ある日突然ゴムのように 作:Dの一族
「この……野郎ッ!」
振り下ろされるナイフの斬撃を避けながら殴りかかる。
だが宙をふわふわ浮く体の一部に攻撃が当たることはない。
簡単に避けられてどこからともなく飛んできた、足によって背中を蹴られる。
そのまま前のめりに倒れ、机や椅子を大きな音ともに倒す。
(教室は邪魔なものが多いなっ……!)
俺は振り返って起き上がろうとする前に、椅子の足を掴んで後ろに向かって振るう。
ナイフを持った手がギリギリまで迫っていたところで振るった椅子に当たって吹っ飛んでいった。
「おおおおおおおッッ!!? いだっ、いたあああいッ!!?」
少し離れたところで体が集まり、吹き飛ばされた手を掴んで彼女は転げ回る。
結構痛かったりらしく、腕をぶらぶらさせて軽く涙目になっていた。
「ねええええッ!! 痛いんだけどッ!?」
「いや知らねェよ!? 戦ってんだからそりゃ痛いだろうよ!」
「ちっとはさぁっ! 手加減とかないのっ!?」
それはこっちのセリフだ、と叫んでしまいそうになってグッと抑え込む。
これ以上言い合っている時間はない。
早くしないとザルフェンさんが連れていかれてしまう。
「ああ……くそっ! なんでこんな奴と……ッ!!」
一瞬気を抜いた瞬間、奴は足を切り離し宙に浮いて急接近してきた。
振られた左手を避けるため、咄嗟に後ろに下がったところで背後になにか嫌な予感を感じる。
そこで俺は倒れる前に、すぐ隣の机を押して自分の体を横に動かした。
予感は大当たり、もしこの行動をしていなければ左腕に刺さったナイフは、背中に突き刺さっていたことだろう。
「ぐあああああッ!!!! いッ……でェェッッ!!」
すぐ抜き取られ俺は痛みでもがき回る。
どうやら奴は右手も切り離し、下から飛ばしていたらしい。
(気づけてよかった……やられるとこだったぞ……)
なんで気づけたのかは自分自身でも不思議だが、取り敢えず避けれたのだから良しとしよう。
「ちぇっ、避けられちゃったか。でもなんで気づいて……まさか……いや、まさかね」
何かを勝手に一人で納得して、奴は再度手に持ったナイフを構える。
俺は痛みで苦しみながらも腕を押さえて立ち上がる。
結構痛いがまだ戦うことは可能だ、だがこのまま続けているのは流石にまずい。
いっそゴムゴムの銃を放てればいいんだが、戦っているこの場所は教室。
狭すぎて腕を伸ばすことができない。
(せめて腕を伸ばさずに、撃ち放つことができれば……まるでギア4の
降りかかるナイフの攻撃を避けながら考え、そこで一つのあることを思いつく。
(……そうだ、ギア2のポンプ。あれの要領でやれば……いやでも、行けるか? ポンプのように)
攻撃を避けながら殴ろうとするも、やはり速度が足りず見切られて避けられる。
まぁ当たったところで大してダメージもないようだが。
少しの間避けていて、考えても仕方ないという結論に至る。
ルフィだってそうだ、いつもとんでもない発想で、色んな技で窮地を脱してきた。
なら俺だってやるしかない、やるしか道を切り開く方法はない。
「……行くぞッ!! 萩原ァッッ!!」
「なにっ……!?」
俺は気合いを入れるために大声を上げてグッと足を踏み込む。
それを見た奴はなにを警戒したのか、俺の前で元の状態に戻る。
俺は真っ直ぐ右腕を前に伸ばし、そしてその右腕前の部分を真っ直ぐ伸ばしたまま、後ろに引き抜く直後に前にもう一度出す。
すると拳は腕の方に大きく
俺は飛び出そうとしている拳を左手で慌てて抑え込む。
「……なに、してんの?」
俺の行動に萩原はすごい困惑している様子を見せている。
そこに俺は走り出して、咄嗟に思いついた名前を叫ぶ。
「『ゴムゴムの──』」
奴は咄嗟に体をバラして避けようとするが、その時にはもう遅く。
俺は既に眼前へと接近していた。
そして声を上げながら引っ込めた右腕を腹に向けて撃ち放つ。
「『
バンッッ!! という大きな音ともに右手から拳が飛び出る。
『銃』のように遠くまで飛ぶわけではない。
『バズーカ』のような強大な威力はない。
でもこれは、今の俺ができる全力だ。
「カ、ハッ──!!?」
だがこの一撃は大きく、奴は体をくの字に曲げて机や椅子を押し退けながら壁際まで吹き飛んでいった。
「……上手くいった。マジか」
俺は上手くいったことに驚きつつ、奴から距離を取れたことに気づいて急いで廊下に出た。
「瀬煮ッ!! ……流石にもういねェか。いや、まだ下の階にいるかも……!」
急いで瀬煮のところに向かうべく走り出す。
だが教室から少し離れたところで、突然俺は服の首元を引っ張られて、変な声を出しながら足を止めてしまった。
「ぐぇっ」
振り返ってみれば上と下で真っ二つになった萩原が、顔を出して大きな笑みを浮かべている。
俺を引っ張ったのは切り離した彼女の右手だった。
「……いいじゃん、今の。効いたよ」
「っ……!」
「じゃ、今度はこっちの番だね」
そう言うと萩原はこっちに向かって走り出してきた。
俺は咄嗟に構えたが、その瞬間俺のすぐ隣にあったドアが蹴破られ、そこからナイフを持った手が飛び出してくる。
ギリギリのところで避け、奴に向かって走り出し殴りかかる。
「一つだけ教えてあげよう! 私はもっと! 細かく! 小さく! バラバラになれる!! こんな風にッ! 『網式バラバラ模様』ってねェ!」
俺は拳を振るって奴の体を殴ろうとした。
だがその前に、奴は
細やかなキューブ状の姿に。
そうなると振るった拳は、キューブの隙間をスルスルと抜けて攻撃は通らなかった。
「なっ……ふざけんな! バギーだってそこまでバラバラになれねェだろ!」
「やろうと思えば人間でもなんでもできるものさ! 覚悟するといい! 猿田くん!」
「ッ……ざけんなッ! やってやるよッ!!」
そう言って次こそ確実に倒すために、俺は拳を構えたのだった。
ゴムゴムの銃『散弾(ショット)』があるって?気にするな!
これについては理論もなにも考えてないデス、はい。