転生したら、魔王様の部下の部下になりました   作:白紅葉 九

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第十三話 幼女は定時退社したい

 飴をもらえました。

 それ以外にも色々とおもてなしをしていただいています。

 

「はぁ~、もう幼女は見たくないぃぃ……」

 

「お疲れ様です」

 

「ありがとう、ロリっ子」

 

ロリっ子……。

 

 確かに、外分だけ見れば間違ってはいないですが、千年以上生きてきた身なのでそう呼ばれるのは少し抵抗があります。

 

「ところで、どうして私は誘拐されたんですか?」

 

「実験にロリが必要とかで、上司に命令されて集めてたの……」

 

「実験、ですか?」

 

それは、ロリ……つまり女児を集める実験ということですか。

 考えるまでもなく危険な香りがしますね。

 

「あー、安心して、殺しはしないから。

 というか、死体のロリを集めるだけの方が簡単だったのに……はぁ」

 

どうやら、彼女も色々と大変のようです。

 

「それで、あー……ロリっ子」

 

「ソフィアです」

 

「ソフィアね、私はラクよ」

 

聞いたことのない名前でした。

 といっても、魔王城にはたくさんの魔族がいるので、私が知らない者の方が大半なのですが。

 

「ラクさん、私はどの期間ここにいればいいのでしょうか?」

 

「数日くらい?

 あ、親御さんに連絡とかしなきゃ……うわー、面倒くさい。

 寝ていい?」

 

「寝ないでください」

 

とりあえず、彼女が私を害するつもりはないというのはわかりました。

 

「寝させてよー……最近定時に退社するのもできてないんだよー……。

 実験も明日からでいいでしょー……」

 

「えぇ……」

 

私が戸惑っていると彼女はソファに横になり、本当に寝始めてしまいました。

 

 ……さて、私はどうすればいいのでしょうか。

 そもそもここはどこなのでしょう。

 

 ……本当に寝ていますよね?

 ……寝ているみたいです。なら、魔法を使って調べましょうか。

 

「【探検家の心得三(アンド・サーチ)】」

 

これを使うことで脳内にマップが表示され、現在地を知ることができます。

 これで帰り道を調べようと思ったのですが……。

 

「……亜空間ですか」

 

どうやら、現実世界とは隔離された空間のようで、この空間の地図がわかっただけでした。

 となると、帰る方法は亜空間を生み出した人にお願いして帰らせてもらうしかありませんね。

 

 亜空間を生み出すのは高度な魔術です。

 つまり、相手は最低でも妖魔、最悪四天王様もあり得るでしょう。

 

 ラクさんがこの空間を生み出しているのなら、ラクさんを倒すだけの簡単なお仕事だったのですが……。

 残念ながら、ラクさんがそんなすごい魔術を使えるような存在には見えません。良くて悪魔程度でしょう。

 

 ほぼ間違いなく、別の首謀者がいるはずです。

 というか、ラクさんも誰かに命じられて仕方なく、みたいな言動をしていましたし。

 

「さて、どうしましょうか……」

 

都合よく亜空間から抜け出す魔法を持っていればよかったのですが、残念ながらそんな便利なものはありません。

 私の持っている魔法は、ランダムな場所に転移する(最悪壁の中に転移する可能性あり)とか、並行世界に転移する(最悪魔王軍が既に滅んでいる可能性あり)とかです。

 これらは、いざっていう時のために取っておくべきでしょう。

 

「考えているだけでは何も始まりませんし、ひとまず館内の探索をしましょうか」

 

何かがあった時のためにできる限り魔力は温存したいので、仕方ないですが子供状態のままで行きます。

 椅子から飛び降り扉まで歩きます。

 扉に腕を伸ばし開こうとすると、どうやら鍵が掛かっているようで開きませんでした。

 現実世界にある扉は片側からしか鍵を掛けることができませんが、この世界では両側から鍵を掛けられるみたいです。しかも、オートロックのようです。

 

「【ヤミノカギ(オール・キー)】」

 

