転生したら、魔王様の部下の部下になりました   作:白紅葉 九

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第一話 転生したら、魔王様の部下の部下になりました

 ──魔王軍には、絶対的な上下関係が存在します。

 

 一番上に魔王様、その次に四天王様、そして妖魔様、悪魔など。

 そういう役職名を与えられた魔族はネームドモンスターと呼ばれます。

 それ以外の役職を持たない魔族はノーマルモンスターと呼ばれます。

 

 ノーマルモンスターは、ネームドモンスターを様付けで呼ばなければいけません。

 あろうことか呼び捨てで呼ぼうものなら、一瞬でその首が(物理的に)落ちるでしょう。

 

 ネームドモンスターであっても、自分より階級が上の魔族に対しては、様を付けて呼ばなければいけません。

 あろうことか呼び捨てで呼ぼうものなら、一瞬でその首が(四次元的な宇宙空間に)落ちるでしょう。

 

 そして、もし階級が上の魔族に対して、その名前を呼び間違えるなんてことがあれば……。

 

「ここに、新魔王誕生を宣言するのじゃ。

 同時に組織改革を行い、四天王を含むネームドモンスターを一新するのじゃ」

 

こんにちは。

 前回の魔王様の時は悪魔でした、ソフィアです。

 

 本日新しく魔王様が誕生されて、早速組織改革をやるみたいです。四天王様まで変わってしまって……私は名前を憶えられるのでしょうか。

 もはや、ネームドモンスターからノーマルモンスターに左遷されて、地方で悠々自適に暮らしたいものです。

 

「四天王には()属性のオリビア、()属性のメラニー、()属性のアリア、()属性のレイラを任命するのじゃ。

 また、妖魔及び悪魔の選定方法は、従来の魔王選定式ではなく幹部侍従式とするのじゃ。

 以上で話は終わりじゃ、自由に解散してくれてよい」

 

幹部侍従式という聞きなれない単語に、周囲の者は戸惑いの声を漏らしています。

 私も薄れかけていた記憶の中から必死に探し出し、図書館で読んだ魔王軍の法律学にそんな単語が載っていたことを思い出しました。

 

 ここ最近は魔王選定式という、その名の通り魔王様が直々にネームドモンスターを指定する制度を使っていました。

 ですが、今回の幹部侍従式とは、既にネームドモンスターとして決まっている者が侍従として妖魔様や悪魔を選ぶというものです。

 つまり、妖魔様や悪魔は四天王様が選ぶということです。

 

「そうとわかれば……早速食堂に行きましょうか」

 

それはつまり、四天王様に目をつけられなければ、ノーマルモンスターとなってこの厳しすぎる上下社会から脱却できるというわけです。

 さて、そうと決まれば人のたくさんいる食堂へ行くとしましょう。

 

 あ、そうそう。ひとつ言い忘れていましたが、実は私は異世界で暮らしていた前世の記憶を持つ転生者です。

 魔族に生まれたなら魔王になってやるぜと意気揚々と田舎の村から出てきて、Dランクの魔族にコテンパンにされて現実を知ったただの小娘でした。

 そんな私が、今ではAランク級の悪魔……時が経つのは早いものです。ちなみに、魔王様はSSSランクなので、私では到底手も足も出ません。

 実は魔族のランクというのは階級で決まっていて、四天王様がSSランク、妖魔様がSランク、悪魔がAランクとなっています。

 

 さて、そんなことを話しているうちに食堂につきました。先程魔王様の集会があったため平時よりは少ないですが、それでも多くの魔族がいます。

 あ~、あそこに見えるのは元四天王様……。大変お怒りになって、周囲が灼熱の炎で溶けていらっしゃる。あそこには近づかないでおきましょう。

 料理名を言うとすぐに料理が出てきたので、感謝して受け取り、あまり人がいない席に座りました。そして、前世からの名残で両手のひらを合わせて合掌します。

 

「いただきます」

 

「わぁ、珍しい儀式ね~。

 どういった意味があるのかしら~?」

 

「っ!?」

 

すぐ横から顔が現れ、驚きながらそちらを見ました。

 さっきまでそこには誰もいなかったはずなのですが……。とりあえず、驚いた表情を取り繕い、ポーカーフェイスをします。

 

 しかし、気配が感じられなかったということは、五次元空間を使用した転移魔法でしょうか。

 そんな高度な魔術が使えるということは、間違いなくネームドモンスター候補でしょう。なので、慎重に対応する必要があります。

 

「これは、東洋の文化で食事の前にする感謝の気持ちを表す行為です。

 この食材を育ててくれた農家や牧師さん、それをここまで運んでくれた運搬業者さん、そしてこれを調理して美味しく仕上げてくれた料理人さんなどに感謝を示しているのです」

 

「まぁ~、素敵な考えね~!

