仮面ライダーカイム   作:ほっか飯倉

2 / 4
出会い 後

 

 

二人で連れ立って買い物に出かけた祈龍とマナ。二人はまず、服屋に来ていた。

マナは、白を基調としたワンピースを手に取ると祈龍に問いかけた。

 

「これ、似合うかしら?」

「ああ、似合ってるぜ。試着してみたらどうだ?」

「試着? これ着てみてもいいの?」

「おう。サイズは問題ないだろうけどな……ああ、試着室はこっちだ」

 

祈龍はマナを試着室まで案内し、試着を促す。数分後、着替えを終えて出てきたマナは、祈龍の前でくるりと一回転した。

 

「どうかしら」

「おお……。うん、いいんじゃねえか」

「ふふ、ありがと」

 

祈龍の褒め言葉に、マナが嬉しそうに微笑む。

それからしばらく、祈龍たちは店内を見て回った。

祈龍は、マナが気に入ったという服を購入することに決めていたのだが、彼女がなかなか決断できずにいた。

そのため、最終的に祈龍が半ば強引に購入を決めたのであった。

その後も、祈龍とマナは様々な場所を見て回る。

マナが興味を示したものがあれば、祈龍はそれをすぐに購入した。

その他にもタオルや歯ブラシなどの日用品を購入した彼らは、近所の広場で一休みすることにした。ベンチに座っている二人の間に会話はなく、ただ子どもたちが楽しそうに遊ぶ声を聞いていた。そんな中、祈龍が不意に口を開いた。

「マナ」

「なに?」

「お前、その……」

「?」

 

祈龍はそこで言葉を詰まらせると、頭を掻いて言った。

 

「その、なんだ。……楽しかったか?」

 

祈龍の言葉を聞いたマナは、思わず笑みをこぼした。

 

「もちろんよ」

「そうか……それならよかったぜ」

「ええ……」

 

いつの間にか、周囲は静寂に包まれている。マナは祈龍の顔を見つめると、ゆっくりと彼に手を伸ばす。その手が祈龍の頬に触れる寸前で、彼はその意図を理解したらしく、彼女の手をそっと握った。

 

マナが目を閉じて念じると、彼女の身体が淡い光に包まれる。光が消えると同時に、マナの姿が変わった。

変身を解いたマナの姿を、祈龍がじっと見つめる。

その姿は、まさにファンタジー作品に出てくるワイバーンそのもの。

黒い鱗に覆われた体表に、長い尻尾。頭には角が生えており、胴体からは翼が生えている。

 

「これが私の本当の姿。驚いた?」

「い、いや……驚くっていうか……」

 

──綺麗だな。

祈龍は素直にそう思った。

黒く、角度によっては群青色に煌めく鱗、エメラルドグリーンに輝く瞳、優美に動く翼、勇壮な角。

それらの要素が、神秘的な雰囲気を作り出している。

 

「ところで、気づいているかしら?」

「……ああ。急に静かになった」

「多分、結界ね。人払いの」

 

祈龍は周囲を見回す。すると、彼の視界の端で何かが動いたのを確認、素早くそちらへ駆け出す。

そこには、全身を真っ黒なローブで覆われた人物が立っていた。

顔も見えないほどに深くフードを被った人物の手には、鈍く輝く短剣が握られている。

 

「おいアンタ、こんなところで何してんだ?」

 

祈龍は、目の前の人物に問いかける。

 

「……」

「おーい?」

 

祈龍はもう一度呼びかけるが、反応はない。

 

「……仕方ねえな」

 

祈龍はいつも喧嘩するときのように拳を構えると、思い切り地面を踏み込んだ。

次の瞬間、一足飛びに間合いに飛び込み―――

──ドッ!! 凄まじい音を立てて、祈龍の右ストレートが炸裂。

そのまま祈龍は相手に向かって突っ込み、相手が防御姿勢を取る前に左フックを叩き込む。

さらに祈龍は、相手の腹部に前蹴りを放ち、怯んだところに回し蹴りを放った。

祈龍の連続攻撃によって地面に倒れた男の上に馬乗りになった祈龍は、右手を振り上げる。そして顔面めがけて振り下ろそうとしたその時、視界の端に光るものを見つけ、飛び退く。直後、先程まで祈龍がいた場所に銀色の刃が突き刺さった。そのまま気づかずにいれば、脇腹に突き立っていただろうその刃は、今まで隠れていた、男と似たような姿の集団のいずれか放ったもののようだ。