ですが、幸いにも私はどんな鍵穴にも合う万能な鍵を持っています。

 手元に現れた黒色の鍵を差し込んで回すと、ガチャっという音と共に扉が開きました。

 

 私がいた部屋もそうでしたが、廊下も魔王城と似たような作りになっています。

 ですが、魔王城と違って遠くから魔族たちが訓練する声や音も聞こえませんし、そもそも物音ひとつすら聞こえません。

 

「不気味ですね……」

 

廊下を歩き、すぐ近くにあった窓を見ようとします。

 普段ならちょうどいい高さにあるであろう窓が、随分と高く感じます。窓枠に手を置いて窓の外の景色を見れるように体を起こします。

 

 外には空と海がありました。

 私たちがいる建物以外は、全て海に囲まれていて絶海の孤島のようです。

 もしここが亜空間とわかっていなければ私も孤島に転移させられたのだと慌てたと思いますが、私はここが亜空間だと知っています。

 

 つまり、あの海を渡っていっても続くのは海だけで、陸はありません。

 それならやはり、この亜空間から抜け出すための方法は一つです。

 

「さて、亜空間の主に会いに行きましょうか」

 

亜空間の主が敵対していないといいのですが……。

 というか、勇者の次は四天王様や妖魔レベルの相手と対峙することになるなんて、今年は厄年なのかもしれません。

 

 

 

 

 

 亜空間を歩き回り、人を探します。

 手あたり次第に扉を開けていますが本当に誰もいません。

 先程使った【探検家の心得三(アンド・サーチ)】は脳内地図を作り出してくれますが、誰がどこにいるのかを教えてくれるような便利機能はないので、こうやって地道に探すしかないのです。

 

「すみませーん! どなたかいませんかー!?」

 

……何だか、見た目が子供なのも相まって迷子みたいでちょっと屈辱的です。

 これでも千年近く生きる魔族なんですよ!

 

 まぁ、でもアリア様と比べれば、確かに子供みたいなものですが。

 というか、アリア様と比べれば大抵の魔族は赤ちゃんみたいなものです。

 

「というか、幼女が必要な実験って何なんでしょう?

 ただロリコンに攫われただけだったのなら、殴って解決で終わりだったんですが」

 

この事件の犯人が四天王様かもしれないという可能性がミリでもある限り、私は下手な行動はできません。

 それと、もう一つだけ理由があります。

 

「定時で退社するのもできていない、でしたか。

 定時退社したいという気持ちは(前世)(今世)も共感できますから」

 

アリア様の妖魔が私しかいなかった時代や、オリビア様とその部下たちが仕事で潰れていた光景を思い出します。

 その苦しみを知っているから、どうしてもラクさんを恨めないんですよね。

 

 そもそも、ラクさんが私を攫った時、私の周りにはアリア様とオリビア様がいました。

 冷静に考えれば、四天王二人の前で子供を攫うなんてことをするわけがありません。

 つまり、冷静な判断ができないくらい疲れていたのでしょう。

 

「はぁ~、また面倒事の予感がします。

 今度は何回くらい殺されることになるんでしょうか……」

 

オリビア様に何度も殺されたことを思い出しながら、私はとぼとぼと廊下を進みました。




Q.そういえばこの主人公、転生者でしたね
A.転生者要素0だったので、今回はちょっとだけ単語を入れました

Q.感想が届いていますね
A.いつもありがとうございます! 作者のメンタル管理のために、感想は一律返信していませんがご了承ください!

Q.亜空間って何ですか?
A.魔術の一種です。術者が想像する通りの世界を生み出せます。ですが、対価として膨大な魔力を消費するので、亜空間を維持するためには四天王や妖魔レベルの魔力量が必要です。



【作者から】
白紅葉九です。いつもご愛読ありがとうございます。
更新が遅れて申し訳ありませんでした!
リアルが忙しく、今後も低頻度更新になりそうです。忙しいが口癖なのを直したい今日この頃です。
次回の更新日は五年後を予定しています。
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