 ではわたくしも~、いただきます~!」

 

そう言ってその女性は、私の横で食べ始めました。……あの、その食事、どこから取り出したんですか?

 

 やっぱり、平然と四次元空間を扱う魔王軍は怖いところです。

 毎日同じような日常が流れる田舎の実家が恋しく感じてきます。

 

 女性はそのまま食事を食べ始めたので、私も食べることにしました。

 今日は魔王様が就任したのもあり、いつもより豪勢な食事になっています。特にこの牛肉のステーキは絶品です。

 

「美味しいわね~。

 魔王城の近くに住む人たちは~、いつもこんなに美味しいものを食べているのかしら~。

 上京してきて正解だったわぁ~、はむっ!」

 

「その口ぶりだと、最近上京してきたのですか?」

 

「実は昨日ここに来たばっかりなの~。

 右も左もわからなくて困ってしまうわ~」

 

「そうだったのですね……」

 

なるほど、やっと状況が掴めました。

 

 この方は、元々ノーマルモンスターだったのでしょう。

 しかし、これほど高度な魔術を扱える彼女を見て、ネームドモンスターになるべきだと判断した彼女の上司が魔王城へ行くように命令を下したのでしょう。

 たしかに、彼女の実力であれば余裕でネームドモンスター……それどころか、妖魔様になることも叶うことでしょう。

 

 しかし、ここ魔王軍の上下社会はそこまで甘くはありません。

 何も知らない彼女が魔王様や四天王様にため口や呼び捨てで話すようなことがあれば、一族諸共根絶やしにされかねないことです。

 私のなかにあった、多少のお節介も含む親切心が、彼女がここでやっていけるように援助しようと言っています。

 

「……上京したばかりであれば、分からないことがたくさんあると思います。

 よろしければ私に、あなたが素敵な魔王軍生活を始めるためのお手伝いをさせていただけませんか?」

 

あ、そういえば、まだ名前を言っていませんでした。

 これじゃ、相手に怪しまれて警戒されてしまっても仕方がないことです。

 

 私が口を開こうとした瞬間、自身の体が誰かの魔力によって包まれました。

 同時に、視界が真っ黒になり、真っ白になり、虹色になり、無色になり──真っ白な空間に彼女は立っていました。

 

「わぁ、流石だわ~!

 王城近くにいる魔物の方は、四次元空間に適応するのがはやいわねぇ」

 

「__、_……よ……じ、げん、空間ですか?」

 

「そうよ~。

 ところであなた、名前は何というのかしら?」

 

「わ__……私は、ソフィアと申します」

 

普段と発声方法が違うため、多少声が詰まりながらも返答しました。

 普通であれば、四次元空間には多少干渉したり、一時的に空間を繋げたりくらいしかできません。

 だというのに、彼女はその空間に存在し、更には他者をこの空間に呼び寄せる力を持っています。

 

 いったい、彼女は何者なのでしょうか……?

 

「わたくしは、四天王が一人、詩属性のアリア~。

 妖魔になってわたくしに仕える気はあるかしらぁ、ソフィア?」

 

──魔王軍には、絶対的な上下関係があります。

 

 下の者は、上の者を呼び捨てで呼んではいけません。

 下の者は、上の者の名前を間違えてはいけません。

 そして──下の者は、上の者の命令に逆らってはいけません。

 

「私でよろしければ、アリア様にお仕えさせてください」

 

私は片膝をつき、アリア様に対して首を垂れました。

 

 

 

 

 

 『転生したら、魔王様の部下の部下になりました』。

 

 なんて、ラノベじゃあるまいし、いったいどういう状況ですか~!?!?




誤字修正
 妖魔になってわたくしに使える気はあるかしらぁ、ソフィア?」
→妖魔になってわたくしに仕える気はあるかしらぁ、ソフィア?」

団栗504号さん、誤字指摘ありがとうございました!



Q. どうしてこの小説を投稿しようと思ったんですか?
A. 小説投稿へのハードルを下げるためです。

Q. ノーマルモンスターとかネームドモンスターって何ですか?
A. 作者もよくわかってません。かっこいいかなって……。(たぶん今後出てきません)

Q. なろう小説みたいですね
A. I think so too. (私もそう思います)
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