Q.恋愛脳の男は決闘で恋ができますか? 作:ウェットルver.2
これからも本作品および原作【遊戯王ARC-V】をよろしくお願いいたします。
私たちの熱い、えっと。
……正直、はずかしいけれども。
情熱的な抱擁は、この知らせで終わりを告げた。
『マルコ先生が襲われた。』
犯人は、……噂のエクシーズ使い。
あくまでも暴力ではなく、デュエルで怪我を負わせている。
ペンデュラム召喚と榊遊矢。
それらを目当てとした赤馬家の計略が、この一報で頓挫した。
榊遊矢相手に「おまえが犯人だろう?」という姿勢で遊勝塾の存亡を賭けたデュエルを挑めなくなり、マルコ先生の安否確認をしなければならなくなり、……なによりも、これは私があとで気づいたことなのだけれども、……沢渡シンゴを襲った容疑者と、マルコ先生のような重傷者を出す容疑者が別人である可能性が浮上したためだ。
片や怪我が軽傷で済み、片や面会謝絶になるほどの怪我を負い。
たまたま沢渡の言動がマシだった、マルコ先生のほうが失礼だった、相手の逆鱗に触れたのだ、と仮定するには(アイツの性格からして)無理がある。もちろん、あの沢渡の問題児っぷりは赤馬零児も把握したはず、……榊遊矢を相手に勝負を挑んだらしきアイツ自身の話からして、赤馬零児と接触はしただろう、……から、前者と後者の襲撃犯の性格は別だと想定はできる。
「……真澄。」
「なによ、遊鬼?」
そう、想定ができたはず、なのだけれども。
この時の私はマルコ先生を気にかけて、あまり冷静ではなかった。
赤馬零児と榊遊矢のデュエルは中断され、帰りがけでマルコ先生の入院を知ってから、わかってはいても平静ではいられなかった。恩師への想いが勝り、「せめてお見舞いの品を送りたい、事件の詳細を知りたい、あわよくば敵討ちがしたい」と願うほどに
むしろ、私は「決断をしたのだから、心の整理はできている」と思った。
本当にできているのであれば。
彼、蛇喰遊鬼の
「……家族のこと、考えたの?」
「どういう意味よ」
あれだけのことがあったのに。
いいや、あれだけのことをしたから、だろうか。
私の決意に難色を示す彼を見て、ふつふつと苛立ちが沸いていた。
「……君と。
真澄とおなじ気持ち、思わせるよ?」
「だから?」
大切な誰かがやられたなら、報復を考える。
どんな人間でも考えるものだ。ありふれた感情だ。
「……心配させるよ?」
「あなた、まさか『ひっこめ』と言うの?
私のパパやママが襲われるかもしれないのに?」
傷つけられるかもしれない、そう気づいたなら。
不安や懸念を現実にされてしまうより前に、犯人を捕まえてしまいたい。LDSの制服組や警察を信用したいが、いつまでも待たされて、あげく待つうちに家族が襲われるなんて考えたくもない。
「…………そう。
……………………なら、」
ちいさく息を吐いて。
遊鬼がデュエルディスクを取り出した。
「遊鬼?」
「ボクと、デュエルしろ。」
腕を構え、私を見つめている。
「どうしても復讐がしたいなら。
ちからづくで解決したいと、君が心から願うなら。
……なら、ボクに勝ってから出かけなよ。」
その言葉は。
彼からの、「光津真澄は弱い」という断言だった。
融合召喚使いである私にとって、蛇喰遊鬼の召喚する《ヴェルズ・オピオン》は最大の難敵であり、もし似たような能力を持つモンスターを相手に呼び出されれば為す術もなく負けてしまう光津真澄の弱みの象徴でもある。スタンダード・コースの塾生が《虚無魔人》*1でもアドバンス召喚してくれば、それだけで負けうる、彼に負ける理由と似た理由で負けてしまうのだ。
すなわち、蛇喰遊鬼に勝てないかぎり、おなじX召喚使いである襲撃犯にも勝てない可能性は否定できないどころか、EXデッキのカードを使わない舞網市のプロデュエリスト並みの実力者にも勝てない可能性をも示している。聞きようによっては私の弱さを理由に煽られているとしか思えないが、最後の警告であることは私にもわかっていた。
「馬鹿にしているの!?」
「……真澄。」
わかってはいたのに。
わかるべきものを、なにひとつわかっていなかった。
「私だって強くなり続けた。
遊鬼、あなたに、……おまえに勝つために!」
デュエルディスクを起動し、彼を睨みつける。
あれだけ抱きしめあった男の子へ、あれだけ自分のために尽くしてくれた想い人へ、私の気持ちをわずかでも裏切られたと思いながら。恩師への想いを分かち合ってくれると、敵討ちを手伝ってくれると気づかぬうちに強く、深く信じてしまったからこそ、彼がどういう決闘者であったのかを忘れきっていた。
「デュエル!」
「…………デュエル。」
遅れて宣言する、彼の表情は。
大切なカードを見つめて微笑む目ではなかった。
デュエルを楽しむ、ひとりの決闘者の瞳でもなく。
かといって人間への興味を失い色褪せた目、ガラス玉のような無機質な瞳でもない。出会った頃とくらべれば感情がわかりやすい瞳は今、私の知らない感情の色で染まり、見たこともない、……私に思った経験もない種類の意志という、彼らしからぬ強い光を宿して、どこか畏怖を抱かせるほどに、……輝きを放っていた。
「……力を、貸して。」
彼のつぶやき。あるいは祈り。
声をなにが聞き届けたのか。
デッキのうえが。
瞳をのぞかせるためのするどい切れ目がある、洋風の仮面のような。
ひとの顔のようで、それでいて煙に似た
【Q,恋愛脳の男は決闘で恋ができますか?】
【A,できますが、成就するとは限りません。
相手が期待した「理想の彼氏像」から離れた、あるいは「素敵なあなた像」からずれた自分の人間性を受け入れてもらうまでに、これまであなたが意識して恋路のために行った行動すべてが障害になってしまう、あなたへの先入観になってしまう場合があります。虚像をエチケットであれ演じ切る精神力を認められたとしても、あなた自身の弱さ、醜さ、おろかさをふくめた人間性にまで「かわいいひとだな……」と愛着を抱かれているかは、まったくの別の話です。種族・属性・攻撃力・守備力・カード種類などの範囲が広い『ステータスの指定』か、基本的に1枚のカードしか影響を受けない『固有の名称指定』かのちがいと同じくらいに別の話です。】
【Q,テイキトタキガンバデノレワ】
【A,ここでは人間の言葉で話してください。】
副題はライトノベル・漫画・アニメ【ブギーポップは笑わない】より。
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