ある日突然ゴムのように 作:Dの一族
「うおおおおおッ!!」
俺は細切れになった奴に向かって拳を振るう。
当然ながら意味はない、間をすり抜けて行くだけだ。
無茶苦茶に掴もうとしてみるも、するする動いて避けられる。
「くそッ! もっと早く攻撃できれば、何か一つでも当たるはずなのにッ!」
周囲見渡してみる、今俺がいる場所は廊下。
後ろを見れば長く続いていて、奥の方には階段が一つだけ。
腕を伸ばそうと思えば伸ばせるぐらいには長さがある。
(銃、行けるか? さっきの『
飛んでくるナイフ群を避けながら次の策を練り続ける。
だがやはりいいのが浮かばない。
速度で攻撃するならば、俺ができることは『
だが上手くいく自信がない上に当たるかどうかも微妙だ。
「ふ、ふふっ、無駄だよ!! 残念だけどどんな攻撃も、武装色持っていたとしても、結局のところッ! 当たらなきゃ意味ないんだよねッ!!」
「そうだよ、なッ! 当たらなきゃ意味ねェよなッ!」
ごもっともである、強くても、恐ろしくても、当たらなければ意味がない。
ならば、いやだからこそ、もうやるしかないだろう。
今からやることは成功するかもわからない。
だが、もし上手く行けば当たってくれるかもしれない。
「う、おおおおおおおおおッ!!!」
後ろに向かって大きく腕を振るう。
振るった腕は真っ直ぐ……ではなく、壁にぶつかりながら遠くへと伸びて行く。
真っ直ぐではないものの、伸びてくれているため反動は得られる。
それで十分だった。
「『ゴムゴムの……
勢いよく伸びたゴムは真っ直ぐ前へと飛んで行く。
縮んで戻る前に壁に激突しながらも、腕の付け根で定めた狙いの場所へと飛んで行く。
流石のやつも一瞬、驚きはするものの細やかに拡散すると、逆に伸びて奴の間を通った腕に引っ付いて行く。
俺は無理やり腕を振り回して剥がすと、腕を元に戻して軽く声を荒げる。
「クソッ! 成功したのに!!」
「当たらなきゃ意味はないって、言ったよね!」
「この速度ならどれかに当たると思ったんだよッ!」
今のこれは大失敗間違いなしだが、おかげさまで大きくコツが掴めた。
次やれば真っ直ぐ飛んで行く、気がする。
(だが真っ直ぐ飛んで行ったところで、もっと早くないと結局避けられる……いやそもそも、本当に当たるんだろうか?)
不安は湧き出るばかり、だが本当にそろそろ決着をつけないとやばいだろう。
ザルフェンさんが連れて行かれてしまう。
(それに……もういい加減、疲れてきたしな)
俺は足を踏み込んでもう一度後方に腕を伸ばそうとしたところで、考え直して
それよりも、別のことを試してみる価値はあると。
「ッ!?」
「……上手く、いけばいいんだが」
「一体、何を……」
「数打ちゃ当たる、って言うだろ?」
「ま、まさか、『
ゴムゴムの
結構決め技みたいなイメージがある、エニエスロビー編の最後の技もギア2でのこれだったし。
だからこそこれさえ決まれば、流石の向こうも避けるのは難しいはず。
それこそ乱射が細切れの肉片にぶつかって行くはずなのだ。
「……なるほど。たしかに数打ちゃ当たるよね。攻撃がしっかりと当たれば、の話だけど!!」
奴はそう言い放つと、いくつかの肉片が集まって上半身を形作る。
と言っても腕はないし、上半身も半分ぐらいない。
ただそこに上半身の上半分と顔だけがふわふわ浮いている。
「なんのつもりだッ! 『ゴムゴムの
俺は即座に切り替えて、腕を後方に伸ばし、集まった奴の顔面に向けて撃ち放つ。
集まった今なら避けるのも難しいと考え、そして
今度はたしかに真っ直ぐ飛んで行った、だが奴に当たる寸前で放った
「なっ……! この、感触はッ……!!」
「気づいちゃった? そう、それが私のお肉の感触。ど? 柔らかいでしょ。ちなみに、ぬるぬるオイル付きね」
得意げに、それでいて嫌な笑みを浮かべる奴に、俺は歯をくいしばる。
奴のいくつかの肉片が塊を作り、まるで滑り台のような滑走路を生み出し、その表面にオイルを塗ることで拳を逸らしたらしい。
理論がどうのはよくわからないが、できているのだから恐ろしい。
「いやー、ゴムゴムの実を相手にするって聞いてたからさ。色々用意してたのよ。私も簡単にはやられたくないしね。それに今回上手くいけば本部行きの話も出ちゃってるからさ!」
「……知るかよ。お前のせいで右手がぬるぬるじゃねェか!」
このままではパンチなんてしたところで、上手く避けられた上にすり抜けること間違いなしだ。
なんとか固定させる方法でもあれば殴れるはず。
だがそれが思い浮かばないのだからどうしようもない。
「ああクソッ! やり方を間違えたなッ!!」
さっきの逸らされた一撃を
廊下に充満し始めた煙に気づかずに。