ある日突然ゴムのように 作:Dの一族
「よかったよ、お前と出会えて」
「いや、それはこっちのセリフですけど……あの、なんで走ってるんですか?」
酢靄先生と出会った後、俺らはあの場を離れて走っていた。
先生はどちらかと言うと
何処かに向かっているようで、取り敢えず付いて行っている。
味方、とは言っているが、本当にそうなのかはまだわからない。
だから、取り敢えず、だ。
(しかし先生……これは……)
先生の姿を見て、改めて俺はとんでもないことに巻き込まれていると確信する。
何故って、先生の下半身はモクモクと煙に変化して、それで移動しているのだ。
見たことある、というレベルではない。
俺はそれを知っている。
「先生も、能力者ですか。
「まぁな、つっても俺が能力者になったのは結構前なんだが……」
「ヘビースモーカーな先生にはぴったりですね」
先生の食べた悪魔の実、
その名の通り自身の体を煙に変化させることが可能。
しかも俺の
武装色でもない限りは無敵と言えるだろう……流石にないよな、この世界に。
(ない、と願いたい……)
ゴムの体を持つ俺は密かにそんな願いをしつつ、先生に気になった事を聞く。
「ところで、あの。なんで俺たち、走ってるんですか?」
「そりゃだってお前さんよ……後ろ見てみろ」
そう言われて俺が軽く振り向くと、白い制服を着た人たちが様々な武器を手に、声を荒げながらこっちに向かってきていたのだ。
明らかに学校で見ていい光景ではない。
「え、え、え。なにあれ」
俺は困惑で素っ頓狂な声を上げながら、前を向いて全力で走り出す。
と言うかいつのまにか俺たちは追われていたのか。
「大方、ザルフェンを取り返しに来たのかもな」
「え? ザルフェンさん!?」
「ああ、連れ去られそうになってたからな。取り返したのさ。今は仲間のところにいるはず……っと!」
そこまで言って後ろから飛んできた一発の銃弾が先生の体をすり抜け、俺の体に突き刺さって逆に跳ね返って奴らの体に突き刺さる。
当然ながら銃はあの世界観のものではない、現実世界にある現代の銃だ。
一般市民に向けていいものではないのは確実だろう。
仲間がどうとか気になるところではあるが、もはやそれどころではない。
「まじかよ……」
「まぁお互い効かねェからな。そこはよかった」
「よかないですけど!!? あんなもの向けてくるって、相当なんですが!?」
「……ま、なんとかなんだろ。猿田、まずは一階の保健室に向かえ。目印は……狐だッ!」
そう言うと先生は急ブレーキで振り返り、煙の体で敵の軍団に突っ込んでいった。
俺は思わず一瞬足を止めて振り返るが、煙の先生に普通の攻撃が効くはずもなく、無双状態だった。
もはや敵の方が哀れになる程、ボッコボコに殴っている。
一先ず大丈夫だろう、と考えて再度走り出す、のだが。
(っ! マジか。学校中敵だらけかよ!?)
突然、奥の廊下の曲がり角から数人の白い制服を着た人が姿を現わす。
手には武器を持っていて、俺を見るなり声を荒げながら走り出してきた。
俺は右腕を大きく後ろに伸ばし、声を上げながら一発解き放つ。
「『ゴムゴムの
一番先頭を走るやつの顔面に俺の拳が突き刺さる。
後ろに飛ばした反動を利用した一撃、結構いい感じに入ったようで後ろに吹っ飛んでいった。
一緒に走ってきていた奴らがその一撃に戸惑い、足を止めたのを見て、すかさず左手で『
威力は低いがもう一人を、少し後ろに後退りさせることに成功。
その光景に周りの奴ら一瞬たじろいだ。
そこで俺は奴らの手前にある階段に向かって走り降りて行く。
後ろからついてきている音がするが、それすら無視して次から次へと降りて行く。
あっという間に一階、ここから保健室までまだ少し距離はある。
(あいつら……しつこいなっ!)
背後から迫る音を聞きながら、俺は速度を緩めず先へ進む。
先生曰く、目印は狐、と言っていた。
「……狐、つったってなぁっ……!」
そんなもの、学校にはいない。
と言うかいたら、それはそれでこっちが困る。
だがこんな状況で流石に冗談は言わないだろう。
ならば俺は走って狐を探して保健室に向かうまでだ。
「狐ー!! どこにいるんだーっ!!」
走りながら廊下中に響く声を上げると、ふとどこからか鳴き声のようなものが聞こえた。
一瞬聞き間違えかと思ったが、その直後にまたもや鳴き声が聞こえ、幻聴じゃないことを知る。
「え、まさかマジで狐が!?」
希望を抱いて声のした方、つまり真っ直ぐ前の方を見た。
だがそこにいたのは海軍の制服を着て二本の刀を持つ男。
俺は咄嗟に拳を構えると同時に、奴がこっちに向かって走り出してきた。
「ぐッ……!」
「よし! 捕まえろっ!!」
後ろでそんな声が聞こえ、俺は奴に向けて『
だが奴は軽い身のこなしで俺の拳を避けると、そのまま
困惑と共に振り返ると、俺の後ろで同じように困惑していた海軍の奴らが、刀の平たいところで殴られて気絶していた。
俺も思わず足を止めてから、二本の刀を持つ男を見た。
「お前は、一体……?」
「ふっ……ふふっ……コンコーン!!」
小さく笑い声と変な鳴き声を上げて、ピョーンと軽い動きで飛び上がって煙が出たかと思うと、中から一匹の狐が姿を現した。
しかもただの狐ではない、九つの尾っぽを持つ狐だ。
俺はその能力に、見覚えがあった。
「イヌイヌの実、幻獣種……モデル『九尾の狐』!!」
「いぇい! 大正解!!」
変なポーズを取りながら、狐は人型へと戻って行く。
この学校の中でも珍しい金色の髪を持つ、一人の少女の姿へと。
確かハーフで、名前は……。
「……
「そそ! 狐火
「……ああ。猿田 類。俺たちの隣のクラスのやつだ」
後ろから突然、新しい声が聞こえて振り返る。
またもや新しい人間が一人、学校の制服を着た男だ。
こいつも知っている、狐火さんの幼馴染だとか何とかで、名前は確か。
「
「ああ。出雲
そんな彼の言葉に、二人と握手を交わして保健室へと急いで向かっていった。