ある日突然ゴムのように   作:Dの一族

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新たな敵

「どうする、どうすればいい!?」

 

 体育館を出て、学校の本館に戻ってきた俺は、とにかく悩んでいた。

 理由は抱えているザルフェンさんの体調がとにかくヤバそうだからだ。

 体温もすごくく低い、と言ってもこれは多分ヒエヒエの実を食べているからかもしれないが。

 

「温める? いや、温めて意味あんのかこれ? とにかく、えーっと……そうだ! 保健室だ!」

 

 そんな独り言ともに俺は保健室へ向かって走り出す。

 学校内に寮がある故に、保健室の先生は基本的に毎日いる。

 寮内で何かあった時、すぐに対応できるように。

 まぁ休みの日に使われている、なんて話は一度も聞いたことはないが。

 

(とにかく保健室ならば、誰か先生もいるはず。早いとこ助けてもらおう)

 

 兎にも角にも、保健室目指してザルフェンさんを抱えたまま走り出す。

 だが向かう途中の曲がり角、曲がったところでとんでもない景色に足止めを食らう。

 いや、止まるしかなかったと言うべきだろう。

 

「な、なんだこれッ!? いや、まさか……あのウーパールーパー野郎ォッ!!!」

 

 俺が止まった理由、それは目の前にそびえ立つ瓦礫の山のせいだ。

 少し上を見てみれば二階の床部分が丸ごと抜けている。

 と言うか抉られているように見える。

 あのウーパールーパー野郎、笑貌がやったことなのは間違いないだろう。

 

「どうする……三階から回り込むか?」

 

 一瞬悩みつつも、彼女の苦しそうな顔を見て階段を急いで登りだす。

 考えているような暇があるならば先に行くのは当然のことだろう。

 俺は一階から二階、二階から三階へ、息を切らしながらも登り切る。

 そしてそのまま向こうの廊下に渡るために走り出そうと、廊下を曲がったところでまたもや足を止めることとなる。

 

(……なんだ、アレ)

 

 遠くの方に不穏な人影が一つ。

 影からして普通学校で着るようなものではない、何かコートのようなものを羽織っている。

 

 ふと、人影が何か手を前に差し出した。

 その瞬間その手の先から、何かがすごい速度で飛んでくる。

 目視できている時点で銃弾類ではないのは確かだが、何か危険を感じてしまう。

 そこで咄嗟に俺はザルフェンさんを抱えたまま近くの教室に飛び込んで入る。

 

「な、ななな。なんだあいつッ!? 今、何飛ばしてきやがったッ!?」

 

 一先ず近くの椅子を四席ぐらい集めて、彼女をその上に寝かせてから廊下を覗き込む。

 が、影はどこにもない。

 

 後ろを見てみてもやはり誰もいない。

 床を見てもさっき飛ばされてきたものも何もなかった。

 ただ一つ、先ほどまでなかったはずの二足のスニーカーを除いては。

 

(スニーカー……? なんでこんなところにスニーカーが……それに、これ、中身、が……ま、まさかッ!!?)

 

 俺はあることに気づいて前のめりに倒れる。

 それとほぼ同時に天井から何かが降りてきて、俺の背中を切り裂こうとした。

 だが早めに気づいたことでギリギリ避けることに成功し、ジャージの背中部分が切られるだけで済んだ。

 

「チッ……避けられちゃったか」

 

 そう言ったのは天井から降りてきたもの、()()()()()()女性だった。

 そしてその女性は白いコートを羽織っている、一応背中には何も刻まれてない。

 ちなみに手には数本もナイフを持っている、アレで俺を切り刻もうとしたらしい。

 

「な、なんだ、お前……」

「猿田くんだね? 私は『世界海軍』の日本支部に所属する、位は大佐の萩原(はぎわら)って言うんだ。よろしくね?」

「海軍……? 笑貌が言ってた……」

「そそ、笑貌くんね。私は彼の上司だよ」

「なる、ほどね……」

 

 大方把握した、どうやらザルフェンさんを狙う敵はまだいたらしい。

 しかも海軍にあのコート、いよいよワンピースじみてきた。

 もしかして俺はワンピースの世界に迷い込んだんじゃなかろうか。

 

「ま、とにかく。笑貌くんからの話は聞いてるからさ。捕まってよ。ね?」

「無理だな」

「そりゃそうだよねェ。まぁ、私は単純に、時間稼ぐだけでいいんだけどさ」

「……は?」

 

 俺はその言葉に一瞬、焦りのようなものを感じて教室を覗き込む。

 するとさっき寝かせたはずのザルフェンさんの姿がどこにもなかった。

 代わりに床から上半身を出してポカートした男の姿……と言うかクラスメイトがいた。

 

「……お前、瀬煮(せに)か?」

「あ……ちょ、萩原大佐ッ!? 何言っちゃってるんですかァッ!? 不意打ちで倒すって算段でしょうにッ!?」

「あはは、ごめんごめん。まだ手ェ出さないのかなと……思ってさッ!」

 

 振り返ると同時に振り下ろされたナイフを避けるために横に動く。

 だがそれと同時にあらぬ方向、腕のない方向からナイフが飛んでくる。

 上手いこと避けるも、そのまま振り下ろされ、服に大きな傷が付く。

 

「あっ……ぶねェッ!!? やっぱりお前……!! バラバラの実の能力者だな! そして瀬煮、お前はスイスイの実の能力者だなッ!?」

「そう、大正解」

「すまねぇな、猿田。こいつも仕事なんでな。ザルフェンさんは連れて行かせてもらう」

 

 瀬煮を殴ろうとするが、その前に地面内に潜行される。

 スイスイの実、超人(パラミシア)系に分類される悪魔の実だ。

 

(自分は床を水のように泳げるが、他人を入れることは不可能なはず……ならばまだ、ザルフェンさんは近くにいるはずだ。ならとっとと萩原、って言うこの人を倒して進むしかねェ!)

 

 バラバラになって一斉に飛び出す奴に向かって俺は走り出す。

 まだまだ慣れないゴムの体で。

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