ある日突然ゴムのように 作:Dの一族
(なにが……起きた……?)
今、たった一本の指によって、俺は瓦礫の中にいた。
意識は多少混濁していて、なにが起きたのかはっきり理解できていない。
ただ一つ、わかることはある。
俺は誰かの手によって殺されかけた、ってことだ。
(『
『
俺のようなゴムの体にも効いてしまう。
純粋に身体能力が向上する
「ぐぐ、ぐっ……いてェ……」
俺は体を起こして周囲を見渡す、今いる場所はどうやら廊下のようで。
前の方を見れば壁には大きな穴が開いていた。
どうやら吹っ飛ばされた後、俺はそのまま壁を突き破って廊下に出てきたらしい。
どんだけ高い威力で『
「ああ、クソ……みんなはどこ行った……?」
瓦礫の山から出てボロボロになった保健室に入ってみんなの姿を探す。
しかし誰の姿も影も見当たらない。
そんな状況だから当然ながら、ザルフェンさんもベッドから姿を消していた。
まぁ、意識が混濁する寸前に見た景色がザルフェンさんを抱えた何かの構えだから、当然ちゃ当然なのだが。
俺はフラフラとした足取りで保健室に入る。
窓のある壁は完全に破壊、もはや吹き抜けみたいになっている。
そもそも部屋中凹んだり破壊されたりで原型をとどめていなかった。
「……なんだ、生きてたのか」
今にも手放しそうな意識の中、聞き覚えのない声が響く。
保健室の中央にそいつはザルフェンさんを抱えて立っていた。
黒いコートに身を包み、顔には大きな抉れたような傷。
いかにも、って感じの男がそこにいた。
ただ身長は普通であるため、先ほどの巨体とは違うのかもしれないが。
「なんだ……テメェ……」
「死に損ない相手に答える必要性は感じねェよ。『
その言葉を放つと同時に奴の姿が消える。
その仕組みは理解している、が捉えることは不可能。
そもそも実現する奴がいたこと自体驚きだろう。
いや、もしかしたら可能かもしれない。
奴が『能力者』であるならば。
「察しはいいみてェだなァ?」
後ろから声が聞こえ、一瞬の後振り返る。
奴はそこにいた、のだが。
体は大きく膨れ上がり、それは先ほど見た巨体と完全に一致している。
ただそれだけではなく、身体中から毛が生えており、その開いた口にはなんでも噛み砕いしてしまいそうは歯が付いていた。
「イヌイヌの実『モデル:ウルフ』ッ!!」
「正解だ……ご褒美くれてやらァッ!! 『
上から足を振り下ろす同時に、その爪から鎌風が放たれる。
普通の嵐脚とは違い、一発ではなくその攻撃は合計五発。
五発の鎌風が一斉に撃ち放たれていた。
咄嗟に避けようと動くが、その速度はあまりにも異常。
音が出る前にはもう俺の体に全て直撃していた。
「ぐ、オオオォッ!!?」
体に刻まれた五つの切り傷とともに、俺は壁際まで吹き飛ばされる。
斬撃に対してゴムの体など何の意味も持たない。
「がふっ……!! て、めぇ……!」
俺は少し凹んだ壁にもたれかかりながら立ち上がる。
「おう、まだ起きるかよ」
「バカいえ……こっちゃ、死にかけだぞ……」
「まぁ、俺の爪で突いた『
痛すぎるぞ、と言いたいところだが言葉が出てこないほどに限界が来ている。
こうして立てているのもやっとと言うところか。
反撃を与えたいが……『
『
兎にも角にも、今の俺にはもう時間がない。
「『ゴムゴムのォ──』」
「抵抗か? いいぜェ、生身で受けてやらァッ!」
そう言って奴は変身を解いて人間形態に戻る。
『
だが連続攻撃を撃ちたい、と思ったところで俺は『
エネル相手に攻撃の場所を悟られないために跳弾を利用した技だ。
アレの似たようなことなら、できる。
「『
俺は右腕を後ろに引き抜くような構えから、上に向けてそのまま下に叩きつけた。
保健室と言う狭い部屋で放つ跳弾を利用した技。
あっちこっちに向かって拳が飛び跳ねる。
好き勝手に伸びて行くものだから、俺にだって制御はできない。
「ほォ。跳弾か……だがなァ……あー、こりゃ受ける気にもならねェ」
奴は片足をすっと上げる、その瞬間俺の拳がその片足に激突して、そして──止まった。
俺の元に拳が戻ってくると同時に、俺は壁にもたれかかったまま床に座り込む。
もう体が限界点に達していた。
「……マジかよ」
「まぁ、これからに期待ってことで及第点だなァ」
と言うと奴は懐からスマホを取り出し、誰かに連絡をかける。
「おォ、俺だ。あァ、回収完了。他の奴らも捕まえた。後はゴム野郎だけだ。つーわけで、証拠隠滅頼むわァ。ジェスター」
スマホをしまうとほぼ同時に下の方で爆発が起きる。
奴の言った証拠隠滅とやらが行われているらしい。
まさかとは思うが、この学校ごと消すつもりなのだろうか。
「さて、テメェも一緒に来てもらうぞ。その能力は回収しねェといけないんでなァ」
こちらに向かって奴は歩き出す。
下の方で起こっている爆発によって、こっちも崩れてきているが奴はそんなこと気にしちゃいない。
俺はだんだんと意識を失って行く。
奴の手が伸びてきて、気絶する前に見た最後の景色は、一面真っ白に染まった何かだった。