──ここは軍貫処『
カウンターに五席とテーブルが三つしかない小さな寿司屋……もとい、軍貫屋。
表情の変わらない無愛想な店主が確かな腕で握る絶品の軍貫。それを求め訪れるのは、日々の戦いに疲れたモンスター達。握りはなく、提供されるのは軍貫のみという攻めたスタイルながら、かなり繁盛している。
さて、本日のお客様は……?
「いらっしゃいませー! お、アーデクさん!」
店を訪れた客を最初に出迎えるのは、バイトの少女『エクレシア』の声。長く伸びた髪をポニーテールに束ね、市松模様の法被に身を包んでいる。
「予約ハシテイナイノデスガ、大丈夫デスカ?」
「はい! 今日は他にお客様はおられないので大丈夫ですよ!」
「デハ一名デ、オ願イシマス」
「はぁーい! カウンターにどうぞー!」
訪れた客は、純白の体に神々しい翼を携えた『
彼はここの常連客だ。エクレシアも最初はその姿に面食らったが、今では丸みを帯びたその体を見る度にちょっとかわいいな……と思い始めている。
彼はとある大陸の辺境の地で信仰されている神、『
彼がエクレシアに促されるままカウンターを見やると、そこには店主『アーゼウス』の姿があった。
「いらっしゃい」
彼は常連を一瞥したものの、表情も変えずぽつりと呟く。
無愛想な接客だが、宣告者に不快感はなかった。アーゼウスはそういう男なのだ。
大きな翼が引っかからないよう、背もたれの無い椅子に腰掛け、お品書きを眺める。
そこに記されている価格はどれも一貫200円以上。ウニに至っては500円だ。
お茶が来るまでの間に、宣告者はお品書きに目をやりながら、最近耳にした噂を話題に挙げた。
「ソウ言エバ、M:D地区ニ出来タ『二号店』、『イクラ』シカ提供サレナイト小耳ニ挟ンダノデスガ」
「……あそこじゃ、ネタになるものがいくらしか調達出来ないらしくてな。弟の店だが、なかなか儲からないと嘆いてたよ」
「ナゼイクラシカ調達出来ナイノニ開店シタノデスカ……」
「弟に聞いてくれ」
身内のアーゼウス自身、呆れているような声色をしていた。M:D地区は最近開発の進んでいる新興都市なのでそういった事情もあるのかもしれないが……。
(マア、私ガ心配スルコトデモ無イデスネ)
他愛も無い雑談をしているうち、エクレシアがお茶を運んできた。熱いお茶を一口啜り、ふうっ……と息を吐く。宣告者はこの瞬間が一番好きだった。
「……そろそろ握りましょうか」
「ソウデスネ。デハ、セッカク話題ニ出タ事デスシ、『イクラ』ヲオ願イシマス。他ハオ任セデ」
「あいよ」
ぶっきらぼうに一言だけ返して、アーゼウスは寿司を握り始めた。
店主が寿司を握り終えるのを待つ間に、宣告者は再び口を開く。
「ソレニシテモ、最近ノデュエルハ先行有利ガ如実過ギル気ガシマスネ。先行後攻ノ格差ヲモウ少シ解消シテ欲シイモノデス」
「お前がそれを言うのか。『崇高なる制圧者』」
「宣告者デス」
手札から天使族を墓地に送ることで、神の宣告とほぼ同様の効果を発動できるのだ。
強力な効果だが、彼はレベル12の儀式モンスター。本来であれば相応のコストを払う必要がある。
……本来であれば。
「彼ラノ登場ハ、マサニ革命デシタ……」
「
『
彼らは「攻撃力を参照して儀式召喚を行う」という、特異な方法を操る。これにより低打点の
「まあ、アイツらがいないとお前の活躍の場も無かったか。お手軽な神様になったもんだな」
「オ黙リナサイ。手札カラ『イーバ』ヲ捨テ効果ヲ発動シマス」
「チェーン。エクシーズ素材の『バンα』『アルζ』を取り除いて効果を発動します」
「デハソレニチェーンして『朱光の宣告者』ヲ手札カラ捨テ効果を発動シマス」
「それにチェーンして『ダウナード』『LLアセンブリー』を取り除」
「何やってんですか2人して!!!」
ガッガッッ!!!
エクレシアがお盆2枚を両手に持ち、それぞれの頭をかなりの力ではたく。
「アーデクさん、うちの大将を破壊しようとしないでください! そもそも何にチェーンして発動したんですか最初の効果は!」
「強イテ言ウナラ彼ノ不躾ナ発言ニ、デスカネ」
「大将も! あなた味方も何もかも巻き込むんですから、私もこの店も消し飛んじゃいますよ!!」
「だが効果を使用せずに破壊されるのは勿体ないだろう。手札も消費させた事だしな……」
「言い訳無用!! 黙って軍貫握っててください!!」
エクレシアの剣幕にアーゼウスは肩を落としてシャリを掴む。
「……(ギュッギュッ」
「握ルトイウカ、握リ締メテマセンカ? ソンナ物ヲ客ニ出スノハ……」
「……へいお待ち」
「コノ機械ハ……」
「──彼らの強い所は、コストがコストになっていない所なんですよ。手札をリリースしたと思ったらリリースした本人がサーチ札になったり、儀式召喚を墓地からも行えたり」
「カタコト外れてるぞ。大丈夫か?」
「読者もそろそろ読みにくいでしょうし、酒が進むと私は饒舌になり滑舌も良くなるという設定でここはひとつ」
閑話休題。
6貫ほどの寿司を食べ終えた宣告者は、酒をあおりながら続ける。
「もちろん私自身の効果が強力なのは認めますが、それは彼らの特殊な儀式召喚法と様々なギミックがたまたま噛み合ってしまっただけなのですよ。
──そう……たまたま『宣告者の巫女』が効果でレベルを6にしながら儀式サーチを行え、デッキのエンジンたる『弁天』もレベル6なので『ベアトリーチェ』をエクシーズして墓地にモンスターを落とすことが出来るだけなのです。
──『ユニオンキャリアー』の効果で『イーバ』を装備することでたまたま機械族・攻撃力2000が立ち、そのまま
「別に許されはしないがな。『
「私に言われても困りますし、召喚条件ガバガバなのはあなたもでしょう。というか、さっきしれっと
「アイツらはレベルが1だからな。アセンブリーナイチンゲールはダイレクトアタックできるからそのままダウナード、俺で4素材になる」
「なんてひどいことを……」
「どっちもどっちです」
話を聞いていたエクレシアが、アガリを置きながらため息混じりに言う。
「アーデクさんの良くないところは、イーバを絡めて妨害の数を延々増やしてくることだと思われがちです。でも、仮にアーデクさんを壊獣や一滴で処理しても手札に『
「なるほど、確かにそうだな。でも、いつでも手札に朱光がいる訳じゃないだろう?」
「いえ、展開の過程でイーバがサーチしてきますね」
宣告者の言葉に一瞬、沈黙が訪れた。
そして三人は顔を見合わせて頷き合う。
「つまり……」
「そういうことだな」
「そういうことですね」
「「「イーバが一番悪い!!!」」」
ここは軍貫処『
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