ある日突然ゴムのように 作:Dの一族
「どるど……なにそれ?」
「お前、ワンピース読んだことねェもんな」
「……?」
なにいってるのか全く分かっていないようで、首を傾げて俺の顔を見ている。
と言うわけで一から説明することにした。
伊野の持つ力はワンピースで出てくる能力で、蝋燭を操る能力だと言うこと。
それと引き換えに泳げなくなり、水をかけられたりすると酷く弱体化することも。
「そう言えば……理科室で食べたわ。なんか白い梨みたいな果実、不味かったけど」
「それだよそれ。大当たり」
「ふーん……悪魔の実、ねェ。面白いじゃん」
そう言ってまたケラケラと笑う。
「漫画のモノがそのまま出てきたってワケね」
「まぁ、そう言うことだな」
「で、それがなんであんなことになってたの?」
あんなこと、というのは言わずもがな、あの狼男に襲われていたことだろう。
これもまた一から全部説明を始める。
悪魔の実を食べちゃった俺は、先生を探す途中にザルフェンさんと出会い、同じ悪魔の実の能力者に襲われたこと。
海軍を名乗る組織なども、取り敢えず全部。
「狼野郎の発言的に、先生たちはみんなどこかに連れて行かれてしまったんだろうけど……」
と、俺の話を全部聞いて彼女は呆れたような顔で答える。
「助けに行くっての?」
「……そりゃお前、助けに行くに決まってんだろ」
「一人で?」
「うっ……」
一人で行けばまず間違いなく、あの狼男に負けるだろう。
そもそもあいつのところに辿り着けるだろうか。
「なぁ、外にはまだ敵いるのか?」
「いっぱいいるよ。撤退準備はしてるみたいだけど」
「それは……あー……どうしよ」
蝋燭ベッドの上に座って、これからどうするべきか悩む。
このまま適当に特攻したところで、負けるのは目に見えているだろう。
俺はルフィじゃない、ルフィのように突っ込んで行くことはできない。
例えゴムの体を持っているとしても。
「付いて行ってあげようか」
「へ?」
「私の……なんだっけ。ドルドルの実? だっけ? 私はそれのおかげで戦うことができる。まぁ少なくとも役立たずにはならないかな」
「なんで、来てくれんだよ。危険なのはわかってるだろ?」
「……強いて言うなら。悔しいから? ほら、猿田しか助けられなかったじゃん、私」
ケラケラと相変わらず何考えていかわからない。
悔しいと言っているが、本当に悔しいのかどうかもわからない。
だが、付いてきてくれると言うのならば。
「本当にいいんだな。これからもずっと狙われるかもしれないぞ?」
「それは……こうすればいいでしょ」
伊野は自身の右手のひらを顔に押し当てる。
そして能力を使って蝋を掌から溢れさせて行く。
気づけば顔は蝋で覆われ、仮面のようなものができていた。
不恰好でなんとも言えないデザインの仮面だ。
「少なくとも私は、これで身バレすることはない」
「だといいけどな……」
そう言って俺はドアに手をかける、そして動きを止めた。
動きを止めたことに対し、不思議そうにする彼女の方を見て、俺は聞く。
何故かわからないが、無性に一つだけ聞いておきたかったのだ。
「本当に、悔しいだけか?」
「……なんでそんなこと聞くの?」
「いや、まぁ……なんとなく。そんな気がしたから」
と言うと彼女は一瞬、何処かに目線をそらして俺の顔を見つめると。
「まぁ、個人的なものが、ね?」
「……そ、そうか」
ここから先は伊野のプライペート的なことなんだろう、と思ってそれ以上は聞かないことにした。
そして聞くことを聞いた俺は改めて、ドアに手をかける。
「もう一度聞いとくが、本当にいいんだな」
「うん。いいよ」
それを聞いた俺はドアノブを回して振り返る。
「本当にいいんだな!?」
「しつこい」
なんてやり取りを交わして、俺はドアをゆっくりと開ける。
太陽の差し込む光に少し目を覆いながらも、新たな戦いの一歩を……。
「出てきたぞッ!! 総員ッ! 構えェッ!!」
歩き出す、はずだったんだが。
出た先で見たものは、ずらっと並ぶ銃を持つ海軍たち。
そしてその後ろに立って指示を出したのは真っ白なコートを羽織った、多分海軍将校。
明らか様に狙われているし、今にも撃たれそうになっている。
「……あークソ。早速予定が狂ったぞ」
「まぁ、よくあることでしょ。ほら、行くぞっ、とっ!」
奴らが銃を撃とうと銃に手をかけたところで、伊野の手から大量の蝋が湧き出る。
それをサッと前に出すと薄くも硬い一枚の壁ができ、放たれた銃弾をその壁に阻まれ、俺たちのところに辿り着くことは決してなかった。
少しすると銃弾が聞こえなくなる、そのことを確認すると俺は壁から出て走り出した。
「撃てッ! 撃てェッ!!」
一斉に銃弾が放たれ、そのいくつもの銃弾は俺の体にめり込んで行く。
そしてそのまま体を突き抜ける、なんてことはなく。
全てゴムの体で跳ね返してみせた。
「そんな銃弾、効かないねェ。『ゴムゴムのォ──』」
銃弾が跳ね返されたことにあたふたしている、奴らの少し前のところに行くと俺は思いっきり踏み込んで止まる。
そして片足を横に伸ばしてそのまま回転し、奴らの集団に向けて大きな蹴りを放つ。
「『
銃を構えていた奴らは咄嗟の攻撃に反応しきれず、俺の蹴りに一掃されて行く。
そこにすかさず、コートを羽織った奴に向けて『
慌てた奴の顔面に突き刺さる拳、更に倒れた奴の体に降りかかって固まる蝋。
敵を一掃したことで、俺たちは一度落ち着く。
「……バレバレだったみたいだな……って、おいおいおい!? どうすんだよ!?」
「時間との勝負、ってとこかな」
「じゃあ急がねェとッ!」
思ったよりも危うい状況ということに気づいた俺たちは、その場を離れ急いで行動を始めようとした。
だが体を固められた将校が声を荒げる。
「無駄だッ!! どう動こうと既に能力者たちは連行をされ始めているッ! 『WCEA』が動いている以上、貴様らに勝ち目など──」
「うるせェッ!!」
『斧』未満の技で奴の顔面を踏みつけると、奴はぐったりと気絶した。
気絶したやつを見て、俺たちは急いで行動をすべく走り出す。
(しかし『WCEA』、ってなんだ? ……もう、何がなんだかわかんねェな……)
色んなことが渦巻いている学校の中、仲間たちを取り戻す戦いが始まろうとしていた。