ある日突然ゴムのように   作:Dの一族

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保健室

「なぁ、お前ら。俺のことは……聞いてるんだよな?」

「まぁね。私の能力があればいくらでも潜入できちゃうから!」

「ゴムゴムの実……実に有用な能力だ」

 

 狐火 香里奈、彼女の持つ能力、イヌイヌの実【幻獣種】『モデル:九尾の狐』。

 妖怪などで有名な、あの九尾の狐に変身する能力だ。

 ワンピースじゃ黒髭の部下の一人が有していた。

 人の顔だけじゃなく、服も変身できるという点ではマネマネの実の上位互換と言えるだろう。

 まぁ、種類からして違うんだけど。

 

「すごいよね! びよーんって伸びて殴っちゃうんだもん!」

「いや、俺的には刀振ってる方が驚きなんだけど……」

 

 そう言って俺は、狐火さんの持つ二本の刀に目をやる。

 明らか様に女子高生が持つには異常な物体。

 結構重そうなのだが、それを軽々と持っている。

 

「えー、そう? 女子高生って言ったら刀じゃない?」

「すまんな。こいつはその……知識の偏りが酷くてな」

 

 出雲が呆れた物言いで謎のフォローを入れるが明らか様にフォローになっていない。

 結局刀を持っている理由の答えは出ず仕舞いで、ずっと走り続けて保健室の前に着く。

 出雲と俺は周囲を見渡し、狐火さんは人獣型になって耳を立てドアにぴったりとくっつける。

 

(確か狐って聴力がすごいんだったか……幻獣種にも適応されてんのかな)

 

 狐は犬などよりも聴覚に優れているらしい。

 ほんのちょっとの物音でも的確に聞き取るとかなんとか。

 少しした後、狐火さんは親指を立てる。

 

「大丈夫、呼吸音が一つ。ザルフェンちゃん以外いないみたいだよ!」

「……そうか。ならばようやく休めそうだ」

 

 出雲先導で俺たちは急いで保健室に入る。

 中はカーテンが完全に閉まりきっており、鍵もかかって外から入れないようになっている。

 ドアも入ると同時に即座に締めてしまった。

 この感じならば変な物音を立てない限りはバレることもないだろう。

 

 俺はやっと安全に来たことに対する安心感にホッとして、保健室内のソファに座り込む。

 周囲に視線やってみると、ベッドの上ではザルフェンさんがすやすやと寝ていた。

 顔色もそう悪くはなさそうだ。

 

 ザルフェンさんのことを確認した俺は、狐火さんと出雲に目線を移す。

 

「そう言えば、出雲も能力者……なんだよな? ここ潜り抜けてきたんだし」

「む? ……いや、俺は違う。能力者ではない」

「え」

「だが……能力者の一人ぐらいならば倒せる」

 

 なんの誇張表現かと思ったが、どうにもその目つきがガチっぽくてなにも言えなかった。

 それに、どちらにしろそれが本当ならば頼もしいのは間違いないだろう。

 他に聞くことは……と、考えていたところで、通気口から音が響く。

 何事かと思っていると、通気口から煙になった先生が顔を出した。

 

「よっ。その様子だと大丈夫そうだな」

「おー、先生! 無事だったんだね!」

「あたりめェだ、自然(ロギア)系を舐めんなよ?」

 

 ニヤリと笑って通気口から煙が這い出て、俺たちの前に着地する。

 そして体を実体化させてから、ザルフェンさんの顔を見た。

 

「……よし、体調は良さそうだな。そんじゃあまぁ……猿田。色々聞きてェことがあるだろうが、取り敢えず簡単なことだけ話しておく」

「簡単なこと?」

「ああそうだ。まず俺たちは結構前から能力者だった。狐火もな。出雲はちと違うが……まぁ、家が武術やってるかなんかで戦えるらしい」

「そんなざっくりとした説明で……」

「詳しくは奴から聞け。それよりもだ……世界海軍って奴らについてだが──」

 

 何か言おうとしていたところでそれを遮るように突然、狐火さんが動物(ゾオン)系の脚力で寝ているザルフェンさんの前に飛び出す。

 両手には刀を握って、何かを防ぐような構えを取っていた。

 それとほぼ同時のこと、突然部屋の窓が一斉に割れた。

 あまりの突然のことに狐火さん以外は身動き一つ取れないでいる。

 

(な、なんで割れて……いや、違う。今、なにかが()()()()!)

 

 まるで風を裂くような音、また能力者かと思っていたが、その予想はいともたやすく裏切られることとなる。

 突然何かの音ともに狐火さんが吹き飛ばされたかと思った瞬間、目の前に何かの巨体が腕にザルフェンさんを抱えて立っていた。

 いや、立っていたというよりも、()()()()()、という方が正しいか。

 

「なっ……!」

 

 俺は咄嗟に攻撃しなくてはと言う思考が前に来て、今出せる全力で『(ピストル)』を放った。

 だがその全力の『(ピストル)』は巨体に当たったものの、巨体は微動だにせず指をこちらに向け呟いた。

 

「『指銃(シガン)』」

 

 そんな言葉とともに俺は、壁際まで吹っ飛ばされたのだった。

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