ある日突然ゴムのように 作:Dの一族
「さて……偶然、運が良く、無力化できた、が」
予想だにもしない方法で狼野郎を無力化できたことに喜びつつ、俺と伊野は見知らぬ少女に視線を向ける。
少女の手には盾が握られており、明らか様に戦闘態勢に入っている。
それを見て俺も構え、伊野は片手に蝋燭のサーベルを生み出していた。
何故か持ち方は意外と様になってるようで、なんとも不思議なことに使い慣れてる感がある。
「……猿田 類さん。ですね!」
「ああ、俺が猿田だ」
「そしてそちらの方は……伊野、と呼んでいましたね? 伊野さん、と呼ばせていただきます」
「まぁ、そうだけど……仮面の意味ないじゃん、名前バレしてたらさ」
と言いこちらに視線を向けてきたので、思いっきし目線を逸らしてた。
ちょっとだけ横で起こったような目線を向けているが、気にしたら負けだろう。
「お二人とも、無力化させていただきます! 私の名はシルト!! 海軍と『WCEA』の名において、貴方たちを逮捕します!!」
そう大声を上げると、一目散にこっち向かって走ってきた。
俺はそれを見ると、同じように奴に向かって走り出す。
そして走る直前に腕を後ろに大きく伸ばし、もう少しでぶつかるといったところで腕を戻す。
「『ゴムゴムの、
反動で加速し、威力を増した拳の銃弾が少女に向かって飛んで行く。
だが少女は銀色の盾を構えると、そのまま拳を流れるようにいなして、攻撃をすぐ近くの壁に向けてそらす。
「ん、なァッ!? ぐへえェッ!!?」
攻撃をそらされたことに驚きの声をあげた直後、盾の上の部分が俺の顔面にめり込む。
盾を打撃武器として使うのは、ちょっと予想外だった、と言うのは言い訳になるだろうか。
せいぜいシールドバッシュ程度かな、なんて思っていたのもあるんだろう。
そしてこれは──考えもしなかったことなのだが。
非常に顔面が痛む、壁に叩きつけられことに対する痛みは一切存在しないのに。
殴られた部分がとてつもなく痛い。
何故痛むのかわからないまま急いで壁から這い出ると、伊野と少女が交戦を始めていた。
銀色の盾と蝋燭のサーベルがぶつかり合った瞬間、サーベルがどろっと溶け出し、盾にまとわりつく。
少女は驚いた顔で離れようとしたが、伊野が咄嗟に引き寄せてサーベルだったものを離すと、頰に拳の一撃を叩き込む。
(うわっ、容赦ねェ……)
結構痛そうな一撃が少女の顔面に叩き込まれる。
だが痛みで顔を歪めたのは
伊野は手を痛そうに押さえながら、急いで少女が距離を取る。
少女は盾に絡みついた蝋燭を殴って砕くと、盾を拾い上げる。
「硬い……ッ!?」
「なんか自慢してるみたいで、言いたくはないんですが……私、海軍内では『黒盾』って呼ばれてるんですよ」
「なんか『黒足』みたいな、感じだな」
俺がそう聞くと少女は首を横に振って、盾をしまうとこう答えた。
「いえ、私の場合そのままの意味ですよ。まぁ、ワンピース的な意味があると言えば、たしかにそうなんですが」
「ワンピース的な意味? でもお前の場合、どっちかって言うと『銀盾』だよな」
「まぁ、それはそうですね……わかりました!! お見せしましょう!! 『
呟いた少女は姿を消して、一瞬の隙に俺の後ろに現れる。
いや、実のところなんとなくそう感じて、振り向いた先に彼女がいたと言うだけだ。
少女は指を一本だけ立てた『
あまりにも突然のことで、よろけるように後退りしてしまう。
「『指銃』」
よろけた俺に向けて撃ち放たれる『指銃』。
普通ならゴムの体に弾かれるだけだろうが、何かを察した伊野が蝋燭の壁を一瞬で作り攻撃を防いだ。
攻撃を防がれたことに、少し不満そうな表情を見せて、俺たちと距離を取る。
「覇気という概念は何も、ワンピースの世界だけのものではありません」
「……は?」
「薄々気づいてるんじゃないんですか? 才能あるみたいですし」
確かにそれっぽいものは感じていた。
悪魔の実を食べてから、何かと危機感を覚えて回避することが多くなっている。
これはアレと同じだ。
しかしそう考えると少し妙と言うか違和感を感じる。
この違和感についてどうにも説明がつかない。
そもそも本当に覇気という概念なのだろうか。
そんなことを考えていると、伊野が不思議そうに俺に聞いてきた。
「ねェ、覇気ってなに?」
「そういえば知らないんだっけな。ここで言う覇気ってのはワンピースに存在するものでな。主に三種類、武装色、見聞色、そして覇王色。この三つが存在する」
「ふーん。三つね」
「武装色と見聞色に関しては修行でどうとでもなるものだったはずだが、覇王色に限っては、生まれ持った才能みたいなもので、 所有者は極少数に限られるとかなんとか。多分」
だからこそ俺が悪魔の実を食べたことで、見聞色に似たものが身についたことの説明がつかない。
(今は考えるのも無駄か……それよりも重要なのは。仮に彼女の言う覇気が本当に存在するとして、それはつまり、俺に対する物理的攻撃手段が存在することになる)
それはつまり、先ほどと同じく一筋縄じゃないかないような戦いになると言うことだ。