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〜ピガット遺跡 ピガット村〜
「罪人が逃げたぞー!!!」
「誰かそいつを捕まえろー!!!」
ラルバが投獄された翌日。ピガット村は朝から大騒ぎになっていた。使奴が大人しく投獄されたことに唯ならぬ違和感を覚えていた連中は少なくないが、まさか翌日に大脱走を図るとは誰一人として夢にも思ってはいなかった。即座に武装した警備隊が大勢出動したが、屋根から屋根を曲芸師のように飛び回るラルバに
文明の進んだ
「どうしたどうしたぁ! ほら、もうちょいで追いつくよ? 頑張れ頑張れ!」
「思ったより体力ないのな。もうちょい騒ぎになってくれないと魔王もイッチーも呼べないじゃないの……ん?」
亡者のように
「あのぉ……その罪人。俺が捕まえちゃってもいいんですかね?」
冒険者のような出で立ちの青年は、黒く長い前髪が被った目で眠たそうに辺りを見回し、徒手空拳のままラルバの方へ歩み寄る。その余りにも相手を軽んじた態度に、警備隊の長であろう女性が兜越しに彼を睨みつけた。
「はぁっ……はぁっ……!! ガ、ガキは引っ込んでいろっ……!! お前なんぞっ、がっ……使奴を相手になど……」
「あ。俺一応、魔王討伐隊の隊長です」
「……はっ?」
青年が懐から美しい装飾が施された紋章を取り出す。
「訓練とか
「なっ……なんだと……!?」
「まあ、それでも貴方達よりかはマトモに働けるとは思いますけど」
そして青年は面食らっている警備隊の長の真横を素通りし、屋根の上にいるラルバを見上げる。そして手を前方に突き出し魔法を発動して、中空から
「罪人さん。あ、えーっと……お名前は?」
「……ラルバ」
「ラルバさん。初めまして。俺の名前は”ギリウス・リギルウェリウス”。取り敢えず、大人しく牢屋に戻ってもらって良いですかね? ……じゃないと、ちょっと痛い目みることになりますけど」
ギリウスは依然として気怠そうにしながら剣の
「やれるもんならやってみろ! 超最強の必殺奥義見せちゃるよ!」
「はぁ……しょうがないか。町が壊れると周りが
ギリウスは愚痴を言い終わるのと同時に地面を踏み割り、猛スピードでラルバに接近。炎魔法を
「は――――えっ!?」
「フォー……ヒョアッファーッ!!」
そして、ラルバは再び態とらしく豪快に構えを取ってから意味のない奇声を上げた。全裸のギリウスは慌てて局部を破けた衣服で隠し
「……お前、
「え……は?」
「魔力量は確かに多いが……、ちょっぴり優秀なだけの大器晩成型だな。子供の頃に弱さを理由に
「ちっ違っ……! 別に余裕ぶってなんか……!」
「ふぅーん? じゃあ訓練殆どしてないとか前代未聞の特例だとか言わなくていいじゃん。褒めてもらいたかったんでしょ?「うわー!すげー!」って」
「そんなこと思ってない!!」
「でもってドヤ顔したかったんでしょ。「え? なに? これってそんなに凄いことなのー?」って。使奴相手に斜に構えちゃったりしてさー。そういうのは大人になると恥ずかしいから義務教育と一緒に卒業しようね。あれ? ピガット村って義務教育ある? あるよね?」
ラルバの悪態にギリウスは顔を真っ赤にしながら目に涙を溜め、その握り締めた拳に魔力を集中させる。
「うっうるせぇ!!!」
ギリウスが放った炎弾はラルバの眼前まで勢いよく飛んでいくが、ラルバの張った薄い防壁魔法によって難なく防がれてしまう。
「こんなんじゃ魔王討伐どころか牛だって倒せないよ。みんなに褒められて嬉しくなっちゃうのはいいけど、そろそろ現実見よっか。パパとママの言うこと聞いて、大人しく畑仕事でもしてなさい」
そう言ってラルバがギリウスに背を向けると、そこには拳を振りかぶったイチルギが構えていた。
「大人しくするのはお前だっ!!!」
「がっ――――」
ラルバは殴られた頭を押さえ、鬼の形相のイチルギを睨み返した。
「なにすんのさ!!」
「なにすんのはこっちの台詞よ!! 四肢
「そんなことしたら月落とすぞ」
そこへ少し遅れてハザクラ、ジャハル、ラデック、ハピネス、バリア、ラプーの6人も合流した。ラルバは辺りを見回してからシスター達4人がいない事をハピネスに尋ねる。
「あれ、ハピネス。シスター達は?」
「ゾウラ君と一緒に大道芸を見てるよ」
「何で連れてこないのさ。魔王討伐劇の方が絶対面白いでしょ」
