも介さない。代表の男は自身の着ていた毛皮を脱ぎ捨て、“お祓い”の体勢に入った。数人がかりでラルバを押さえつけ、腰を持ち上げて強引に迎え入れる姿勢をとらせた。そして、代表の男が脅すようにラルバの背後から語りかける。
「よく聞け馬鹿ぁ。もし本当に神様がお前の味方なら、なんでお前はこんな目に遭っでる? 何で神様は助げでぐんねんだ? それは、お前が嘘を言ってるか。それか、神様がこの儀式を、認めで下さってるってこどなんじゃねぇのか?」
「そ、そんなこと……」
「俺達のやってるこどが間違いなら、きっと誰がお前を助げでぐれる。全ては、神様の言う通りになるっ!!」
代表の男の言葉に、神の子達は「そうだそうだ」と頷いている。それどころか、この儀式を見守る集落の男達でさえ、誰一人としてラルバを助けようとはしなかった。皆、神の子には酷い生活を強いられてはいるものの、神の子の言葉は神の意志そのものであると信じて疑わなかった。それ故に、今この場にラルバの味方はおらず、それどことか儀式を見られることに喜びを覚えている者さえいた。
偶然弱者に生まれた者。偶然強者に生まれた者。学問が力を失い、人間最大の武器が意味を成さなくなった国。そこには、ただただ強者にとって都合のいい道徳のみが健やかに育まれていた。
代表の男はラルバの腰に手を回し、そして慣れた手つきで自らのモノを
「やめて下さい!! 誰か!! 誰か助けてっ!!!」
しかしその声は誰にも届かず、代表の男は
「神のぉぉぉぉおおお!! 名の下にぃぃぃぃいいいいっ!!!」
そして、勢いよく
「ん……?」
代表の男が
「なんっ…………」
「うぎゃああああああっ!!!」
「ひぃぃいっあああっ!!」
その虫人形を押さえつけていた他の神の子達も現実に気付き、大慌てで飛び退いて転げ回る。肝心の代表の男は、己のモノに虫が噛み付いた痛みと
「痛ででででででででぇっ!!! 油っ!! 油持っでごいぃぃっ!!!」
「あーっはっはっはっは!! だから言っただろう!! “神はこんなこと望んでいない”と!!」
その場にいた全員が声の方を見上げると、そこには浮遊魔法で上空に浮かぶラルバの姿があった。その姿は背負った太陽の輝きも相まって、まるで神が降臨しているかのような神々しさがあった。そして何より、ラルバの姿を目撃した者は皆自らの目を疑った。
たった今ラルバが解いた魔法。昨晩編み出された使奴の特徴を認識させなくする魔法によって、ついさっきまで気にならなかった彼女の真っ白な肌の色。額を覆う真っ黒な
「か、神……様?」
「神様だ……」
「神様っ……神様ぁっ!!!」
「神様だぁーっ!!!」
呆然とする神の子達と、神の降臨に湧き上がる男達。その雄叫びは集落中に響き渡り、家にいた女達も何事かと飛び出してきた。
ラルバがゆっくりと地面に降り立つと、腰を抜かしている神の子達以外の人間は皆頭を地面につけ
「おい、お前」
「はっ。ははぁっ……!!」
ラルバの透き通るような声に、代表の男は情けない声で返事をする。
「今までお前達がしてきたこと、全て見ていたぞ」
勿論
「しかし、謝ることはない。お前のしたことは正しい」
代表の男は驚きのあまり顔を上げる。代表の男だけではなく、他の神の子や、天罰を期待していた集落の者達も顔を上げた。
「弱い者は、強い者に逆らえない。強い者の言うことは絶対。私も同じ考えだ。持っている力を使うのに、力のない奴の言うことなんか聞く必要ない。その通りだ。弱く生まれた奴が悪い。強く生まれた者の言うことを聞くのが当然。そうだろう?」
「だから、私もお前らを
そう言ってラルバは勢い良く両手を打ち鳴らした。すると、集落を囲む森から無数の虫が湧き始め、凄まじい勢いで神の子達に群がった。奇怪で悍ましい毒虫の群れに、神の子達はのたうち回って悲鳴をあげる。地獄のような光景に、集落の人間は抱き合って身を寄せ合い怯えるが、ラルバは大きく高笑いをしながら演説を続ける。
「強い者が弱い者を
降臨した神の笑い声が集落中に響き渡る。神に仕えていた神の子達が、神の名の下に