 

「マジかよッ!」

 

驚愕する祈龍を尻目に男は立ち上がって短剣を構え直すと、祈龍に向けて突進してきた。

それを紙一重で回避する祈龍だったが、体勢を崩してしまう。そこに男が追撃をかけようとする、その直前に赤い火球が吹き飛ばし、男は粒子となって消える。

 

「大丈夫? 祈龍」

「マナ! 助かったぜ……」

 

祈龍は敵の方へと向き直りながらマナに礼を言う。いつの間にか人の姿に戻っていた彼女は、祈龍に顔を近づけて囁く。

 

「今からあいつらに対抗する方法を教えるわ。あいつらはゴブリン。言うとおりにすれば大したことないはず」

「マ、マナ!?」

「いいから、今から言うとおりにして」

 

そうしている間にも男……ゴブリンたちは襲いかかってくる。祈龍はそれを迎撃しながらも、言われた通りに行動した。

 

「まず、お腹の下のあたりに力を入れて。次に、左手をまっすぐ伸ばして、右掌を腰の位置に添える」

「こ、こうか?」

 

祈龍はマナの指示に従って構えをとる。すると、彼の身体が淡く光り始め、腰にベルトが出現。固定される。

 

「次は、んっ……これをベルトのバックルに填めて、グリップを右に」

 

祈龍は言われるままに行動する。彼女が少し力んでどこかから取り出した黒いメダルのようなものをバックルに差し込み、そしてグリップを握って右に引く。

 

「最後に、変身って言って」

「それ意味あるのか!?」

「気合いが入る……らしいわ!」

「了解……」

 

祈龍は深呼吸をして心を落ち着けると、改めてキーワードを口にした。

 

「変身ッ!」

 

その言葉と同時に、祈龍の身体を眩い光が包み込む。

祈龍の身体にフィットしていた服は分解され、新たな衣装へと変化していく。やがて変身が完了すると、祈龍の姿は変わっていた。

 

頭部は仮面で覆われており、龍の顔のような意匠の複眼部分は深紅。全身は黒を基調としたアンダースーツの上を群青色のプロテクターが包んでいる。両手両足にはプロテクターと同色の手甲、脚絆が装着されていた。全体的にはスタイリッシュな印象を受ける。

 

変身を終えた祈龍を見て、マナは思わず感嘆の声を上げた。

 

「……すごい。まるで伝説の英雄みたい……」

「……そんなことより、これからどうすんだよ?」

「えっと……とりあえず、私が炎で援護するわ。あなたは敵の注意を引きつけておいて」

「わかった、任せろ!」

 

祈龍は敵集団に突っ込んでいくと、最初に襲ってきたゴブリンを殴り飛ばす。さらに、別のゴブリンが振り下ろしてきた剣を左腕の手甲で受け止めると、そのまま弾き飛ばして態勢を崩したところに膝蹴りを叩き込み、怯んだところを回し蹴り。そこへ竜の姿のマナが炎弾を放って援護する。火竜の炎弾は祈龍に後ろから襲いかかるゴブリンを焼き尽くし、粒子のかたまりと帰した。

 

祈龍は素早く周囲に視線を走らせる。今のところマナを狙っている敵はいないようだ。

祈龍は周囲を警戒しつつ、再びゴブリンに向かって突撃していく。だが、突然横から飛来してきた、他のものより大振りな剣を避けきれず、祈龍の左肩に命中してしまう。

 

「ぐぁッ……!!」

「祈龍ッ!?」

「へ、平気だッ……」

 

