「…はい、これでクエストは受注完了です。パーティメンバーが4人揃っているので大丈夫だと思いますが、くれぐれもお気をつけて。」
「はーい、じゃあ行ってきます!」
今日は久しぶりのG級クエスト。しばらくハンターを休業していたから、リハビリがてら狩り慣れたリオレウスとリオレイアの二頭狩猟に挑戦する。パーティを組んだのはいつものメンツだ。ストライカースタイルで片手剣を振るうユーリィ、ブシドースタイルでヘビィボウガンをぶっ放すアウラ、同じくブシドースタイルの弓で敵を穿つサラ、そして私、エリアルスタイルの双剣で敵を斬り刻むクロナの四人。
そして今回の狩猟フィールドは古代林。リオレウス・リオレイアの生息はあまり確認されていない。だからその分脅威になり得る。それをいち早く排除するのが私たちの役目だ。
「ま、アタシら四人なら向かうところ敵なし…って感じ?」
「とはいえG級クエスト。油断は大敵。」
「そう、クロナの言うとおりだ。G級クエストなんか油断しすぎってことは無いんだ。気をつけろよ。」
「はーい。了解、ジャック師匠。」
「おめぇの師匠は別にいんだろがバカタレ。」
調子に乗ったアウラを私と師匠で諫める。師匠はベテランの太刀使いで、私とユーリィに戦闘技術を仕込んでくれた。私が師匠の鬼っぷりを事細かに教えたからか、突っ走りがちなアウラも師匠の言う事はちゃんと聞いてくれる。
「ま、お前らなら負けることもねぇだろ。気張って来いよ。」
師匠の声に送り出されて、私達は小型飛行船に乗り込んだ。
フィールドの近くまで来たら、モンスターによる撃墜を避けるために飛行船を降りる。ここからベースキャンプまでは歩いて移動しなければならない。
けれど、勝手にどこへでも行こうとするアウラの手綱を握っていたら、いつの間にかユーリィ・サラペアとはぐれてしまった。
到着したのは古代林フィールドの第五エリア。
「やったー!応急薬グレート、ゲット!ふふん、アタシったらついてるわ!」
「はぁ…」
「他にもあるかしら…キャッ!」
「とりあえず第六エリアまで出る。ついてきて。」
「ちょっと!なにも蹴ることないじゃない!」
「黙って動く。」
夢中でガラクタの山を漁っていたアウラのお尻を軽く蹴り上げて、私はすたすたと第六エリアに向かった。
第六エリアは広大な平原になっていて、空には古龍観測所の気球が浮かんでいる。
その気球に手を振ると、大型モンスターの位置を信号で知らせてくれる。
私もご多分に漏れず、気球に向けて手を振った。
『エリア7 リオレイア エリア9 リオレウス チュウイ』
「まずはエリア7を目指す。運が良ければそこで二人に合流できる。」
「じゃあ、合流できなかったら?」
「リオレイアを討伐してから考える。行くよ。」
「クロナもそこそこ行き当たりばったりだよねぇ。アタシが言えた義理じゃないけどさ。」
私とアウラは強走薬グレートをグイっと飲み干して走り出した。
薄々予想してはいたけれど、エリア7に二人はいなかった。いたのは獰猛化したリオレイア一匹だけ。
私達の目の前にいるそれは、通常種よりも大きく咆哮する。
「ぐっ、ぎ…!」
「いやぁ、モンスターの咆哮は何回聞いても慣れないね!」
アウラが軽口を叩きながらミラアンセスホールマを構える隣で、私は紅蓮双刃を抜き放ち、即座に自分の中のスイッチをバチリと切り替える。
「すぅ…ふー…ぶっ殺すッ!」
全身に力を込めて跳躍し、挨拶代わりにリオレイアを頭から尻尾の先まで余すことなく斬り刻む。俗に鬼人回天連斬と呼ばれる技だ。
こちらを見下すように低空をホバリングしていたリオレイアはなす術もなく墜落し、無様にもがく。
「ブランク明けだって言うのに、全然衰えてないじゃん。アタシはサポートに徹するかな!」
そんなことを言いながらも、もがいていて狙いが定めづらいリオレイアの鼻っ面に全弾撃ち込んで見せたアウラは、実は化け物なんじゃないかと思う。
私が斬り、攻撃を受けそうになったらアウラが砲撃して出鼻をくじく。それを繰り返して大したダメージを受けることも無く、私達はリオレイアに完封勝利を収めた。
「いぇーい!やったね!アタシ達ってやっぱ最高のコンビだよね!」
「当然。二人で最高、四人で最強。それが私達。」
エリア8の高台から飛び降りると、飛び立ってユーリィ達から逃げようとしているリオレウスが見えた。
「はァ───ッ!!」
走ってきたせいで少ないスタミナを消費して強引に鬼人化し、抜刀した反動で回転しながらリオレウスの薄膜のような翼をズタズタに切り裂く。敵前逃亡を図った天空の王はたまらず地面に叩きつけられ、鋭利な爪は情けなく空を掻く。
「すまない、助かった!全力攻撃を仕掛けるぞ!」
「オッケー!」
「了解。」
「はぁーい♪」
「喰らえ…!」
鬼人化を解き、鬼人強化状態に移行。恐怖に揺れるリオレウスの瞳を見て、せめて苦しまないように殺してあげるためにと狩技を発動する。舞い踊るように敵を斬り刻む血風独楽の発展形、【血風独楽Ⅲ】。
「ドカンとぶちかますよ!」
私がリオレウスの近くから離れたのを確認して、アウラが撃ったのは特製の超高威力炸裂弾だ。空中で特大の火球を作り出すこの狩技は【スーパーノヴァⅢ】。改良を繰り返したことで、初期のスーパーノヴァよりも威力が格段に上がっている。
「これが私のとっておき♪」
サラは動き回る針の穴に糸を通すかのような精度で【トリニティレイブンⅢ】を決めて見せる。リオレウスの口から尻尾までを一気に貫通させる鋼鉄製の矢を三本連射するこの技は、一度だけサラが怒った時にユーリィの片手剣を弓につがえて射たことから身に着けた技らしい。なんでそんな事になったのかは絶対に教えてくれない。
「トドメだ!」
体の内も外もメチャメチャにされたリオレウスが、最後の力を振り絞って立ち上がろうとする。だがそんな見え見えの隙をユーリィが見逃すはずもなく、顔面を【ブレイドダンスⅢ】で傷つけていく。八回斬りつけた後に眼球から脳にかけてを貫き、渾身の力を込めて骨ごと斬り払う凶悪な狩技だ。私がモンスターだったら、あの技は絶対に喰らいたくない。
ユーリィの一撃が致命傷になったのか、リオレウスは力なく咆哮してその体を横たえた。
「ふぅ…これでクエスト完了だな。」
「いつ見てもえげつない技よね…」
「私だったら絶対に喰らいたくないわぁ♪」
クエスト終了後に気を抜いて談笑しているとき、《それ》はやって来た。
「あっ…ユーリィ、危ない!」
「クロナ!?」
咄嗟に直撃コースだったユーリィを突き飛ばした直後、私は派手に吹き飛ばされて宙を舞った。
───恐れ見よ、赫き災厄の彗星を。