ある日突然ゴムのように 作:Dの一族
敗北者の隣人(席)
「けっ……まだ能力者いたのかよォ。しかもコイツァ……」
俺はそんな言葉とともに
ゴムゴムの……いや、
まぁ、蝋と言ったところで誰でもわかる。
「ドルドルの実、か……また厄介なものが残ってるじゃねェかよォ」
ため息一つ吐いてスマホを取り出し連絡を入れる。
が、何故か繋がらない。
何回か掛け直してみるが、やはり電話は繋がらない。
「んー、妨害されてんのかァ?」
なんらかの可能性を考えて周りを見渡す。
そして俺はどうして繋がらないかの答えに辿り着く。
「あ。聞こえてねェわ、これ」
次から次へと落ちてくる瓦礫を避けながら、俺は外へ向かって歩き出す。
学校も埋もれることだし、今できることは帰還のみ。
報告できることがあるとすれば、取り敢えず出された任務はやった、ぐらい。
「……まァ、中将もこんなことじゃ怒んねェだろ。『WCEA』としての任務は終わらしたしなァ。他は全部海軍の責任だな」
「酷いお方ですね、他者に全て押し付けるなど」
海軍に全て押し付けようと思っていたところで後ろから声が聞こえる。
振り向くと瓦礫が落ちる中、そこに俺の部下の一人が立っていた。
「おう。来てたのか……相変わらずの格好だなァ」
「これが私の信じるものですので」
そいつはいつも魔改造したような修道服を身につけている。
ちと露出多めなのがなんとも見ていられない。
が、これは宗教上の問題とかなんとかで流されている、問題しかないように思えるが。
まぁ、特に制限をかけているわけでもないので、どうでもいいかなと。
「で、終わったのか、テメェの方は」
「私の……あぁ、中将様の頼みごとですか……調査はしましたが、情報は何一つとして。そもそもの話ですが、本当に
「知らねェよ。世界そのものを覆すものが、日本のこの街にあるとしか聞いてねェからよォ」
「……なるほど。さて、中将様は何をなさるつもりなのか」
「んなこと考えんなよ。俺たちャ、言われたことやるだけさァ」
と言ってポケットから一つタバコを取り出し、ライターで火をつけたところであることを思い出す。
「火……と言やァ、アレはどうなった。メラメラの実」
「……ああ、アレですか。その話は出てからしましょう。ここもそろそろ埋もれてしまいますから」
「……そういやそうだな。忘れてた」
「どれをどうしたら忘れるのか」
俺は魔改造シスターの部下に呆れられながら、二人で一緒に学校から脱出したのだった。
さて、色々再確認するとしよう。
俺の名前は猿田 類、ただの高校生だった男だ。
ゴムゴムの実を食ってゴム人間になったかと思えば、同級生も悪魔の実食ってて、助けだしたら色んな奴らに追われる羽目になって、かと思えば仲間出来て。
で、次の瞬間には襲われて、今に至る。
「……ここはどこだ」
奴の追撃から気絶して、一体どのくらい経ったと言うのか。
体を見ればかなり雑に包帯が巻かれている。
包帯を解いてみれば傷口を塞ぐように、火傷跡のようなものがついていた。
その上、なんか変な白い硬いものの上で寝ている。
キョロキョロと辺りを見渡してみれば、どうやらここは体育倉庫らしい。
体育館の方ではなく外にある方の倉庫だ。
ほとんど使われていない場所で、鍵すら錆びついているような場所だったはずだが。
「起きたんだ」
(この声は……)
毎日のように聞く声を聞いて、声のする方向を向く。
声のする場所を見てみれば、そこには一人の女子高生がマットの上に座っている。
見た目をワンピースのキャラで例えれば……若い頃の『海軍中将”つる”』が一番近いだろうか。
「……
「おはよ。死にかけみたいな顔してたけど、大丈夫?」
「生きてるから、大丈夫なんだろうよ」
「それはよかった」
伊野
知り合い、と言うか友達、と言うか、隣の席と言うか。
つまり、要するに、隣の席である。
「……で、なんで俺はここに?」
「私が助けたからに決まってんじゃん」
ケラケラと乾いたような笑い声をあげて、一体どこからか持ってきたのかわからないコーヒーメーカーでコーヒーを入れた。
しかも火を付けるのにものすごく小さな蝋燭を使っている。
その仕草は優雅そのものだが、場所と制服という格好によりなんとも言えない感が漂っていた。
「その蝋燭とコーヒーメーカーはどこから……」
「コーヒーメーカーは理科室から」
「理科室?」
「先生がアルコールランプ使って飲んでるの。知らなかった?」
「知らねェよ、そんなこと」
なんでそんな情報を知っているのかイマイチわからない。
だがこいつ、伊野が情報通なのは有名な話。
どうやって知ったかとかは気にならなかった。
それよりも気になるのは。
(なんでこんな中途半端に、どろどろに溶けた蝋燭が……)
何故この場所に蝋燭が存在するのか、だった。
と言っても確か理科室に置いてあったような気がする。
「……じゃあ、それも理科室から?」
と言って蝋燭に向かって指を指すが、彼女を首を横に振る。
「これは作った」
「作ったぁ?」
「こんな風に」
そう言って右手の人差し指を一本立てると、そこにポッと火が灯る。
あまりにも突然のことな俺は慌てるが、彼女は涼しげな顔でそれを見ていた。
少しするとどろどろに指先から何か、白いものが溢れ出てくる。
「……蝋?」
「そう、蝋燭作る能力。なんか手に入れちゃった」
一つ参考までに、彼女はワンピースを読んだことも見たこともないタイプだ。
だから知らないのだ、彼女が手にした能力のことを。
「……マジかよ。ドルドルの実じゃねェか」
俺の驚愕から出た言葉に彼女はただ、首を傾げるのだった。