祈龍は歯を食いしばって耐えると、長剣の男に右ストレートを放つ。しかし、祈龍の攻撃が当たる前に姿を消してしまった。

その瞬間、祈龍は背後からの殺気に気づく。祈龍は咄嵯に身を屈めると、頭上を銀閃が通過していった。

祈龍はそのまま地面を転がるようにして距離を取り、立ち上がる。

 

「あいつ……ホブゴブリン!? 気を付けて、ゴブリンとはレベルが違うわ!」

「了解! なんか武器とかないかッ?」

「えぇーと、確か……グリップを捻ってコールウェポン!」

 

祈龍は即座に言われた操作を行う。すると、目の前に漆黒の刀身を持つ長剣が突き刺さった。

祈龍は地面から剣を抜き放つと、両手で正眼に構える。

 

────剣なんて使ったことねえけど、なんとかなるか? 祈龍は心の中で呟きながら、相手の出方を窺うことにした。

相手も祈龍と同じく剣を構えたまま動かない。睨み合っていると、ホブゴブリンが口を開いた。

 

「お前、随分手下どもをボコボコにしてくれたらしいな?」

「あ? 何言ってんだてめえ。そっちが喧嘩売ってきたんだろうが」

「まあいいさ。どっちみち、お前は死ぬことになるんだからよぉ」

 

ホブゴブリンはニヤリと笑う。それを見た祈龍は、自分の中に湧き上がってくる不快感を堪えながら言葉を返す。

──こいつ、他の雑魚とは段違いだな。

祈龍がそう思った直後、ホブゴブリンの姿が消える。

祈龍は直感的に危険を感じて身を捻るが、それでも避けきれない斬撃が祈龍の身体を切り裂いた。

激しい火花が飛び散り、祈龍は吹き飛ばされる。地面に叩きつけられ、仮面の下で苦痛に顔を歪めた。

祈龍は立ち上がりながらも、先ほどまで立っていた場所を見る。そこには、既に次の攻撃動作に入っているホブゴブリンの姿があった。

祈龍は慌てて防御の姿勢を取る。間一髪敵の斬撃は防ぐことが出来たが、反撃の隙を見いだせない。マナも炎弾を放って援護してくれてはいるが、すべてが避けられてしまっている。

 

「どうした? かかってこいよ」

「チッ……なら、望み通りやってやる!」

 

祈龍はホブゴブリンに飛びかかる。それを迎え撃つように放たれた攻撃を、祈龍はギリギリのところで回避、そしてカウンターの一撃を放った。

祈龍の放った刃は、敵の首筋を斬り裂いて血の飛沫を上げる。だが、それだけだった。

祈龍はすぐに後退しようとするが、ホブゴブリンはそれよりも早く祈龍に接近し、その首を掴む。そのまま祈龍を持ち上げ、壁へと投げつけた。

 

「ぐはッ!」

 

祈龍は壁に激突する寸前に受け身を取ったものの、衝撃までは殺しきれず地面に倒れる。そこへホブゴブリンが追撃を仕掛けてきた。

祈龍はなんとか立ち上がろうとするが、ホブゴブリンの攻撃の方が速い。祈龍はガードすることも出来ず、無防備な状態で攻撃を受けるしかなかった。

祈龍は必死で打開策を考えるが、思いつかない。このままではやられてしまう。

 

祈龍は地面を蹴ってその場を離れようとするが、それを読んだかのようにホブゴブリンが祈龍の腕を掴み、引き留める。祈龍は強引に腕を振り払って脱出を試みるが、しかしホブゴブリンの力には勝てず振り払うことが出来ない。

 

──クソッ! どうすればいい!? 焦燥感を抱きながら、祈るような気持ちで祈龍は周囲を見回す。すると、そこに一つの物体を発見した。それは、ついさっき自分が落とした長剣である。

 

──あれを使えれば……よしッ!! 

