ある日突然ゴムのように 作:Dの一族
悪魔の実を食した日
俺の名は
強いて何か言うことがあるとすれば、漫画とアニメが好き、ってことぐらいだろうか。
そんな俺は今、目の前にある奇妙な果実を見つめて悩んでいた。
食べるべきかどうかを。
「……どこからどう見ても、ゴムゴムの実にしか見えねぇ」
その果実の見た目は確実にあのONE PIECEに出てくるゴムゴムの実そのもの。
ONE PIECEはアニメ勢だが基本的には一から視聴済みのため、ちゃんの知識はある。
だからこそ、その果実の見た目故に食べるかどうか悩んでいた。
「もし食べたらゴム人間になったりして、な」
高校生、放課後の寮にて一人で部屋。
果実を前にして悩んでいる姿は、きっと側から見れば奇妙なのは間違いない。
だが偶然拾ったものであるため悩んでしまうのだ、好奇心と倫理観に挟まれて。
「まぁ、洗ったしいけるか……?」
一応既に果実そのものは洗ってある、軽く水で流した程度だが。
だから汚くはないはずだ、多分。
見た目が似てるだけの毒物じゃなければ大丈夫なはず。
と言うことで一度、手に持って間近で見つめてみる。
「匂いは、特にしないな……よし!」
毒があれば俺が倒れるだけ、毒がなければそれでよし。
俺は口を大きく開いてその果実に齧り付く。
しばらく咀嚼を繰り返していたがその果実から広がる味に思わず口が止まる。
そして大きな音ともに飲み込むと、果実を見つめて俺は勢いよく後ろに倒れて叫んだ。
「クッッッッッソ!! まずいッ!!!」
まずい、あまりにも不味すぎる。
なんか食っちゃいけないもの、って明確に分かるくらいまずい。
あまりにも例えようがない、今すぐ吐き出してしまいたいぐらいまずい。
「や、やべ。不味すぎて、なんか吐きそう……」
おええええ、と声に出しながら立ち上がってトイレに向かう。
が、その瞬間、ドアを勢いよく叩く音と、その向こう側から怒号が飛んできた。
「おいッ!! さっさと出てきやがれッ!」
何事か、と思って先にドアの方に向かって、外が見える穴を覗くとそこには隣の部屋のやつがいた。
ちょっと怖目の不良、あまり関わりたくないのだが、原因はなんとなくわかる。
さっきつい出してしまった大声だろう。
なんせこの寮はめちゃくちゃ壁が薄いのだ、それこそ件のお隣さんが女連れ込んで、よろしくやってる音が聞こえるぐらいには。
ちなみに、俺は一度大声をだして、そのお隣さんに怒られている、次やったら殺すとか言ってた。
「あー……はい。なんですか……?」
吐きたくなる気分を抑えつつドアを開ける。
その瞬間、拳がドアの向こうから飛んできた。
びっくりして咄嗟に顔をそらし、飛んできた拳をギリギリ避ける。
「な、何を……!?」
「言ったよな、次やったら殺すって」
「い、いやいや。本当に殺しにくるやつがいるか!?」
「うるせぇッ!! 半殺しにしてやるッ!!」
そう言ってお隣さんは拳を振りかぶった。
問題を起こすのは如何なものか、と思うも喉奥から何かが込み上げてくる。
先ほどの吐き気がさらに大きくなって、今飛び出してきそうになっていた。
俺は無理やり飲み込もうとして、拳を見ることができず。
飛んできた拳は見事な顔面に当たって、
ぐにょーんと言った感じに伸びて、奥の奥まで拳が入り込む。
だが拳は決して、俺の体を突き破ることはなかった。
それどころか伸びた顔面はまるで、ゴムのように勢いよく拳を押し戻し、お隣さんの拳はお隣さん自身の顔面に激突してぶっ倒れた。
「……え」
「が、ぁ……ぐふっ!」
鼻血を出して気絶してしまったお隣さんを見て、俺はに声言葉に詰まるる。
と言うかかなり混乱して思考が停止している。
だってなんせ、殴られたと思った全く痛くなくて、何故かお隣さんが気絶しているのだ。
びっくりするとかそんなんじゃ済まされないだろう、吐き気も治るぐらいだ。
夢かなんかか、と思ってなんとなしに頰を引っ張ってみた。
「え、え、え。ま、まさか──」
伸ばした頰はビヨーンと大きく、まるでゴムのように伸びてしまった。
驚くべきことに頰は全く痛くない。
なんと言うか、なんと言えばいいか……つまりはそう、俺は今、ゴムである。
ゴムゴムの実の──
「俺、ゴム人間になったのかよおおおおッ!!!?」