当基地指揮官は数人と誓約しているタラシさんです。今後誓約組のお話もアップする予定でございます。
「どうかなさいましたか?指揮官」
「いや、そろそろ年末だし大掃除でもするかな〜って。そんだけだ」
「なら私も手伝います」
12月18日。執務室は綺麗だ。見た目は、だが。棚の中には416が置いてったゴムみたいなもの、机の中にはUMP45が隠している閃光手榴弾、押し入れにはG11のお布団。それらを全て部屋の外に一度だし、掃除機をかける。ホコリ自体は少ないのだが年末には必ず大掃除をする、という慣習が抜けきらずに毎年飽きもせずにやっている次第だ。
「執務室が404の私物で埋め尽くされている……?妙ですね。説明して貰えますか?」
「アイツらが当直で来る毎に私物を置いていくんだよ。404は基地の中でも一番当直日数が多く割り振られてるからさ。まぁ本人たちから志願してるから良いかもしれない。とりあえず、クリスマス前に掃除は終わらせておきたい。まぁ当日にパーティに参加出来るかは書類の多さによるんだけど」
「なるほど。とりあえず終わらせましょう。終わらせなければ新年を気持ち良く迎えられない、とカリンさんに教えて頂きましたので」
AK-15は手際良く物を仕分けてごみ箱か棚に置いていった。ガンラック横の拳銃を収納する棚にAK-15が手をかけた。
「指揮官、これはいりますか?」
「それは……いる。大事な形見だから」
「?」
それはCDだ。今ではCDプレイヤーがあるのはこの基地のカフェぐらいだから、と残して店じまいした後のカフェでたまに聞いている。
「題名は……『Remember me』私を覚えていますか……ですか」
「後で聞きに行くか?」
「えぇ。楽しみです」
結局残したのはCD、404の私物、おもちゃのバイク、そして仕事に必要なもの。後は……。
「これは良いのですか?指揮官の名前が入ってますが」
といってAK-15が引っ張り出したのは名前の入った様々な物だ。
「これは父親からのだ。腕時計。当時は防水防塵で感動したのを覚えてる。たまには身に着けて父親を思い出すのも良いかもな」
腕時計。そして、
「これは………バンドしてた時のベースだ。引退する時に名前を刻んでもらった、気がする」
「音楽活動もしていたのですか。意外です」
「そうか?まぁそんな風には見えないよな。さっき見せたCDの曲もやったんだぞ」
「ますます気になります」
さっきまでガラクタのように仕舞い込まれていた物が一気に輝いて見えた。そして記憶が鮮明に蘇る。
「指揮官……ハンカチいりますか?」
「なんでだ?」
「先程から涙を流していますので」
どうやら懐かしさのあまり、泣いていたらしい。ハンカチを受け取り、その場に崩れ落ちる。オレがやって来た事は、正しかったのか。親や兄弟を見放し、軍に配属され、その後グリフィンに入社した事を恨んでいないだろうか。そう思えば思う程涙が止まらなくなってくる。
「AK-15、俺は親を見放してきたんだよ。だから最後の会話は日常のなんでもない会話だった。行ってきます、うん行ってらっしゃい、っていうね。だからこの辺の形見達のことも忘れようとしていたのかもしれないね。みんなが付いてきてくれた指揮官は、こんなにも親不孝者なのさ。情けない事にな」
「私にはなんとも言えません。でも、少なくとも、私たちAIや、人間の為に必死に戦っている指揮官の事を誰が責められましょうか。そんな人は私が蜂の巣にします。例え指揮官の親族だろうと」
「嬉しい事を言うね」
部屋の掃除も終わりカフェに行く。そしてスプリングフィールドに一声。
「指揮官?珍しいですね。日中に来られるなんて。掃除は終わったのですか?」
「あぁ。片付いたよ。いつもの流してくれ。オーダーもいつも通り」
「かしこまりました」
すると店内に一瞬の静寂。そしてギターソロから始まる男性の歌声。
『Light the truth together……
find it out remember……』
その場にいた戦術人形達も誰のリクエストか探しているようだ。
「これが……指揮官の形見の歌ですか」
「俺は生きてるからな」
今ではYouTubeも無いため彼らの姿を見る事は叶わないが、それでも思い出すだけで笑いが止まらない。
「彼らはどんなバンドなのだ?」
「5匹組のロックバンドだ」
「人じゃないのか?」
「狼みたいな感じ?」
AK-15の頭の上にハテナが浮かんでいるように見えた。
「理解出来ません。人間では無いのになぜ歌えるのですか?」
「狼の頭と人間の体を持つっていう触れ込みのなんだけどね」
「被り物、ですか?」
「被ってねーよ」
このやり取りも懐かしい。と、同時に私も彼らのファンなのだな、と感じた。たとえ世界が荒廃しようと、音楽は消えないのだ。ヒトの心に残り続けるから。
「この歌のリクエストは指揮官様なのですね!」
後ろからM1911が抱きつきながら聞いてきた。
「あぁ、そうだ。いい歌だろう?」
「うん!すっごくいい!」
そこに珍しくヘリアンも入って来た。
「スプリングフィールド、カフェラテのホットとリンゴパイを頼む」
「かしこまりました!」
隣に歩いて来て一言。
「マンウィズ、か。懐かしいな」
「ヘリアンさんもご存知だったんですか」
「あぁ、なんかのドラマのメインテーマでこの歌を知ってからは立派なガウラーだ」
どうやら音楽は階級を越えたコミュニケーションツールになるようだ。
「父上、母上、そして兄上。私は……」
俺は誰もいない虚空に向かって語りかけていた。
「ーーーーーー」
「ーーーーーー」
その会話を聞いた人はいない。
そんな訳です。更新頻度は高くないかもですが見捨てずに生暖かい目で見てくれると幸いです。
ごーきげんよーう!(しぐれ)