祈龍はホブゴブリンの手を蹴り飛ばす。そうして逃れると、その勢いのまま武器に向かって走り出して剣を手に取り、ホブゴブリンの方を向いて構えた。

 

「頼むぜ……俺に力を貸せ!」

 

祈龍がそう言った瞬間、剣の刀身に刻まれた文字が光り輝く。

 

「え……?」

 

突然の現象に驚く祈龍だったが、今は気にしている場合ではない。祈龍はホブゴブリンを睨むと、地面を強く踏み込む。

 

「おおおッ!!」

 

祈龍は雄叫びを上げながら、ホブゴブリンに向かって突進していく。ホブゴブリンは祈龍の気迫に押されるように一瞬後ずさる。

 

「な……この俺がビビっただと……?」

「そこだぁッ!!!」

 

祈龍は剣を薙ぎ払いながら斬りかかる。その攻撃に驚いたのか、ホブゴブリンは反射的に下がって回避した。

その判断が致命的なミスとは知らずに。

祈龍が振り払った剣から火球が発射され、下がったホブゴブリンに直撃。爆発が巻き起こり、土煙が舞い上がる。

 

「グゥアァアッ!!!」

 

悲鳴のような声を上げてホブゴブリンは倒れ伏す。しかし、まだ生きているようだ。祈龍はすぐさま駆け寄ると、その顔面を思い切り蹴り飛ばした。

吹っ飛んでいくホブゴブリン。だが、それでも意識はあるようでフラつきながらも立ち上がる。

祈龍は再び剣を構えて攻撃体勢に入った。

 

ホブゴブリンは血走った目で祈龍を睨みつけると、両手を広げながら叫ぶ。

 

「調子に乗るんじゃねぇぞガキがあああッ!!!」

 

激昂する敵を注視しながら、祈龍は冷静だった。敵が何か仕掛けてくる前に決着をつけるべく、今度は火球を三連発、その後を追って駆ける。ホブゴブリンは祈龍の動きを見て慌てて動き出したが、もう遅い。火球を避けきれなかった敵の懐に入ると、そのまま剣を突き立て、後ろの木に磔にする。

 

「オオアァァァッ!」

 

殴る、殴る、殴る。渾身の力を込めて拳を叩きつけていく。

 

「グリップを三回捻ってフルチャージ! 必殺技!」

 

マナの方は雑魚を処理し終わったようで、技の出し方を教えてくれた。祈龍はそれをしっかりと聞き入れると、言われた通りにやってみる。

 

「これで終わりだッ! フルチャージッ!」

 

声と共にベルトのバックルが開放され、そこから流れるエネルギーが右脚に集中する。祈龍は一度下がって距離を取ると、助走をつけて飛び上がった。そして、空中で体をひねり、回し蹴りを放つ。

 

「でやぁぁぁぁッ!」

 

祈龍の必殺のキックがホブゴブリンの頭部に炸裂! 

 

致命の一撃を頭に受けたホブゴブリンは断末魔の悲鳴を上げることもできず、ぐったりとなったかと思うと身体中にヒビがはいる。そして蹴りの反動で飛び上がった祈龍が着地すると同時に、光の粒子となって消滅した。

 

 

 

──勝った……か? 祈龍はホッとした表情を浮かべると、変身を解除した。戦闘が終わったことで緊張の糸が切れた祈龍はその場にへたり込んでしまう。マナも同じように座り込んだ。

 

「……はぁぁ、つっかれたぜ。人生で一番苦戦したわ」

 

祈龍はため息混じりに呟く。──まあ、初めての殺し合いにしては上出来じゃねえかな。

祈龍はそう自分を納得させる。

 

「祈龍! 大丈夫!? 怪我はない!? ……ごめんなさい、あんなに追手が強いなんて……」

「おう、なんとか。でも流石に怠いわ。さっさと帰ってゆっくりしようぜ。そういや、まだぜんぜん話聞けてないしな」

 

差し出された祈龍の手を、マナはそっと掴む。

 

──この人と一緒にいると不思議と安心する。どうしてかしら……? 

マナは祈龍に引かれるように立ち上がり、二人は帰途についた。手を繋いで歩くその姿は、仲の良い兄妹のようでもあった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。