「何で私があの4人を説得できると思うかな」
「それもそうだね」
ラルバが少し不満そうに鼻を鳴らすと、イチルギが溜息をついてラルバに提案をする。
「じゃあ私ここで待ってるわよ。シスター達が来たら追いかけるから」
「ほんとにぃ? 5人でこっそり私に都合の悪いこと企んだりしない?」
「しないしない」
「信用ならんな。バリア! ラプー! イっちゃん達が変なことしないか見張っておいて!」
「しないってば」
一行は再び二手に分かれ、ラルバ、ラデック、ハピネス、ハザクラ、ジャハルの5人は先に魔王を探しに行くことにした。
〜ピガット遺跡
ピガット村はピガット遺跡最東端に位置し、そこより東側の砂丘一帯を魔王の領域として畏怖していた。そこへ足を踏み行った者は必ず村へ引き戻され、魔王の怒りを買ったならば気を狂わされる禁足地。立ち入りを許されるのは、魔王の使いを出迎える時と、死者を魔王へ献上するための葬式のみ。無論、魔王を信仰していない外来人からしたら唯の砂丘であることに変わりはなく、ピガット村以外のピガット遺跡の人間が立ち入ることは往々にしてあった。
ラルバは時々バッタのように飛び跳ねながら辺りを観察し建造物を探した。しかし見渡す限りの砂丘には建造物どころか人工物らしきものも見当たらず、探究心は次第に不満へと変わっていった。
「んんん〜……。わかんない! ギブ! ギブでーす! ハピネスさん答えをどうぞ!」
「私も知らない」
「はー! 役立たず!!」
「いつもはネタバレすると怒るクセに……」
砂丘のど真ん中に大の字になって寝転がるラルバに、ハザクラが呆れて溜息を溢した。
「はぁ……。ピガット村の人達の話では、魔王は”見えない屋敷“に住んでいるそうだ。
「うんにゃ。あれは結界が魔力を弾いているが故の現象だ。気圧の変化に近い……。今回は別に魔力を弾いているわけじゃないだろうし、それで言うならハザクラの異能でどうにかならないの?「俺は見えないものも見える!」みたいな自己暗示でさ」
「さっきからやっているが何も見えない。恐らくこの”見えない屋敷“自体が嘘なのか、単純な異能の
「ああ、アンタのとこの大将にバリアが首ちょんぱされた時と一緒か」
「自分で言うのも何だが、俺の異能も相当なレベルのものだとは思っている。何せ10年以上使奴という強者を一方的に洗脳し続けてきたんだ。しかし、もし相手が100年以上生き続けてきた異能者であるならば、敵わないのも無理はない」
そう言ってハザクラが再び双眼鏡を片手に辺りを見回す。すると、その視界に1人の人影が映った。
「む、人だ」
その呟きにジャハルも双眼鏡を構える。
「ピガット遺跡の人間か?」
「いや……あれは……。”肌が青い“……?」
ハザクラの呟きに、寝転がっていたラルバは勢いよく飛び起きて目を凝らす。
「来た……”紅蓮の青鬼“だっ!」
ラルバは歯をギラリと輝かせ人影に向かって走り始めた。ハザクラとラデックは互いに顔を見合わせるが、走るのは面倒だと思いジャハルとハピネスと共に徒歩で後を追いかけた。
「こぉぉおんにちはぁぁぁぁああああああ!!!」
ラルバは青い人影に追いつき、勢いよく急停止して砂を巻き上げる。
「アンタ、魔王の使いの“紅蓮の青鬼”さん?」
真っ青な肌をした女性は黙ったまま小さく首を傾げた。紺色の長髪に、全身に
「……変態?」
「アンタも中々っスよ」
青い肌の女性がラルバの胸を指差す。そして、遠くからラデック達が近づいてくるのを
「……何よ」
「いや、別に。ウチの名前は“キザン”。こう見えて使奴っス」
「ラルバ」
「ラルバさんっスね。ラルバさんはウチに何の用事っスか?」
「クソ雑魚村にイキリ散らかしてる自称魔王がいるって聞いたからシバき倒しに来た」
「ああ、残念っスね。魔王なんていないっス」
「……そんな気はしてた」
「残念そうっスね」
「めちゃ残念……。見たところキザンちゃん悪者じゃなさそうだし……」
「まぁ、一応品行方正で通ってるんで」
「品行方正で通すなら服着たら?」
「
「まあいいや。キザンちゃんはなんでピガット村ビビらせてんの? 趣味?」
「まあ趣味っちゃ趣味なんスけど……。気になるんなら見ます? 全容」
「え? いいの?」
「いいっスよ別に。どうせバレた所で特に困りませんし。こっちっス」
キザンは中空を指差して歩き出す。ラルバはこちらへ歩いてきてるラデック達に合図をしてからキザンの後を追った。